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第40話 なかなか死なないお前が悪い

 ヴァンパイアたちが一斉に同じ方向に向かって移動し始めたので、リオンはその後を追いかけることにした。

 アルクとイリスの双子も小さな身体で頑張って後を付いてくる。


「大丈夫か?」

「「……ん」」


 体力的には問題なさそうだが、少し眠そうだ。


 やがてその場所へとやってくる。


「おー、なんかヴァンパイアたちがいっぱい集まってんな?」


 一体のヴァンパイアを取り囲むようにして、百体近いヴァンパイアたちがいた。

 恐らく都市を襲っていた全員だろう。


「むしろ好都合だな」


 街中に散らばっているヴァンパイアたちを、一体一体片付けていくのは骨が折れると思っていたのだ。

 それがこうして一か所に集合してくれているのだからありがたい。


「――ホーリーレイン」


 リオンが魔法を発動すると、突然、バケツでもひっくり返したような大雨となった。

 ちょうどヴァンパイアたちがいる場所だけへの集中豪雨だ。


「「「ぐあああああっ!?」」」


 その雨に打たれたヴァンパイアたちが一斉に苦しみ始めた。

 というのも、降り注いでいるのはただの雨水ではなく、浄化の性質を持った聖水だからだ。


 さらにリオンは追撃の魔法を放つ。


「――アースパイル」


 直後、地面から次々と生えてきた杭が、聖水を浴びてもがき苦しんでいたヴァンパイアたちの身体を貫く。


「「「あああああっ!?」」」


 聖水の効力で不死性を失っていた彼らは、あっさりと絶命していった。


「貴様の仕業かっ!」


 そんな中、何体かのヴァンパイアたちがリオンの存在に気づいて躍りかかってきた。

 聖水の効き目が弱かったアークヴァンパイアたちだ。


 しかし次の瞬間には全員仲良く首を刎ねられていた。


「馬鹿、な……?」

「ま、魔法使いではないのか……?」


 理解できないという顔で死んでいくアークヴァンパイアたち。

 その様子を愕然と見ていたのは、先ほど中心にいたヴァンパイアだ。


「……貴様、何者だ? 我が配下を一瞬にして殲滅するとは……」


 そのヴァンパイアを見て、リオンは「お、ちょっとだけ強そう?」と思った。

 言わずもがな、そのヴァンパイアこそが、彼らの王であるヴァンパイアロードだ。


「リオンだけど」

「リオンだと!? まさか貴様っ……いや、人間は同じ名も珍しくないのだったな」


 一瞬勇者リオンかと思ったようだが、目の前にいるのは明らかに子供であり、そもそも百年前の人間が今も生きているはずがないと、ヴァンパイアロードは思い直す。

 ……本当は正解だったのだが。


「何者かは知らぬが、我が同胞の恨み、晴らしてくれよう!」


 ヴァンパイアロードがリオンに襲い掛かってくる。

 リオンは真正面からそれを迎え撃った。


 そして二人が交差した直後、ヴァンパイアロードの胴体が両断されていた。


「は?」


 間抜けな顔で上半身が宙を舞い、やがて頭から地面に激突する。

 遅れて下半身も倒れ込んだ。


 しかしその直後、ロードの血が独りでに蠢き出した。

 上半身と下半身を結び付けたかと思うと、互いに引き合って接着、そしてあっという間に切断面も消えてしまった。


「ば、馬鹿なっ!? 我はロードとなったのだぞ!?」

「おお、さすがの回復力。不死殺しの付与もほとんど効いてないな」


 吸血鬼の王が驚愕する一方で、リオンはそう感心しながら前世のことを思い出す。


 もちろん当時のヴァンパイアロードを討伐したのはリオンである。

 あのときもこの異常な回復能力に驚いた記憶があった。


 今度は自ら攻撃を仕掛けるリオン。

 吸血鬼の王の腕を、足を、そして首を斬り落とす。

 すぐにまたくっ付いてしまうが、懲りずに再び斬撃を見舞う。


「クククッ、無駄だ! 我は不死! 何度でも蘇ってみせよう!」


 と、本人は主張しているが、実際には完璧な不死など存在しない。


 確かにロードの場合、聖水や不死殺しの付与の効果は薄い。

 だがまったく効果がないわけではなかった。

 何度も何度も何度も食らわせれば、やがてその高い不死性を打ち破ることができるのだ。


(ただ、これだと何時間もかかっちゃうんだよなー)


 前世の経験からリオンはそう理解していた。


(というわけで、今回はこの手でいってみよう)


 リオンは剣で戦いつつ、同時にとある魔法を発動する準備を開始する。

 そのときヴァンパイアロードがある攻撃を仕掛けてきた。


(精神操作魔法か)


 ヴァンパイアロードともなれば、たとえ吸血をしなくとも、相手を自分の思い通りに操ることができるのだ。


「クハハハハッ! ぬかったな! 今の我ならば人間を操るのに吸血など必要としない! 貴様の血を吸い、さらなる力をつけてやろう!」


 高笑いとともに、ロードはリオンに近づいてくる。

 まさか精神操作が効かないとは露にも思っていないらしい。


 ずばっ。


「え?」


 リオンは無防備に接近してきたロードの首を刎ねた。


「いやいやいや、なぜ効いていない!?」

「耐性が強いからだが?」


 リオンが平然と答えると、ロードは「化け物か、こいつ……」と絶句する。

 まさかヴァンパイアの王に化け物呼ばわりされるとは思わなかった。


「ともかく、これでお終いだ」


 そこで魔法を発動する準備が整った。


「念のため回避されないようにして、と」


 下ごしらえとばかりに、ずばずばっとロードの両足を斬っておく。


「――ヘルフレイム」


 発動と同時、激しく燃え上がったのは真っ黒い炎だった。

 それがロードの全身を包み込む。


「がああああああっ!?」


 身を焼かれる激痛に、ロードが絶叫する。

 炎を消そうと暴れるが、しかし一向に消える気配はない。


「無駄だぞ。それは魔界から召喚した炎で、対象を完全に焼き尽くすまで絶対に消えることがない」


 ロードの身体は炎によって焼かれる度に、その高い回復力で修復されるが、消えない炎によって再び焼かれてしまう。

 それが幾度も繰り返され、ロードは永続的にその痛みを味わう羽目になった。


「ああああああああっ!? もうやめてくれぇぇぇっ!? 殺してくれっ! 早く殺してくれぇぇぇっ!」

「そう言われても、なかなか死なないお前が悪い」


 リオンとしては待つこと以外、どうすることもできない。


 当人にとっては永遠にも思えたかもしれないが、三十分ほど燃え続けて、ついにロードは不死性を失い、完全に焼き尽くされて消滅したのだった。


「うん、前回よりは早く倒せたな」


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