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第116話 そっちも子供だろう

 その日、リオンはバルバラの冒険者ギルドにやってきていた。

 膨大な食費のせいで、お金を稼がなければならない。


 さすが大都市だけあって、バルバラの冒険者ギルドは立派な建物だ。

 ここを拠点にしている冒険者も多いようで、ギルド内は大勢の冒険者で賑わっている。


 中にはリオンとそう変わらない年齢の冒険者もいるようだ。

 と、まさにその一人が、リオンたちの方へと近づいてきた。


「お前も冒険者なのか? まだ子供じゃないか」

「そっちも子供だろう」


 せいぜい十二、三歳ぐらいの少年だ。

 装備を見ても、ほんの駆け出しといった印象を受ける。


 それでもリオンに対して先輩風を吹かせたいのか、少年は勝ち誇ったように言った。


「ふん! オレはこう見えて、もうすぐEランクに昇格するんだぜ!」


 彼の年齢なら確かに早い方かもしれないが、Eランクは下から二番目。

 リオンからすると遥かに格下である。


 そんなことも知らずに、少年は自らの武勇伝を語り出す。


「この間なんて、オレ一人でオークとやり合ったんだぜ! 一発、痛いのを食らわしてやったら、めちゃくちゃ怒り狂い出してよ! 必死にオレを追いかけてきたけど、生憎と足には自信があるんだ! 完全に引き離してやったぜ!」

「え? オーク、倒したんじゃないの?」


 てっきりオークをソロで討伐したという話かと思いきや、逃げ帰ったという話だった。

 なぜそれを自信満々に語れるのかと、リオンは疑問に思う。


「「……?」」


 双子も不思議に思ったのか、首を傾げていた。

 もしかしたらオークと言いつつ、実際にはジェネラルオーク、いや、キングオークあたりなのかもしれない。


「ば、バカ言えっ! オークをソロで倒せるなんて、Cランク以上の熟練冒険者たちだろ!」

「いや、うちの双子でも一人で倒せるけど……」


 双子が「「うんうん」」と首を縦に振った。


「はははははっ! つまんねぇ冗談やめろって! こんなチビどもにオークを倒せるわけねぇだろ!」

「「たおせる!」」


 冗談だと一笑され、双子が憤慨する。


「相手しなくていいよ」

「そうじゃの。ただのうるさいガキじゃ」

「お前だってガキだろ!」


 少年はメルテラに噛みつく。


「ククク、わらわがガキ? 目に見えるものだけが真実ではないのじゃぞ? 見た目に惑わされておることが、まさしくお主がガキであることを証明してしまったの」

「っ……」


 何となく含蓄がありそうなことを言うメルテラに、少年は少し怯んだようだ。

 その隙にリオンは受付窓口へと向かうと、受付嬢に声をかけた。


「魔物の素材を買い取ってほしいんだけど」


 バルバラへの道中で倒した魔物の素材を、アイテムボックスに保管しておいたのだ。

 これを売ればそれなりの儲けにはなるだろう。


「畏まりました。それで、素材はどちらに?」

「ここにあるよ」


 そう言ってリオンがアイテムボックスから取り出したのは、二足歩行する蜥蜴の魔物、リザードマンだ。

 硬い鱗が防具などに使われるため、重宝されている。


 肉は食用にもならないため、鱗だけを剥ぎ取り済みだ。


「こ、これはレッドリザードマンの鱗っ!? それにこっちは、ポイズンリザードマンの鱗では……っ?」


 どうやらリザードマンの上位種が交ざっていたらしい。


「もしかして上位種?」

「もしかしなくても上位種です! 上級冒険者ですら苦戦する魔物を、一体どうやって……」

「どうもこうも、普通に倒しただけだけど……」


 確かに通常のリザードマンとは色が異なる個体がいたのはリオンも気づいていたが、大して強さに違いがなかったため、ただ変色しているだけかと思っていたのだ。


 ちなみにレッドリザードマンは口から炎を吹くことができ、ポイズンリザードマンは尻尾の先が毒針になっているのだが、どちらもその特性を生かす前にリオンたちに瞬殺された。


「し、失礼ですが、冒険者ランクは……」


 リオンはギルド証を見せた。


「Bランク!?」


 受付嬢が目を剥いて驚く。


「う、嘘だ! お前なんかがBランクのわけないだろ!」


 そこへ割り込んできたのはさっきの少年冒険者だった。


「何かの間違い――ほ、本当だ!?」


 勝手にギルド証を盗み見て、目を丸くしている。


「い、いや、本物のはずがない! 偽造じゃないのか!」


 少年の訴えを受けて、受付嬢が魔道具らしきものでギルド証を調べる。


「これは……ま、間違いなく本物です」

「なんだって!? そんなはずあるか!」

「そう言われましても……魔道具にちゃんと反応しています」

「だ、だとしたら、誰かのものを盗んだんだっ!」

「いえ、機密になりますので詳しくは教えられませんが、その可能性もありません」

「ば、バカな……っ!?」


 いちいち騒がしい奴だなと、リオンは辟易する。

 近くにいた冒険者たちの注目が集まってきているし、静かにしてもらいたいところだ。


「金縛りにさせましょうか?」

「できるの?」

「これくらいの子供ならお安い御用です!」


 そう言って、シルヴィアが少年の身体に後ろから覆い被さった。


「こんなやつがBランクだな――っ!?」

「おっ、静かになった」

「ふっふっふ! 少しくらいなら操ることも簡単ですよ! ほら」


 シルヴィアの意思に従って、少年が下手糞なダンスを踊り始める。

 ……逆に目立ってしまうのでやめてほしい。


「金縛りというか、もはやほとんど憑依だな……」

「はっ!? この方法なら美味しいものを食べることができるのでは!?」


 妙案を思い付いたとばかりに手を打つシルヴィア。

 少年冒険者もまた、それに合わせて手を打っていた。



『転生勇者の気まま旅』の2巻が今月31日に発売されます!

お陰様で1巻は売り上げが好調だったようです。初版かなり刷っていただいたのですが、もう少し頑張れば重版できるかも…!という感じなので、1巻未購入の方はぜひ買ってくださいお願いします重版したい!(直球)

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