表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/186

第33話 一人で乗り込んだらまた怒られそうだな

 一人の青年の後を二人組の男たちが付けていた。

 男たちは談笑しながら普通の通行人を装っているが、明らかに青年の様子を観察している。


 やがて青年が人気の少ない路地に入ったとき。

 男たちは素早く青年に近づくと、背後から布のようなもので青年の口を塞いだ。


「っ!?」


 抵抗しようとした青年だが、すぐに意識を失う。


(布に睡眠薬か何かを染み込ませているんだな。あの二人組、かなり手慣れている)


 その様子を密かに観察しながら、リオンは分析していた。

 もちろん隠密スキルで気配を消している。


「二人ともちゃんと隠れられているな」

「「ん」」


 一緒にいるアルクとイリスも自力で隠密スキルを使っていた。

 今回の依頼のためだけでなく、何かと便利なスキルでもあるので、二人にあらかじめ教えておいたのだ。


 といっても、少しコツを教えただけですぐに習得してしまったが。

 猫人族は猫の因子を持っているだけあって、隠密系のスキルに適性があるのだろう。


 二人組は見られているとも知らず、眠ってしまった青年を大きな麻袋に詰めると、何食わぬ顔で運び始めた。


 よく見ると二人組は商人風の格好をしていた。

 あれなら商人が商売用の袋を運んでいるようにしか見えないだろう。


 リオンは二人組の後を追いかけた。


 すると彼らの行き先には馬車があり、二人は荷台に青年の入った袋を詰め込んだ。

 よく見ると他にも似たような麻袋が幾つも乗せてあった。

 もしかしたら同じように誘拐された人たちが入っているのかもしれない。


 二人組の一人が御者台に乗り、馬車を出発させる。

 そうして都市の玄関口である門へ。

 どうやら商人のフリをして都市を出るつもりらしい。


 だがここ最近、頻発している誘拐事件のこともあり、都市の出入りの際には荷物を厳しくチェックされることになる。

 当然、あの麻袋は確認されるはずで、そうなるとあっさり見つかるだろう。


「おかしいな?」


 しかしリオンの予想に反して、二人組は簡単に門の通過を許されていた。

 許可を出した担当員に近づき、念のため顔を確認しておく。


「……?」


 違和感を覚えたリオンだが、すぐに二人組の追跡に切り替えた。

 都市を出た二人組は小一時間ほど街道に沿って進んでいたが、やがて大きく逸れて森の中へと入っていった。

 どうやらこの森の中に彼らの隠れ家があるらしい。


 やがて現れたのは、随分と年季の入った建造物だった。

 どうやら砦のようだが、かなり古い時代に使われていたものだろう。


 二人組が馬車を降り、荷物を建物の中へと運び入れていく。

 ここが拠点で間違いないようだ。


「……一人で乗り込んだらまた怒られそうだな。いったんギルドに報告してくるか」


 リオンはそう判断し、その場を後にした。







 リオンは冒険者たちを連れて森に戻ってきていた。

 アンリエットたちをはじめ、総勢二十人ほどだ。


 彼らを案内し、誘拐犯たちの拠点へと向かう。


「本当にこんなところにあるのかよ?」


 不機嫌そうにグリスが言う。


「うん、間違いないよ。もうすぐそこだから」


 やがて先ほどの砦までやってくる。


「ここだよ」

「はっ、何もねぇじゃねーか」


 グリスが鼻で笑った。

 彼の目に映るのは、ただの開けた空間だ。


「うん、結界で隠蔽されているからね。普通に見ても分からないよ」

「……結界? 何の魔力も感じないが……」

「建物がある気配もないぞ」


 眉を顰めるのは魔法使いやシーフたちだ。


 通常、結界には魔力が伴うため、力のある魔法使いなら察知することができる。

 あるいは隠蔽されていても、探知能力に長けていれば看破することが可能だった。


「そう? 確かにそこそこ高度な結界だけど、これくらいならすぐ分かるよね?」


 リオンは不思議そうに小首を傾げた。


「ふん、どうやらまんまとこの餓鬼に騙されちまったみたいだぜ。手柄を残したくて拠点を見つけたとかほざいてみたはいいが、今更引くに引けなくなっちまったんだろ」


 グリスが吐き捨てながら歩いていく。


「あっ、待って――」

「ほら見ろ、何にもねぇじゃぬおッ!?」


 リオンが呼び止めようとするも遅かった。

 そのまま結界をすり抜けてしまったようで、グリスが見えなくなってしまう。


「消えた……?」

「まさか本当に……?」


 冒険者たちが驚く中、グリスが結界の向こうから慌てた様子で戻ってくる。


「やべぇっ! 気づかれたぞぉぉぉっ!」


 直後、結界の中から矢が飛んできて、グリスのすぐ脇の地面に突き刺さった。


「そりゃあ、部外者が結界を通ったらすぐ察知できるようにしてるに決まってるよ。だからまず解除しないと」


 常識なのにと、リオンは溜息交じりに言う。


 砦に籠城した相手と戦うのは大変だが、こうなったら仕方がない。

 結界がある状態では向こうの攻撃が見えないので、今更ではあるが、ひとまず結界を破壊することにした。

 こっそりやる必要がなくなったので、その点では楽だ。


「サイクロン」


 巨大な竜巻が発生し、結界を維持していた魔力を拡散させる。

 すぐに古い砦が露になった。


「ほ、本当にあったぞ!?」

「ていうか今、無詠唱で上級魔法を発動しなかったか!?」

「今はそんなことを気にしている場合ではありません! 行きますよ!」


 驚く皆を叱咤し、アンリエットが先陣を切って砦に向かっていく。

 他の冒険者たちも後に続いた。



2019年1月26に改稿いたしました。大まかなストーリーは変わってませんが、設定を結構いじっています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

村づくりコミカライズ
村づくりコミカライズがスタート!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ