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第155話 気が済むまでやればいい

めちゃくちゃ久しぶりの更新で申し訳ありません。。。

「えい!」

「たあ!」

「ぐっ……ば、馬鹿な……二人がかりとはいえ、余が……っ!」


 拮抗しているように見えた両者の戦いだったが、段々と形勢が手数で勝る双子へ傾いてきた。


「じゅ、獣王様が……」

「こんなことが……」


 最強の獣王が苦戦する姿に、その場で勝負の行方を見守っていた家臣たちが戦慄している。


「な、何をぼーっとしておる! 貴様ら早く陛下に加勢せんか!? 陛下が子供に負けるなど、絶対にあってはならんのだぞ!」

「そう言われましても……あそこに割って入るなんて、とても……」


 新たに駆けつけた兵士たちが怒鳴られるも、もはや彼らが加入できるレベルの戦いではない。


「くくく、儂に任せておくがよいぞ」

「アンブル老!」


 そこへ現れたのは、小柄で皺くちゃな老獣人だった。

 ローブを身に付けて杖を手にする彼は、どうやら獣人には珍しい魔法使いらしい。


「しかし、闇雲に魔法を打っては陛下に当たってしまいかねないが……」

「心配は無用。補助魔法を使えばよいだけであるからの。獣王様をバフで強化し、あの小僧どもをデバフで弱体化する。それで戦況はあっさり逆転するであろう」

「おおっ! さすがはアンブル老!」

「さて、まずは陛下にバフを……む? な、何だ、おかしいの?」

「ど、どうされましたか?」

「魔力を、まるで練ることができぬのだ!?」


 それもそのはず。

 余計な横やりをリオンたちが許すはずもない。


「お粗末な魔法制御力じゃのう。ま、獣人ではこんなものか」

「っ! き、貴様の仕業か、エルフ!」


 老獣人を妨害していたのはメルテラだ。

 相手の魔力操作へ強引に介入することで、魔法を発動できないようにしているのである。


「くくくっ、抜かったな、エルフめ!」


 そう叫び、老獣人は手にしていた杖を振るう。

 それだけで炎の塊がメルテラ目がけて放たれた。


 どうやら彼の杖は、それだけで魔法を発動することが可能な魔道具だったらしい。


「この儂が、魔法を封じられたときの対処をあらかじめ考えておらぬとでも思ったか! はっはっはっは!」

「無論、気づいておったがのう? その杖が魔道具であることくらい」

「っ!?」


 魔法の直撃を受けたはずのメルテラが、何事もなかったかのように燃え上がる炎の中から姿を現す。


「じゃが、無視したのじゃ。使われたところで、わらわにダメージを与えられるような代物ではないと見ただけで分かっておったからの」

「ば、馬鹿な……ハイオーク程度なら、丸焼きにできる威力の魔法を喰らって……無傷など……」


 老獣人は唇を震わせながら後退る。

 が、次の瞬間、地面を蹴ってメルテラに躍りかかっていた。


「これでも儂は獣人だ! 歳を取っていようと、貴様のようなひ弱なエルフなど、腕力で捻りひでぶっ!?」


 顔面にメルテラの蹴りをまともに喰らい、老獣人が鼻血を噴き出しながら吹き飛んでいった。

 魔法でダメなら、獣人の腕力でねじ伏せようとしたのだろうが、ただのエルフではなく、錬金術で作り出したホムンクルスである。


「身体能力でもそこらの獣人ごときに後れは取らぬのじゃ」


 ちなみにこの間、リオンはと言うと、隙を見て逃げようとしていた家臣たちを魔法で動けなくし、床に転がしていた。

 その中にはシャームの姿もある。


 そうしてリオンたちが活躍している間にも、双子と獣王の戦いは佳境へと入りつつあった。


「ぐがっ!? こ、このクソ餓鬼どもがぶげっ!?」


 もはや獣王ベンガールは防戦一方だ。

 双子の攻撃を何度も浴びて、いつ意識を失ってもおかしくない。


「ま、参った! 降参だ! 余の負けだ! だからこれ以上ぎゃっ!?」


 ついには敗北を認めて宣言した獣王だったが、しかし双子は攻撃の手を止めようとしない。


「ちょっ、降参と言っておるだろう!? いい加減、やめぶぐあっ!?」


 獣王の訴えにも、お構いなく殴り、蹴り続ける双子。


「ひぃっ、も、もうやめてくがあっ! お、お願いだからっ! やめぶ……っ! し、死ぬっ……死んでしまぎゃん……っ! や、やめてくれっ……ごはっ!?」


 懇願する獣王だが、双子の怒りはまだ収まらないようだ。

 もはやボロ雑巾のようになって涙ながらに命乞いする獣王と、それを無視して攻撃をやめない幼い双子。


 その異様な光景に、その場にいた猫人族たちは戦慄し、真っ青になっている。

 ガタガタと震えている者もいた。


「が……は……」


 ついには意識を喪失する獣王。

 これでようやく終わったかと思いきや、


「「リオン」」

「まだやるのか?」

「「ん」」

「仕方ないな。気が済むまでやればいい」


 双子に頼まれて、リオンは獣王に回復魔法をかけた。


 何の真似だと猫人族たちが驚く中、一瞬にしてすべての傷が癒え、獣王が目を覚ます。

 しかしその直後、双子が痛烈な蹴りを獣王に見舞い、吹き飛んだ。


 壁に叩きつけられて目を剥く獣王の目の前に、まるで衰えない殺意を剥き出しにした双子が近づいてくる。


「まだ終わってない」

「続き」

「ひぃっ!?」


 もはや完全に戦意を失っている獣王への蹂躙劇が再会された。


「ぐぎゃ……ぶゃっ……ひぎぃっ……」


 痛々しい殴打の音と、獣王の悲鳴が休むことなく響き続ける。


 ――その場にいた猫人族たちの誰もが思った。


 あの双子は獣王ベンガールより遥かに恐ろしい。

 絶対に怒らせてはならない、と。


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