表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

135/186

第135話 今度こそ宝物庫だろ

 襲いくる魔物の大半を双子が倒していき、やがて一行はその場所へと辿り着いた。


「扉があるぞ……」

「もしかして宝物庫か?」

「いや、ちょっと嫌な雰囲気がするな……」


 大きな扉だ。

 遺跡の奥にあるためか、ほとんど風化しておらず、施された見事な彫刻がそのまま残っている。

 これ自体、持ち帰れば高値で売れるかもしれない。


「まぁ、何がいてもこの子たちがいれば大丈夫だろう」

「そうだな」


 ここに来るまでの活躍もあって、絶対的な信頼を抱いている様子だ。

 双子も「まかせろ」という顔で頷いている。


「だがこの扉、重くて開かないぞ?」

「鍵がかかってるんじゃないか? ほら見ろ、ここに鍵穴があるぞ」


 数人がかりで扉を押すも、ビクともしない。

 するとそれを見かねたのか、双子が前に出ていって、


「「よいしょ」」


 左右の扉をそれぞれ力いっぱい押した。


 メキメキメキッ!


 何かが盛大に破壊される音とともに、扉がゆっくりと開いていく。


「「あいた!」」

(((開いたには開いたが、間違いなく鍵ごと壊したよな……)))


 何人かが心の中で突っ込む中、扉の向こうを見た者たちが「あっ」と声を上げた。


「魔物だっ!」

「こっちに向かってくるぞ!?」


 そこにいたのは六本もの腕を持ち、二本足で屹立するゾウのような魔物だった。

 大木の幹のように太い腕、そして長い鼻を振り回しながら、巨体が凄まじい速度で迫りくる。


「パオオオオンッ!」


 しかし双子は怖れるどころか、逆に魔物へと突っ込んでいった。


 相手は身の丈五メートルをゆうに超える。

 対して、双子は身長一メートルそこらしかない。


「「「あ、危ないっ!」」」

「「えい」」

「パオオオオンッ!?」

「「「……はい?」」」


 誰もが双子が無残に踏み潰される光景を予想したが、実際に目撃することとなったのは、魔物が悲鳴とともに顔面から地面に激突する姿だった。


 双子がゾウの両足にそれぞれ強烈な蹴りを見舞ったのである。

 突進の勢いと自らの体重もあって、魔物は顔面を強かに打ち付ける羽目となった。


 すぐさま身を起こそうとする魔物だったが、そうはさせまいと、双子は足を執拗に攻撃していく。

 これだけの巨体を二本足で支えるのは大変なのだろう、足に大きなダメージを負った魔物は、もはや立ち上がれず、後は虚しく六本の腕と鼻を振り回すことしかできなかった。







 強敵(?)を撃破した一行は、その部屋の奥にさらに別の扉を発見する。


「今度こそ宝物庫だろ!」

「よし、開けるぞ」


 今度は双子の力がなくても、扉を開けることができた。

 その先にあったのは――


「やった! お宝だ!」

「間違いない!」


 まさに冒険者たちが求めていた金銀財宝だった。


 誰もが目を輝かせ、どんな財宝があるのかを確認していく中、バザールは一人、部屋の奥へと歩いていく。

 そこには何の変哲もない、古ぼけた壺が置かれていた。


(あの壺……なんか嫌な感じがするな……)


 リオンは直感的に何かを感じ取った。

 壺には蓋がされており、何かを封じているようにも見える。


 バザールは私兵の一人に命じた。


「……おい、これをアイテムボックスに入れておけ」

「は、はい?」


 こんなものに価値があるのだろうかと首を傾げつつも、彼は言われた通りにする。

 その様子をしっかりと確認してから、バザールは冒険者たちに告げた。


「後は諸君らで山分けするがいい」

「ほ、本当っすか?」

「やった! 太っ腹――あ、いえ」


 具体的な取り分については街に戻ってからとなり、ひとまずリオンのアイテムボックスにすべて入れておくことになった。


「僕が持ってていいの?」

「ああ。お前さんなら信頼できる」

「それに多少ちょろまかされたところで、それを気にする奴はいねぇよ。むしろ活躍を考えたら、半分以上を持っていったところで誰も文句は言えねぇだろうな」


 というわけで、部屋にあったすべての財宝を、リオンはアイテムボックスへ収納した。


「相変わらず出鱈目な収納量だな……」

「どれだけ入るんだ?」

「うーん……バザールのおじちゃんの屋敷で例えると、その二十倍から三十倍くらいかな?」

「「「……え?」」」


 物凄い顔を向けられ、リオンは慌てて取り繕う。


「じょ、冗談だよ、冗談」

「なんだ、冗談か……」

「そりゃそうだろ。普通のアイテムボックスはせいぜい荷馬車一台分、それでもめちゃくちゃ希少なんだ。あの屋敷が丸ごと納まるなんてあり得ねぇよ。ましてやその何十倍なんて……」


 実際には冗談でも何でもなく、本当にそれくらいの容量はあるのだが、リオンは黙っておくことにした。


 それから遺跡を脱出したリオンたちは、すぐにバルバラの街へと戻ることとなった。

 当初の予定より早い帰還となるが、他ならぬ依頼主のバザールが、


「お陰ですでに十分過ぎるほどの成果を得ることができた。今回の探索はここまでにしておくとしよう」


 との考えだったためだ。

 もちろんこれに反対する者はいなかった。




    ◇ ◇ ◇




 バルバラの街の屋敷に戻ったバザールは、そのまま自室へと引き籠ってしまった。


「はぁ、はぁ……つ、ついに、手に入れたぞ……。これがあれば……わしは……」


 その壺の中身を覗きながら、バザールは息を荒らげる。

 そこにあったのは、ぶよぶよとした謎の肉塊だった。


「だ、だが一体、これをどうするんだ……?」


 ――喰らえ。

 ――貴様はそれを喰らうのだ。

 ――そうすれば、貴様はその力を得ることができるだろう。


「……いや、そうだ。わしには分かる……そうか、こいつを……」


 ()()()に従い、バザールはその肉塊に躊躇なく食らいついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

村づくりコミカライズ
村づくりコミカライズがスタート!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ