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第112話 近くにロリショタがいる

「えっ? 銀髪の少年を知っているんですか?」


 聖王国の湖畔に位置する街。

 そこで三人の女冒険者たちが、街の人から情報を集めていた。


 アンリエット、カナエ、ティナの冒険者パーティである。

 ステア王国の王都でまんまとリオンに逃げられてしまった彼女たちは、噂を頼りにこの国までやってきていた。


「もちろんよ。最近ちょっと噂になってたもの」


 頷くのはたまたま彼女たちの傍を通りかかった婦人だ。


「スライムを連れた美少年やで?」

「ええ、間違いないと思うわ」


 カナエが念を押すと、婦人ははっきりと首を縦に振る。


「私は直接見たわけじゃないけど、すごく整った顔の子だって聞いてるわね。そう言えば、エルフの女の子が一緒みたいよ」

「エルフ……? あっ、あのときの!」


 王都の冒険者ギルドで一瞬だけ遭遇したエルフのことを、アンリエットは覚えていた。

 やけに古臭い口調で話す子供エルフだ。


 そのとき突然、ティナが婦人に急接近し、


「ロリショタはっ……? ロリショタはっ……?」

「ロリ……?」


 あまりの剣幕にたじろぐ婦人。

 慌ててカナエが割り込んだ。


「じゅ、獣人の双子は一緒やなかったんか?」

「獣人の双子……? いいえ、私は知らないわね」


 単に婦人が知らないだけなのだが、何を勘違いしたのか、ティナはその場で崩れ落ちた。


「……ロリショタがいない……? 世界の、終わり……」

「だ、大丈夫かしら、その子……?」

「こ、これは少しアレやから気にせんといてください……」


 カナエは絞り出すような声でどうにかフォローする。


「それよりもその少年、今どこにいるか知ってますか?」


 アンリエットはティナを無視することにしたらしい。

 婦人にリオン一行の行方を問う。


「確か、船で王都に渡ったって話だったかしら? ほら、湖の中心、あそこに見える大きな島にあるのよ」


 婦人がさす方向。

 そこには対岸が見えないほど巨大な湖があり、その中に都市一つを丸ごと含有する大きな島が浮かんでいた。



   ◇ ◇ ◇



【従魔王】を取得したことにより、すぐに使えるようになったスキルが幾つかあった。


「ギョギョギャギャ!(にんげん、くっちまえ!)」

「ギョギャ!(うまそうだべ!)」

「ギャッギャギョギッ?(でもなんか、いやなかんじ、するべ?)」


 一つは、たとえ従魔にしなくとも、魔物の感情がある程度、理解できるようになったことだ。


 湖の傍で遭遇した三体のサハギンたち。

 二体からは好戦的な感情が伝わってくる一方で、残る一体からは当惑や不安を読み取ることができた。


「黙れ」

「「「……ッ!?」」」


 さらにリオンが一言命じると、ギャギャと喚いていた三体が一斉に押し黙る。


 これがもう一つのスキルだ。

 従魔以外の魔物であっても、リオンの命令が効くのである。


「黙れ」と言われた目の前のサハギンたちは、どう頑張っても声を発することができなかった。

 力の差を理解したのか、サハギンたちは湖へと逃げようとする。


「逃げるな」

「「「~~ッ!?」」」


 これも効果があった。

 ただしさすがに限定的なもので、大いに動きが鈍くなったものの、サハギンたちはどうにか少しずつ湖へと向かっていく。


「死ね」

「「「ッ!?」」」


 より強い命令を下すと、サハギンたちは地面にひっくり返り、苦しみ出した。

 だがしばらく待ってみても、死ぬまでには至らない。


「なるほど」


 以上から分かる通り、命令が効くと言っても絶対なものではないようだ。

 簡単な命令は効きやすく、逆は効果が薄い。

 その強制力に限界があるのだろう。


 他の魔物にも試してみようと、リオンはゴースト、もといシルヴィアを見やる。


「ちょっ、何のつもりですかっ?」

「天国に返れ」

「嫌です~っ! まだ返りませ~ん! ていうか、魔物扱いしないでくださいよ!」

「まったく効果ないな」


 元人間だからか、あるいは耐性があるのか、まるで効いてなさそうだ。

 強い魔物への効果は薄いのかもしれない。


「ん?」

「ギャギャギョギョ!(どうか、おたすけを!)」

「ギョギョギャンギャ!(なんでも、しますから!)」

「ギギギギャギョギョッ!(なかまに、してください!)」


 時間が経つと命令の効果は切れていくらしい。

 サハギンたちが再び耳障りな声を発し出し、さらには「仲間にしてくれ」と必死にアピールしてくる。


 もちろん醜い半魚人など仲間にするはずもなく、


「アルク、イリス、倒していいぞ」

「「ん!」」

「「「ギギャ~~ァッ!?(そんな~~っ!?)」」」


 双子が躊躇なくサハギンたちを撲殺していった。


「容赦ないのう……」

「サハギンとはいえ、ちょっと可哀想ですね……」


 呆れたように息を吐くメルテラとシルヴィア。

 とはいえ彼女たちもサハギンを連れて歩くのは御免だった。


 その後、王都に戻ろうとした一行。

 だが途中、リオンは嫌な予感がして足を止めた。


「何じゃ?」

「しっ! ……隠れるぞ」


 慌てて近くの木の陰へと身を潜めるリオンたち。

 するとその直後、港へと続く道の方からどこかで見たことのある少女たちが姿を現した。


(何であいつらが……?)


 アンリエット、シルエ、ティナの冒険者パーティである。

 そのままリオンたちに気づかず、通り過ぎていくかと思われたそのとき、突然、ティナが立ち止まった。


「っ! 二人ともストップ!」

「? どうしたのですか、ティナ?」

「何や、いきなり?」

「この感じ……間違いない! 近くにロリショタがいる!」


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