表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

136/186

第136話 味見してみるか

 あたしはミーナ。

 人呼んで、美人過ぎる最強お宝ハンターよ!


 え? 一体、誰が呼んでるのかって?

 そんなことどうだっていいじゃないのよ!


 今日も今日とてお宝の匂いを嗅ぎつけ、あたしはこの街へとやってきたわ。

 交易都市バルバラ。

 グルメタウンとしても知られてる、とっても栄えてる都市よ。


 ここでグルメ王となんて大層な名前で呼ばれてる貴族がいるの。


 ゴザール?

 ウザール?

 アザール?


 まぁ名前なんて何でもいいわよね!

 とにかくその何とかザールなら、きっと貴重なお宝をいっぱい所持しているはずよ。


 というわけで、あたしはその何とかザールに近づくため、冒険者ギルドに出されていたある依頼を受けることにしたわ。

 実はこのミーナ様、こうした場合に備えて、密かに冒険者としても活動しているのよ。


 しかもなんとAランク。

 さっすがはこのあたしね!

 お宝ハンターとしての仕事をしながら、片手間でAランク冒険者にまで上り詰めちゃうなんて!


 ちなみにマジックアイテムで姿を変えてるから、誰もあたしだとは思わないわ。


 そうして、あたしはAランク冒険者として、何とかザールの護衛依頼に潜り込んだ。


 彼が常に肌身離さず持っているアイテムボックス。

 きっとあの中にはお宝がいっぱい入ってるはず。


 もちろんアイテムボックス自体も貴重なものだし、あれごと頂戴しちゃうわ。


 って、何であいつがいるのよおおおおおおおおっ!?


 あたしは思わず叫びそうになった。

 なにせ護衛依頼を受けた冒険者の中に、あのヤバい子供がいたんだもん。

 名前は確か……そう、リオンよ!


 忘れもしないわ。

 エルフの国で、お宝を求めて英雄のお墓だという塔に登ったときのことを……。

 酷い目にあったのに何のお宝もゲットできなかったし。


 もちろんあの化け物双子も一緒だわ。


 しかも、何かちょっとこっち見てない……?

 まさか、バレてなんかないわよね?

 大丈夫なはずよ……だって、まったく別人の姿に変身してるんだから……。


 でもあたしの直感が訴えている。

 あいつがいる限り、動くのは危険だ、と。


 これじゃ、せっかくバザール(やっと覚えた)に怪しまれずに近づけるようになったというのに、何もできないじゃない!


 ……あ、焦ってはダメだわ。

 きっとそのうち、チャンスは巡って来るはず。


 と思っていたら、謎の遺跡を発見したわ。

 さらに遺跡の奥にはお宝が眠ってた。


 くっ、全部あたしのものにしたい!

 でも今は我慢よ!


 あああっ、何でこいつが持っておくことになってんのよ!?

 てっきりバザールのアイテムボックスに入れておくかと思ったら、リオンの方のに入れることになってしまった。


 何であんたがアイテムボックスなんて持ってんのよ!

 しかも何その収納力! あたしも欲しい!


 お陰で独り占めすることは難しくなってしまったわ。

 だけどそんなことより。


 あたしは見逃さなかった。

 沢山の財宝がある中、バザールが密かに自分のアイテムボックスに謎の壺を入れているのを。


 見たところ価値がありそうには見えないけど、わざわざそれだけを持っていくというのだから、よっぽどの品物に違いないわ!






 バルバラの街に戻ってきたあたしは、バザールの屋敷に忍び込んだ。

 もちろんあの壺を盗み出すためよ。


 貴族の屋敷だけあってかなり警備は厳重だけど、このミーナ様にかかれば楽勝ね!


 え? 護衛依頼なんて受けずに、最初からこうしてればよかったって?

 う、うるさいわね……っ!


 ともかくあたしはバザールの部屋を突き止め、その天井裏までやってきた。

 天井に小さな穴を開け、部屋の中を覗き込む。


 ……あったわ。

 あの壺よ。


 ちょうど今、バザールが壺を見ているわね。

 って!?


 あたしは見てしまった。

 その悍ましい光景を。


 壺の中からバザールが気持ちの悪い肉の塊を取り出したかと思うと、なんとそれにいきなり齧りついた!


 な、な、何やってんのよおおおおおおおおおっ!?


 ぐちゃぐちゃぐちゃ……。


 た、食べてる!?

 あいつ、あの汚い肉塊を食べてるの!?


 ていうか、何なの、あの肉塊は!?

 何で壺の中に入ってたのよ!?


 あたしはもうパニックだ。

 気持ち悪すぎてゲロ吐きそう……。


 それになんか嫌な予感しかしない。

 あたしの勘が警鐘を鳴らしてるわ。


 は、早くここから逃げないと……っ!


 結局、何もお宝をゲットできないまま、あたしは屋敷から逃げ出したのだった。




      ◇ ◇ ◇




「おい、これじゃ足りないぞ。もっと持ってくるのだ」

「か、畏まりました、ご主人様……」


 バザールの屋敷に務めるメイドが、顔を引き攣らせながら頷いた。


 すでにテーブルの上には信じられない量の空っぽの皿が積み上がっている。

 なのに彼はまだ食べるつもりらしい。


 厨房はすでに悲鳴を上げていた。

 ここ最近、バザールが途轍もない量の食事を取るせいだ。


 その肥満体型に似合わず、以前は人並みの食事量だった。

 だが先日の食材調査から帰ってきてから、突然、大量に食べるようになったのである。


 お陰でたった数日にして、バザールの身体が見て分かるくらい膨れ上がっている。


「しかし、よく見たらこの皿も美味しそうだな……」


 何を思ったか、バザールはソース一つ残っていない皿を取り上げると、


「どれ、味見してみるか」


 バリボリバリボリ……。


 なんとそれを食べ始めてしまった。


 これにはその場にいた彼以外の人間全員がドン引きである。

 だがそんなことなどお構いなしとばかりに、バザールは頷くのだった。


「ほう、なかなか悪くないではないか」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

村づくりコミカライズ
村づくりコミカライズがスタート!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ