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第29話 逃げおったか

 マヒ状態になっている隙に、リオンはクイーンタラントラを仕留めた。

 二体いたビッグタラントラもアンリエットたちが倒したようで、ひとまず周辺に蜘蛛の姿はない。


「とりあえずツッコミどころがたくさんあり過ぎて、どこから聞けばええか分からんのやけど」

「……ですね」

「索敵能力に剣技、魔法。もはや一人パーティ……?」

「ついでに従魔もおるな」

「本当に子供ですか……?」


 唖然としているアンリエットたちを他所に、リオンは双子の頭を撫でて労っていた。


「よしよし、よく頑張ったな」

「「んっ」」


 それを見て、カナエとティナが「尊い……」と呟いている。


「涎を拭いてください、二人とも。……それより、どうやらこの魔物が異変の原因だったようですね。恐らく森の外に逃げてきて、それで村周辺に魔物がよく出没するようになっていたのでしょう」

「僕もそう思う」


 リオンはアンリエットの考えに同意するように頷いた。


「さすがにもういないとは思いますが……」


 災害級とされる魔物のクイーンタラントラが何匹もいる可能性は低いだろう。

 だが蜘蛛の生き残りがいるかもしれず、放っておくと森の魔物を食らって再びクイーンタラントラに進化してしまうかもしれない。


(念のため全滅させておいた方がよさそうだな)


 そう考えたリオンは、思い切り口笛を吹いた。

 さらに風魔法を使って、その音を森全体まで拡散させる。


「な、なんや今の音!?」

「口笛だよ。これで魔物を誘き寄せることができるんだ」

「そういえばさっき、ビッグタラントラが出る前にも吹いとった気が……」

「ちなみに今の口笛、随分と大きかったですが……どれくらいの範囲にまで効果があるんですか?」

「森全体」

「「「はい?」」」


 その後、森中の魔物に襲われ、アンリエットたちが悲鳴を上げることになったのは言うまでもない。


「な、なんと、クイーンタラントラが!? よくご無事で! しかしさすがアンリエット様が率いるパーティでございますね!」


 村に戻って村長に報告すると、大いに驚かれた。


「いえ、私たちはあくまでお手伝いですから」

「……本当にお手伝いやったなぁ」

「またまた」

「本当なんですけど……。あ、それと森の他の魔物もほぼ掃討したので、今後しばらくは魔物が出ることはないと思います」

「え?」








「温泉に入るでぇぇぇっ!」


 カナエが大きな声で宣言した。


 一仕事終えたリオンたちは、村でも一番の宿へとやってきていた。

 村長の好意で貸し切ってくれており、客は現在、彼らだけしかいない。


「レジーナといったら温泉や! さあ、リオンはん! うちと一緒に女湯へゴーや!」

「ちょっと待って、僕は男」

「せっかく一緒に戦った仲なんや! もっと親交を深めたいやろ! そのためには裸の付き合いや! 心配は要らへん! うちは全然気にせえへんから! ハァハア」

「……こっちが気にするんだけど」


 下心満開のカナエに、リオンは嘆息した。

 それに見た目は子供だが、中身は大人なのだ。

 さすがに一緒のお風呂はまずいだろう。


「カナエ、諦める。彼はもうそういう年ごろ。仕方がない」


 そこへ割り込んできたのはティナだ。


「でもロリやショタはOK。小さな男の子が女湯でも問題ない」

「それは親が女湯に入るケースだけやん? リオンはんが男湯なら、アルクくんも男湯やろ」

「……盲点。仕方ない。せめてロリだけでも」

「いや!」


 鼻息を荒くするティナを怖がり、イリスはリオンの後ろに隠れてしまった。


「二人ともいい加減にしてくださいっ!」


 アンリエットが叫んだ。







「ふー、疲れが取れるなー」


 リオンは露天風呂につかっていた。


「ひろい」

「およげる」


 ばしゃばしゃと小さな足をばたつかせて泳ぎ回っているのは、アルクとイリスだ。

 ここは男湯だったが、イリスが一人だけ女湯に入るのは嫌だと喚いたため一緒に入っていた。

 まだ子供だし、他に客もいないので問題ないだろう。


『いいゆなのー』


 スーラはお湯の上でぷかぷか浮かんでいる。

 魔物が入れるのも貸し切りになっているお陰だ。


 と、そこへ。


「おおー、めっちゃ広いやん!」

「素晴らしい。さすがレジーナ一の温泉宿」


 騒がしい声が聞こえてきたかと思うと、一糸纏わぬ姿のカナエとティナが脱衣所から入ってきた。


「……ここ、男湯なんだけど」

「よう考えたら貸し切りなら男湯に入っても問題あらへんなって」

「発想の転換」


 幸い湯気で裸はよく見えないが、念のためリオンは顔を背けた。


「ぬっふっふ。見たいんやったら見てもええんやで? 女の裸に興味ある年ごろやろ?」


 するとカナエがニヤニヤ笑い、大きな胸を見せびらかすように近づいてくる。

 なんて痴女だと、リオンは嘆息しながら魔法で結界を張った。


「ちょっ!? 近づけへん!? ていうか、これ結界やん! いつの間に!?」


 一方、アルクとイリスは接近してくるティナから逃げるように温泉の奥へ。

 ティナはさっきまで二人がいた場所にやってくると、


「ロリショタの体液が混じったお湯……」


 そんな気持ち悪いことを言いながら、全身でお湯を味わっていた。


 そこに遅れてアンリエットが入ってくる。

 彼女だけはタオルを巻きつけ、しっかり身体を隠していた。


「なんや、結局アンリもこっちに来たんか? あんなにうちらを止めようとしとったのに、やっぱり美少年の裸を見たかったんやな」

「それとも至高のロリショタの裸を見にきた?」

「断じて違います! 二人と一緒にしないでください!」


 全力で叫んで否定するアンリエット。

 それから少し頬を赤くして、


「だ、だって……一人じゃ寂しいじゃないですかっ!」


 実は最初は一人で女湯に行ったのだが、広いお風呂にたった一人で入っていると寂しくなり、男湯へと移動してきたのだった。


「って、リオンはんたちは?」

「消えた?」


 そこでカナエたちはいつの間にかリオンたちの姿がないことに気づく。


「……ちっ、逃げおったか」

「残念無念」


 落胆するパーティメンバーたちに、アンリエットは「いつか本当に犯罪を犯したりしないですよね……?」と本気で心配するのだった。








「こっちは静かだな」

「「ん」」


 リオンはこっそりアルクとイリスを回収すると、隣の女湯の方に避難していた。



2019年1月26に改稿いたしました。大まかなストーリーは変わってませんが、設定を結構いじっています。

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