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第32話 こいつがCランクだと?

 結局マリアの説得によって、リオンはCランクに昇格することになった。


「Cランクになれば受けられる依頼も増えます。彼なら今後も順調に成果を上げていくでしょうし、そうなればあの優柔不断なギルド長もすぐに正しい判断だったと理解するはずです」


 決定後もギルド長は「本当に良かったのかなぁ」とぐちぐち言っているが、マリアとしては最低限の成果を上げることができて、ひとまず満足である。


「そして私の評価も上がり、昇給も……ふふふ……」







 Cランクに昇格したリオンは、その数日後なぜかギルドに呼び出されていた。

 わざわざギルドから泊まっている宿に連絡があったのだ。


「リオン君、Cランクに昇格したようですね。おめでとうございます」

「Cランクかー。もっと上げてもええと思うんやけど、まぁあのギルド長にしては頑張った方やな」


 指定された時間にギルドにやってくると、そこにはアンリエットたちの姿もあった。


「それで、今日はリオンはんも呼び出された感じ?」

「も?」

「ええ。私たちも招集を受けて来ました」


 どうやら招集されたのはリオンだけではなかったらしい。

 他にもこの都市を拠点にしているCランク以上の冒険者たちが集められていた。

 全部で二十人くらいだろうか。


「本日お呼び出ししたのは、皆さんにある依頼を受けていただきたいからです」


 職員らしき男性が集まった冒険者たちに説明を始めた。


 依頼の内容とは、最近、頻繁に発生しているという誘拐事件の調査だった。


 誘拐事件そのものは珍しいことではない。

 浚った女子供を奴隷として売り払うという非合法の人身売買は、多くの闇組織にとって重要な資金源だからだ。


 だがここリベルトは取り締まりも激しく、非常に治安がよい町だ。

 闇組織の力も弱い。

 ゆえに誘拐など滅多に起こらないことだった。


 それが未遂も含め、このところ多発しているというのである。

 しかも女子供だけでなく、誘拐に遭いにくいはずの若い男性まで何人も姿を消していた。


 当然、都市を治める領主としては看過できるはずもない。


「今回の依頼は領主様からのものとなります。都市の治安維持という重要性からも、ギルドとしては優先して引き受けるべき案件と判断し、こうして招集をかけさせていただきました」


 そこで冒険者の一人が手を挙げる。


「調査なら質より量だと思うのだが。見たところ上級冒険者ばかりだが、下級冒険者を総動員するべきなのではないか?」

「もっともなご意見です」


 職員はそう頷いてから、


「実は領主様からの依頼以前にも、被害者と思しき方の関係者からの依頼を受け、当ギルドの冒険者が調査を行っていました。ですが現在、そのうち数名が行方不明になっているのです」


 職員の言葉に冒険者たちがざわつく。

 もちろん冒険者というのは複数の依頼を同時に受けることも多いため、他の依頼で何かがあったのかもしれない。

 だがそれが複数人ともなれば、さすがに偶然とは言い難いだろう。


「そこでCランク以上という制限を設けさせていただいたのです」

「なるほど」


 先ほどの冒険者が納得いったという風に頷いた。


「おいおい、だとしたら何でこんな餓鬼どもがいるんだよ?」


 と、そこで声を上げたのは別の冒険者だ。

 彼の視線はリオンたちの方へと向けられていた。


(どこかで見たことあるな? ……ああ、この間の冒険者か)


 リオンは思い出す。

 先日、突っかかってきたグリスという名のBランク冒険者だ。


「彼もCランクの冒険者ですので」

「ああ? こいつがCランクだと?」


 冗談言うんじゃねぇよ、とばかりにグリスは鼻を鳴らした。


「こんな餓鬼をCランクに上げるなんざ、このギルドはランク評価がおかしいと宣言してるようなもんじゃねぇか」

「なるほどなー。つまり、じぶんがなかなかAランクに上げてもらえへんのも、ギルドのせいっちゅうわけやなー?」

「んだとっ?」


 カナエの皮肉に、グリスは眦を吊り上げた。


 アンリエットが口を開く。


「グリス、リオン君の実力は私たちが保証します」

「っ……」


 グリスは一瞬押し黙ったが、それでも今回は簡単には引き下がらなかった。


「……はっ、なるほどな。要するにあんたがギルドに圧力をかけたってわけか」

「そんなことはしていませんし、する必要もありません。なぜなら彼はCランク冒険者に相応しい、いえ、それ以上の実力を持っているからです」

「……ちっ」


 グリスは忌々し気に舌打ちを鳴らすと、双子を睨みつける。


「じゃあ、そこのチビどもはどうなんだよ? そいつらまでCランクの力を持ってるっつーのかよ?」


 アルクとイリスがリオンの後ろに身体を隠す。

 だが反発するように「「うー」」と唸ってグリスを睨み返していた。


『りおーん、あいつぬっころすー?』

「殺さない殺さない」


 リオンは言った。


「二人は僕の従魔だから。調教士が従魔を引き連れていても何もおかしくないよね?」

「……オレの邪魔をしやがったらぶっ殺してやるからな」


 グリスはそう吐き捨てる。


『やっぱりぬっころすー?』

「ただの脅しだから気にしなくていいって」


 ひと悶着はあったが、説明が無事に終わって解散となった。

 これからは各自がそれぞれ調査を進めていくことになる。


 ただし一日に最低一度、必ず報告のためギルドに立ち寄るように言明された。

 何かあった場合にすぐ対処できるようにするためだ。







「さて、怪しい動きをしている人はいないかなー」


 リオンは街中を歩きながら道行く人々をこっそり観察していた。

 盗賊系統ジョブを最上位までマスターしている彼にとって、こうした任務は得意だ。


 都市には大勢の人間が行き交っているが、怪しい人物がいればすぐに分かる。


「……おっ、早速、見つけたかも」



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