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第145話 気にしたら負けじゃ

「近くで見ると本当に大きいね」

「「おっきー」」


 翌日、リオンたちは古代遺跡へとやってきていた。

 遠くから見るよりずっと迫力がある。

 高さこそメルテラの塔には及ばないが、四角錐の形をしているため、非常に巨大な建造物だ。


「むむ、これはなかなか面白い石材でできておるの。もしかしたら魔法で生み出されたものかもしれぬ。何千年も建っておるにもかかわらず、ほとんど風化した様子がないのは大したものじゃ」


 土魔法のエキスパートであるメルテラが感心したように唸る。


「それでは準備はよろしいでしょうか?」


 そう訊ねてきたのは、領主の息子だ。

 彼の手には棒状のものが握られている。


 リオンが頷くと、彼はそれを遺跡を護るように屹立する獅子の石像の口に咥えさせた。

 すると地響きとともに、固く閉じられていた遺跡の門が開いていく。


「じゃあ、行ってくるよ」

「気を付けてください」


 領主の息子に送り出され、リオン一行は遺跡の中へと足を踏み入れた。

 その直後、大きな溜息が一つ、吐き出される。


「はぁ……何であんたたちと一緒なのよ……」


 お宝ハンターのミーナだ。


「お姉ちゃんが遺跡のお宝を盗もうとしてるからでしょ」


 実は昨晩、領主に「自分たちも調査を手伝いたい」とリオンの方から申し出たのだった。

 目の前に盗人がいると知っていて、さすがに見過ごすわけにはいかなかったのである。


「う~、せっかくお宝盗り放題だと思ったのに!」


 もはや隠す気すらないようで、ミーナは悔しそうに地団太を踏む。


(まぁでも、これまでの探索で大よその構造は理解してる。こいつらをトラップにでもかけちゃって、どこかで撒いてしまえば……)


 しかし内心ではそんな風に画策していた。

 早速の分かれ道で、彼女は右側を指さす。


「正しいルートはこっちね」

「違うよ、あっちだよ」

(何で分かるのよおおおおっ!? 初見じゃないのっ!?)


 実はリオンの言うルートが正しかった。

 ミーナは最初に右側へと進んだのだが、その結果、酷い目に遭ったのである。


(そういや、あの塔でもまるであらかじめ知ってるかのように、簡単に階段を見つけていたわね……ほんと何なのよ、こいつ……)


 そう内心で舌を巻くミーナを余所に、リオンは迷う素振りもなくずんずん先へと進んでいく。


(ちょっ、このあたしが一日がかりでようやく踏破した場所を、すんなり超えていったんですけど!?)


 盗賊系統のクラスⅡジョブである【怪盗ファントム】を取得しているミーナですら、こうした古代遺跡の探索は容易ではないのだ。


(もしかしてこいつ、それ以上のジョブ持ち……? でもそれじゃ、あの強さの説明がつかないんだけど……)


 と、そのときだ。

 リオンが選んだルートを見て、ミーナは心の中で笑った。


(そっちは危険なルートよ。どうやらこいつだって完璧ってわけじゃないみたいね)


 そうしてちょっとした広間に出た。

 そこに置かれていたのは、大量の棺桶である。


(あのすべてから魔物の気配がする……少しでも近づいたら、中から出てきて襲いかかってくるって寸法ね。さすがのこいつらだって、この数を相手にしたら苦戦は必至よ。あたしはそれに乗じて、こっそり逃げ出してやるわ)


 ミーナはそう画策する。

 そして案の定、棺桶の蓋が重い音を立てながら次々と開いていった。


「ひぃぃぃっ!? あ、アンデッドじゃっ!?」

「き、気持ち悪いですっ!」

「お主も同類じゃろ!」

「私をあんなのと一緒にしないでください!」


 中から現れたのは、ボロボロの包帯で全身が覆われたミイラたちだった。

 言わずと知れたアンデッドモンスターである。


(こんなのとどう考えても戦いたくないわよ……)


 顔を顰め、逃げるタイミングを見計らうミーナ。

 しかしどういうわけか、棺桶から出てきたミイラたちは一向に襲いかかってくる様子がなかった。


「ど、どういうことじゃ?」

「うーん……何となくですけど、彼ら、戦う意思がない気がします」

「な、なぜそんなことが分かるのじゃっ!?」

「何となく?」

「もしかしたらシルヴィアお姉ちゃんのことを上位のアンデッドだと理解して、攻撃してこないのかもしれないね」


 リオンの言葉に、ミーナは混乱した。


「ちょ、ちょっと待って。そのシルヴィアって誰のことよ……? このエルフは違うし、双子も別の名前だったはず……従魔のスライムだって……」


 実は彼女には今まで、ゴーストであるシルヴィアの姿が見えていなかったのだ。


「はい! 私です!」


 シルヴィアがそう主張しながらミーナの前を浮遊する。

 するとようやくその身体が見えてきたようで、


「ぎゃああああああああっ!?」


 大きな悲鳴を上げ、思わず尻餅を突いてしまう。


「ごごご、ゴースト!? い、いつの間にっ!?」

「ずっと一緒に付いていたけど?」

「ぃっ!?」

「そんなに驚かなくてもいいじゃないですか! 安心してください! 私はいいゴーストですから!」


 シルヴィアはにっこりと微笑みながら害はないとアピールしたものの、ミーナの身体からは震えが止まらない。


「ともかく、まずあのミイラたちをどうにかするよ」

「じゃあ手分けして浄化していきましょう!」


 それからリオンとシルヴィアは協力し、すべてのミイラたちを浄化させていった。


「ゴーストが、浄化魔法を使ってる……?」

「気にしたら負けじゃ」


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