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第119話 背筋がぞっとするからやめてくれ

「【食帝エンペラーシェフ】……? というと、調理士系統のクラスⅢジョブではないですか……。つい最近、【従魔王】を取得されたばかりでは……?」

「うん。だけどマスターしちゃって、今は調理士系統を順番にマスターしていってるんだ」

「リオン殿……あなたは一体……いえ、畏まりました。それではすぐに〝大祈祷〟の準備を始めましょう」


 バスティアンは戸惑いつつも、リオンが常識を遥かに超越した存在であることはすでに分かっているからだろう、意外にもすんなりと受け入れたのだった。






「――はい、これでリオン殿は、新たなジョブ【食帝】を取得されました」

「ありがとう、神殿長のおじいちゃん」


 念のため、鑑定で確認してみる。


 ジョブ

 【剣聖ソードマスター】レベル20

 【大魔導師グランドウィザード】レベル20

 【聖者セイント】レベル20

 【盗賊王キングシーフ】レベル20

 【従魔王キングテイマー】レベル20

 【食帝エンペラーシェフ】レベル1


(これでクラスⅢジョブが六つになったか)


 種族レベルがカンストして、ジョブポイントは残り5000。

 今のところ、次はどの系統のジョブを取得するかまったく考えていないが、まだあと二つの系統をクラスⅢまで取得できる計算だ。


「三聖女様方には会っていかれないのですか? 大変心配しておられますよ」


 リオンが帰ろうとすると、バスティアンに呼び止められた。


「うーん……」


 先日も何も言わずに去ってしまったし、確かに顔ぐらい見せた方が良いのかもしれないが、


(めんどくさい)


 率直に言ってそれだった。


「ええと、今ちょっと忙しくって。おじいちゃんからよろしく言っておいてくれない?」

「……畏まりました。それではそのように致しましょう」


 物分かりのいい爺さんでよかったと胸を撫でおろしつつ、リオンはバルバラへと転移するのだった。







「……さて。できれば【食帝】のレベルもカンストさせておきたいが……もうあまり時間がないな」


 実はまだ出場権すら獲得していない。

 大会に出場するためには、飲食店ギルドに赴き、そこで簡単な試験に合格しなければならないのだ。


 そこで大会で提供する予定の料理を実際に作る必要があるのだが、リオンはまだレシピすら考えていなかった。


 大会は二週間後。

 一方この予選とも言える試験は、一週間後までに突破しなければならない。


【食帝】のレベル上げより、ひとまずこちらを優先させるべきだろう。


「どうしようかな……」


 と、レシピを考えようとした、その瞬間だった。


 脳内で無数のアイデアが弾け飛んだ。

 今までまったく見たことも考えたこともないような料理が浮かび上がり、頭の中を駆け巡ったのだ。


「……美味そう」


 想像するだけで涎が出そうになってしまう。


「なるほど、さすがクラスⅢジョブ……。まだレベル1なのに、次から次へと新しい料理のレシピが思い浮かぶ。しかも食べていないのに、大よその味まで理解できてしまう。問題は、多過ぎて絞り切れない点か……」


 大会での販売方法は屋台だ。

 当然、屋台で調理しやすいものでなければならない。


「いや、あらかじめ大量に作り置きしておいて、アイテムボックスに入れておくという手もあるな」


 食べ歩きがしやすい軽食系のものにするか、それともある程度がっつり食べられるものにするか。

 前者はどうしても単品当たりの儲けは落ちるだろうが、数を出せる。


 一方、後者だと屋台販売にはあまり適さないが、単価が高いため、上手くいけば前者よりも売り上げを伸ばせるだろう。

 ちなみに出場者たちが競うのは総売り上げである。


「あまり斬新過ぎるものはダメだな。客が手を出しにくい。だがありきたりでもダメだ。目新しさも欲しい。それなら……」


 リオンが行きついたのは、ある一つのレシピだった。

 それは百年前にはなかったが、今のバルバラでは一般的となった二つの料理を、大胆に組み合わせたもの。


「よし、ひとまず作ってみて、試食するか」


 それから市場に足を運んで食材を確保してきたリオンは、宿へ。


「「りおん!」」

「リオン!」

「お帰りなさーい」


 双子やメルテラたちがリオンの帰りを待っていた。

 リオンの顔を見るなり、双子が飛びついてくる。


「……二人はともかく、何でお前まで抱き着いてくるんだ?」

「た、ただの勢いじゃ! 勢い! 別に他意はない!」


 メルテラが顔を赤らめながらリオンから離れた。


「私も抱き着きたいです!」

「背筋がぞっとするからやめてくれ」


 飛びかかってきたシルヴィアから逃げるリオン。


「それよりこれから俺が考えた料理を試食してもらいたいんだ」

「「ししょく?」」

「試しに食ってみてくれってこと」

「「ん! たべる!」」


 目を輝かせる双子を連れて、リオンは宿のキッチンへ。

 先ほど事情を女将さんに話すと、使っていいと快く許可してくれたのだ。


「「なにつくる?」」

「それはできてからのお楽しみだ。ほら、邪魔だからそっちで大人しく見てろ」

「「ん」」


 わくわくした様子で纏わりついてくる双子を追い払って、リオンは料理に没頭する。

 レシピはすでに完璧、さらにスキルの効果か、今まで以上の手際の良さで調理を進めていく。


 ものの三十分ほどで試作品が完成した。


書籍版2巻がいよいよ今週金曜日(31日)に発売されます! ぜひよろしくお願いします!

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