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第31話 急に光り出したんだ

 リベルトの街で順調に依頼をこなす日々を送っていたある日のことだった。


「スーラ? どうしたんだ?」

『なんかくるしいのー』


 スーラがぐったりしている。


「「すらちゃん……」」


 双子も心配そうに見つめていた。

 まさか何かの病気だろうか。


 だが状態異常に罹っている様子はない。

 回復魔法を使っても治らなかった。


「「ひかってる……」」

「え?」


 双子に言われて、ハッとする。

 確かにスーラの身体が発光しているようだった。


 こういうときは詳しい人に話を聞くのが早い。

 テイマーは不人気らしいが、それでも冒険者の中に何人かはいるだろう。

 もしかしたら職員に詳しい人がいる可能性もある。


 そうしてスーラを抱えて、ギルドに。

 窓口に最近よく担当してもらっているマリアの姿があった。


「あっ、リオン君。いいところに来たわね。実はギルド長が――」

「そんなことより、スーラが大変なんだ」


 彼女の言葉を遮り、リオンは窓口の上にスーラを置く。


「さっき急に光り出したんだ。何かの病気かな?」

「これ…………進化中じゃないかしら? 魔物は進化することがあるのよ。条件はよく知らないけど、テイマーの人が言っていたわ」

「進化……なるほど」


 そういうことかと、リオンは納得する。


「すごいじゃない。スライムとはいえ、魔物を進化させたテイマーは少ないわよ。きっと今まで頑張って育ててきたのね」


 と、そのときスーラの光がゆっくりと収まっていく。


「赤くなってる」


 これまで緑色だったスーラの身体が真っ赤に染まっていた。



スーラ

 種族:レッドスライム

 種族レベル:1

 力:A

 耐久:S

 器用:A

 敏捷:A

 魔力:A

 運:A



 種族がレッドスライムになっている。

 見たまんまだ。


 ステータスは進化前とあまり変わっていないようだ。

 だがレベルが1になっているので、ここからレベルを上げればさらに強くなれるということだろう。


「赤いスライム……ま、まさか、レッドスライム……っ?」


 マリアが椅子から立ち上がって後ずさる。


「かなり獰猛で好戦的なスライム種よ! それに普通のスライムとは比べ物にならないくらい強くて、個体によってはAランク冒険者でも苦戦するくらい……!」


 基本的に性格が好戦的な魔物ほど、その強さに個体差が出やすい。

 人間と同様、レベルが上がりやすくなるからだ。


「気をつけて、リオン君! 進化したことで、従魔がテイマーに逆らうようになったケースもあるから……!」


 やがて光が完全に収まると、真っ赤になったスーラは、


『ちからがわいてくるのー』


 ぷるぷると嬉しそうに身体を揺らした。

 どうやらスーラはスーラのままらしい。


「他におかしなところはないか?」

『んー? とくにないのー』


 スーラは指定席のリオンの頭の上に飛び乗った。


「大丈夫みたい」

「そのようね……」


 マリアはホッとしたように息を吐く。


「そうそう。それでリオン君。実はあなたが来たら部屋に連れてくるようにって、ギルド長に言われているのよ」

「ギルド長に?」


 何か呼び出しを食らうようなことでもしただろうかと、リオンは首を傾げる。

 ともかく応じないわけにはいかないので、マリアの案内でギルド長室へ。


「ギルド長。リオンさんを連れてまいりました」

「おお、ご苦労」


 執務机の向こう側にいたのは人のよさそうな中年男だった。

 小柄で太っていて、口には立派な顎鬚が生えているが、あまり威厳は感じられない。

 名前はディンバというらしい。


「君がリオンか。うーむ、どう見ても普通の子供じゃないか」

「はい。ですがその実績は申し分ありません」

「しかしねぇ……さすがに上級冒険者にするのはどうかと思うよ? ゴブリンロードを倒したと言っても、所詮はゴブリンの最上位種だよね?」


 マリアは一瞬、「何言ってんだこいつ」という表情を浮かべたが、すぐにいつものクールさを取り戻して言い返す。


「ゴブリンだからって侮ってはいけません。特にロードともなると、Aランク冒険者でも苦戦する相手です。しかも仲間のゴブリンを大量に引き連れているので、パーティを組まなければまず討伐は不可能でしょう」

「そう、それだよ。ソロでは難しい魔物をソロで倒した。どう考えてもおかしいじゃないか」

「……ではギルド長は一体どうやって討伐したとお考えなのですか?」

「それを聞くために呼んだんじゃないか」


 ディンバの視線がリオンへと向けられる。


「誰かに手伝ってもらったりしなかったかい?」

「スーラと双子も戦いました」

「いやいや、ただのスライムと子供じゃないか」


 マリアが訂正する。


「いいえ、ギルド長、見ての通りレッドスライムです」

「レッドスライム……?」

「知らないんですか……よくそれでギルド長が務まりますね?」

「はっきり言うなぁ。でも優秀な部下たちに支えられているからね」

「…………その部下が苦労させられてるんですよ」

「ん? 何か言ったかい?」

「いえ何も」


 ディンバは首を傾げつつも、再びリオンの方へと視線を向ける。


「それで、本当に君たちだけで戦ったのかい? 誰かに手伝ってもらったんじゃないのかね? 怒らないから本当のことを言っていいよ」

「本当ですけど」


 どうやらリオンは疑われているようだ。


「……実はね、君をすぐにでもBランク以上に昇格させるべきだとマリア君が主張していてね。だけどギルドとしてはそう簡単に昇格を認めるわけにはいかないんだよ。Cランクになるのだって普通は一年以上の経験が必要だ。ましてやBランクともなると、ギルドの顔だからね。当然、実力以外のものも求められる」

「ギルド長の主張も理解できます。では、いきなりBランクが難しいのなら、まずはCランクへ昇格からというのはいかがでしょうか」


 マリアは最初からそれを考えていたらしく、すらすらと妥協案を提示した。


「彼はゴブリンロードだけでなく、クイーンタラントラを討伐した実績もあります。Cランクならばそれだけで十分でしょう」

「クイーンタラントラねぇ……それこそ怪しいというか……」

「ではギルド長。アンリエット氏が嘘を吐いているとでも?」

「そ、そうは言ってないんだけどねぇ……うーん、Cランクねぇ……」

「……Cランク程度で悩まないでください」

「いやいや、そうは言ってもねぇ」


 マリアがリオンをすぐにでも昇格させたい一方で、ギルド長としてはもう少し様子を見たいようだった。


「見ての通り優柔不断なんです」

「えー、そこは慎重と言ってほしいなぁ」


 リオンとしては正直どちらでもよかった。

 あまりランクに興味がないためだ。


 ともかくこのままでは埒が明かなさそうである。

 アルクとイリアは退屈なせいか、さっきから大きな欠伸をしている。


 リオンは言った。


「決まってから呼んでもらってもいいですか?」




2019年1月26に改稿いたしました。大まかなストーリーは変わってませんが、設定を結構いじっています。

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