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第146話 それでは浄化しまーす

 古代遺跡内に現れる魔物の多くはゾンビやスケルトン、ゴースト、そしてミイラといったアンデッドたちだった。


「「「うーあー」」」

「はい、止まってくださーい」

「「「うーあ……」」」


 だがシルヴィアが停止を訴えると、大人しくそれに従う。

 どうやらリオンの推測した通り、彼女を自分よりも上位のアンデッドだと認識しているらしく、その命令に逆らうことができないようだった。


「それでは浄化しまーす!」

「「「うあ~~」」」


 お陰で簡単に浄化し、排除することが可能だった。

 魂が天へと召され、ゾンビやスケルトンの肉体が崩れて砂と化していく。

 ゴーストであればそのまま霊体が薄れて消えていった。


「あ、そこトラップだから気を付けて。道は……あっちの方だね」


 さらにはトラップも簡単に看破し、ルートを間違うこともない。


「どうしたの、ミーナお姉ちゃん? こっちだよ?」

「……」


 お陰でミーナはまったく隙を見い出せず、いつまで経っても彼らを撒くことができないでいた。

 そうこうしていると、


「もうすぐ一番奥だね」


 あっという間に遺跡の最深部に辿り着いてしまっていた。

 もはや諦めの境地で、ミーナは大人しく後を付いていく。


 やがて重厚な扉が現れ、リオンの指示で双子がそれを押した。

 ごごごご……と重々しい音とともに扉がゆっくりと開いていく。


 そこには遺跡の中とは思えないくらい広大な空間が広がっていた。

 そして中心に鎮座していたのは、これまでの十倍はあろうかという巨大な棺桶だ。


「や、ヤバい気配がするわ……。近づかない方が賢明よ」


 そう小声で注意を促すミーナ。

 彼女は遠くに見える扉を指さしながら、


「たぶん、接近すると中から魔物が出てくるパターンね。だけど壁沿いに大きく迂回していけば回避できるはず」


 あまり戦闘が得意ではない彼女は、こうしてあらかじめ危機を回避することによって数々の遺跡やダンジョンを踏破してきたのである。

 しかしリオンは平然と言う。


「え? 大丈夫だよ。こっちにはシルヴィアもいるしね」

「ちょっ!? だからって、わざわざ危険を冒す必要ないでしょっ?」


 そんなミーナの訴えなど無視し、リオンが無造作に近づいていくと、突如として棺桶の蓋が跳ね飛んだ。

 ずごんっ、と蓋が地面に激突して轟音が響く。


 棺桶から起き上がってきたのは、身の丈五メートルを超す巨大なミイラだった。


「ウオアアアアアアアアアアッ!!」


 眠りから覚まされたことを憤るような雄叫びを上げ、棺桶から飛び出してくる。


「な、なんてデカいミイラよ!?」


 その凄まじい威圧感に後退るミーナ。

 一方でシルヴィアが意気揚々と前に出る。


「私に任せてください! はいはい! 怖くないですよ! 落ち着いてくださーい!」

「ウオアアアアアアアアアアアアッ!」

「……あれ? ちょっ、このミーナさん、言うこと聞いてくれないんですけど!?」

「ミイラよ、ミイラ! ミーナはあたしだから! 間違えないで! って、そんなこと言ってる場合じゃなーい!」


 どうやらシルヴィアの威光も、この巨大ミイラには効かないらしい。


「「ん!」」


 迫りくる巨体へ、双子が勇ましく突っ込んでいく。

 そして丸太のように太い足へ、両側から蹴りを叩き込んだ。


 バァァァンッ!


「~~ッ!?」


 双子の蹴撃を受けて、巨大ミイラの両足が弾け飛んだ。

 ミイラは頭から地面へと激突する。


「ちょっ、なに今の威力!? あの二人、前に会ったときよりめちゃくちゃ強くなってない!?」


 ミーナが驚愕する中、巨大ミイラの下半身の包帯がぐにょぐにょと蠢き始めた。

 そして二本の脚を形作ったかと思うと、それが元の脚のように動き出す。


「元通りになった!?」


 巨大ミイラは何事もなかったかのように立ち上がった。

 どうやら高い再生能力を持っているらしい。


「「やる!」」


 それでも双子は戦意を失わず、再び飛びかかっていった。

 双子の強烈な攻撃が、幾度となく巨大ミイラの身体を粉砕する。


 しかしその度に、あっという間に再生して元通りになってしまう。


「打撃で倒すのは難しそうよ!」

「そのようじゃの。そして再生力の源は恐らく、あの包帯じゃ。つまり、あれを燃やしてしまえば倒せそうじゃが……魔法をロクに使えぬあやつらには荷が重いのう。くくく、我が加勢してやろうかの?」

「「やる!」」


 メルテラの提案を突っ撥ねる双子。

 自分たちだけで巨大ミイラを倒すつもりらしい。


「「ふぁいあぼーる」」


 そのとき双子が使ったのは、初級の火魔法。

 獣人が苦手としている魔法だが、基礎的なものなら習得していた。


「しかし初級の魔法で事足りるかのう? ……む? 何じゃ?」


 からかい気味に言うメルテラだったが、双子の予想外の使い方に目を丸くした。


 双子は魔法をそのまま放つのではなく、自身の拳に留めていたのだ。

 そして燃える拳を、巨大ミイラの身体に何度も叩き込んでいく。


「アアアアッ!?」


 包帯に次々と炎が燃え移っていき、ミイラが明らかに慌て出す。


「魔法剣ならぬ、魔法拳だな。接近する必要があるというデメリットはあるが、これなら魔法を飛ばすよりも威力が高い」


 リオンは双子のアイデアに感心する。


 頑張って練習しても、二人はなかなか初級以上の魔法を覚えられなかった。

 そこでより上級の魔法を習得するのではなく、今使える魔法の応用法を考えたのだ。


 包帯を燃やし尽くされたミイラは再生能力を失い、後は双子に成す術なく蹂躙されたのだった。


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