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第170話 赤色は分かるよね

 カナエたちに支払いを立て替えてもらった後、リオンは詳しい話を聞いていた。

 ……ティナは全身を縄で縛られ、その辺に転がされている。


「なるほど。じゃあ、その剣を手にしてから、アンリお姉ちゃんの様子がおかしくなっちゃったってことなんだ」

「せやねん。恐らく呪われた剣やったんやろな」


 道場破りを行っていた男を追いかけ、それを無事に打ち倒した直後、男が持っていた剣を手に取ったことで、アンリエットが男とまったく同じ行動を取るようになってしまったらしい。

 カナエたちも必死に追跡しているが、見つけ出すのに苦労しているそうだ。


「その男はどうなったの?」

「あれから目を覚ましはしたんやけど、剣を手にしてた間のこと、何も覚えてへんかったな。ただ、その直前の記憶は残っとった」

「それはどんな?」

「なんでも、どこかの神社で見つけたものらしいで。あの男、元は腕の立つサムライで、どこかの大名に仕えとったらしいけど、不祥事を起こしてクビになったらしい。それから食べるものにも困って、盗みに入ったっちゅうわけや」


 男の証言が正しいことは、その来歴や神社を調査して、すでに確認が取れているという。

 ちなみに神社はこの国の宗教施設のことで、リオンたちの知る教会に相当する。


「腕が立つとはいえ、道場を軒並み破るほどではなかったそうや。あの剣の力か、本来以上の強さが引き出されとったらしい。それとその神社やけど、百年ほど前に新しく作られたばかりのものらしいで」


 百年というと新しくないように思えるが、この国には何百年も昔から存在する神社が幾つもあるらしい。


「それも、とある剣豪を祀るためにできた神社らしい。うちらの感覚では分からんけど、この国には死後に人が神様になったりするようやで」


 奪われた剣は、その剣豪が生前に使っていた剣だそうだ。


「何にしても、アンリお姉ちゃんを見つけ出さないといけないね」

「そうなんやけど、生憎ともうこの街と周辺の道場は潰され尽くされとって、たぶんどっか遠くに移動してしもうたと思うんや。ただ、まったく当てがなくてな。せめて北か南か東か西か、方角さえ分かればええんやけど……」


 あらかじめ追跡魔法をかけておけばどこまで行っても辿ることができたのだが、もちろんそんな無いものねだりをしても仕方がない。


「かといって、ベイビースーラの人海戦術をやっても、肝心の人を見分ける力がないからなぁ」


 前回ゼタを探そうとしたときのことを思い出し、リオンはこの手は使えないと首を振る。


「いや、待てよ……。黒髪ばかりのこの国なら、赤い髪で見分けられるかも……」


 早速リオンは、ダメ元でスーラにアンリエットの探索をお願いすることにした。


「赤い髪だよ、赤い髪。赤色は分かるよね? これとこれ、どっちが赤?」

『こっちなのー』


 リンゴとオレンジを前で見せると、迷いなくリンゴの方へ触手を伸ばすスーラ。

 ちゃんと色の判別はできるようだ。


「行けそうだな。よし、頼む」

『おまかせなのー』


 スーラの身体から次々と小さなスーラが飛び出していく。

 クイーンスライムであるスーラは、自らの分身体を生み出すことができるのだ。


 この分身体はすべてリオンの従魔なので、リオンとの意思疎通ができ、遠く離れていても念話でのやり取りも可能だった。


『『『『『『『『『『『『『『『『いくのー』』』』』』』』』』』』』』』』


 一万体を軽く超えるベイビースーラたちが、四方八方へ散っていく。

 それでもスーラ本体の大きさがまったく変わっていないように見えるのは、普段は身体を限界まで凝縮させることで体積を小さくしているからだ。


「な、なんや今の……」

「相変わらずとんでもないスライムだな……」


 カナエたちが驚いている。


「ところで……さっきから気になっていたんだけど、何でエルフのお姉ちゃんが一緒なの?」

「む?」

「旅の途中で出会って、同行することになったんや」

「うむ、お互い目的は同じだったからな」


 リオンは首を傾げた。


「目的?」

「あのとき色々と聞きたいことがあったのだが、逃げるように去っていった貴殿のことを私も捜していたのだ」

「……」

「詳しくはアンリエット殿が無事に保護できてから訊くとしよう」


 自分の正体がバレかけたので、慌てて逃げたのだったことを思い出すリオン。

 ……せっかくこんな島まで来たのに悪いが、また隙を見て逃走しようと心の中で決意するのだった。








『みつかったのー』


 ベイビースーラから連絡がきたのは、彼らを送り出してから一時間ほどが経った頃だった。


「もしかしてちょうどいいくらいの時間か?」


 前回は速攻で連絡がきた反面、精度が非常に低かったのだ。

 今回は余計なものには引っかからず、ちゃんと赤い髪の人間を捜してくれているのかもしれない。


 それでも何度か空振りしてしまうのは仕方がないだろう。

 ダメ元で、ひとまずそのベイビースーラのいる場所へと向かうことにした。


「ここから三十キロくらいかな」

「結構遠いやんか」

「これに乗っていけばすぐだよ」


 リオンは土船を作り出した。


「……まさか、この船が地上を走るとか言わへんよな?」

「走るけど?」


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