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第133話 そんなことより食材探しを続けるぞ

「あ、この肉はかなり美味しそうだよ」

「「「そんなこと言ってる場合か!」」」


 良い食材を発見したとばかりに言うリオンに、周囲が思わずツッコミを入れる。


 それもそのはず。

 ブラッドグリズリーはこの森でも上位の危険度を誇り、戦えばSランク冒険者すら無傷では済まされない凶悪な魔物なのだ。


 二人のAランク冒険者を筆頭に、何人もの実力者たちが集まっているとはいえ、簡単に倒せるような相手ではない。


「奴はこう見えてかなり素早い! 前衛はしっかりと奴の注意を引きつけろ! 後衛はバザール様を護りながら距離を取るんだ!」


 ジギルが声を張り上げて指示を飛ばす。


「その必要はないよ?」

「え?」


 ズドオンッ!


 突然、大きな音が響いた。

 いつの間にか巨大熊の両側に移動していた双子が、両脇へ強烈な蹴りを見舞ったのである。


「~~~~~~~~~~~~~ッ!?」


 ブラッドグリズリーの巨岩のような腹部が、両側からの衝撃を受けて一瞬、半分以下にまでその体積を減らしたように見えた。


 ズシャリ……。


 白目を剥いたブラッドグリズリーは、そのまま気を失って倒れ込む。


「「「……は?」」」







「し、死んでいる……」

「ブラッドグリズリーを……一撃で……?」

「Sランク冒険者ですら苦戦するという魔物だぞ……? それをこんな幼児たちが……?」


 双子の先制攻撃を受け、ブラッドグリズリーは絶命していた。


 腹部がぐにょりと曲がっている。

 恐らく肋骨は粉々に砕け、内臓も酷いことになっているだろう。


「もうちょっと綺麗に倒してほしかったんだけどな」


 これでは内臓を料理に使えないかもしれないと、リオンは残念がる。


「「……ん」」


 それを聞いて、双子は少し反省している――わけではなく、リオンと同じく残念そうにしている。

 単に食材がダメになったことが悔しいのだろう。


「ともかく、解体しちゃうね。いい?」

「あ、ああ……って、解体までできるのですか?」


 唖然としているバザールから許可をもらったので、リオンは手際よくブラドグリズリーをバラしていく。

 鉄格子のような肋骨は案の定、粉々になっていたが、意外と内臓は綺麗な状態だった。


 食材に使えるものとそうでないものを取り分けていく。


「な、なんて手際の良さだ……」

「解体の専門業者じゃないよな……?」


 調理士系統のジョブの効果か、実は幾らか解体も上手くなっていた。

 気が付けば、巨大な肉の塊が部位ごとに積み上がっている。


「アイテムボックス持ってるんだよね?」

「で、ですが、さすがにこれだけの量は入りません」

「そう? じゃあ僕のに入れておいて、帰ってから出すようにするよ」


 そう言って、リオンは自分のアイテムボックスへブラッドグリズリーの肉を保存していく。

 もちろんすべて納まってしまった。


「「「……」」」









 それから数日をかけて、一行は赤の領域を探索した。

 現れる魔物のほとんどを双子が倒し、料理はリオンが提供しながら、順調に様々な食材を発見していく。

 当然ながら食材を見つけているのもリオンばかりだ。


「俺たち美味い飯を食ってるだけだよな?」

「それを言うな……」

「……彼らだけでよかったのでは?」

「そんな気がする……」


 私兵や冒険者たちは、自分たちの役割に疑問を抱かずにはいられない。


 一方、バザールはというと、


「これほど素晴らしい探索ができたのは初めてだ! もちろんリオン殿のお陰です!」


 やたらとテンションが高かった。

 どんな魔物も瞬殺してしまうので、森の奥の奥まで探索することが可能で、しかも未発見の食材がすでに数えきれないほど見つかっているのだ。

 彼にとってはこれ以上ない喜びだろう。


 と、そのとき。

 リオンがその高い探知能力であるものを発見する。


「ねぇ、バザールのおじちゃん。この先に何かあるよ」

「何か、とは?」

「たぶん、建造物だと思う」


 やがて一行が辿り着いた場所にあったのは、リオンの予想通り石造りの建物だった。

 あちこちに彫刻が施されており、明らかに人工物である。


「これは……」

「遺跡、か?」


 かなり昔に作られたらしく、全体はびっしりと苔に覆われており、ところどころ風化により崩れてしまっている。


「中に入ることができそうだね」


 建造物の中心には門があった。

 両開きの扉は左右どちらも完全に壊れてしまったようで、前後に倒れ込んでいる。


「こんなところに遺跡があるなんて……」

「すげぇお宝が眠ってるかも知れねぇぞ?」


 冒険者たちが目を輝かせる中、しかしバザールは鼻を鳴らした。


「ふん、お宝などわしには必要ない。そんなことより食材探しを続けるぞ」


 どうやら遺跡やお宝にはまったく興味がないようだ。


 依頼主の命令には逆らえない。

 冒険者たちは残念そうにしながらも、バザールに従うしかないのだった。


「でもそろそろ日が暮れるよ。ここなら少し開けてて周囲の警戒がしやすいし、今日のところはここで休んだ方がいいんじゃない?」

「おお、確かにそうですな。さすがリオン殿。ではそうしましょう」


 しかしリオンの言葉に、バザールはあっさりと前言を撤回する。

 そうしてこの日は、この遺跡の傍で野営をすることになったのだった。


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