第111話 わらわだけ仲間外れではないか
「久しぶりにステータスを確認してみるか」
リオン
種族:ヒューマン
種族レベル:81
ジョブ
【剣聖】レベル20
【大魔導師】レベル20
【聖者】レベル20
【盗賊王】レベル20
【従魔将】レベル20
力:SSS 耐久:SSS 器用:SSS 敏捷:SSS 魔力:SSS 運:SSS
スーラ
種族:クイーンスライム
種族レベル:16
力:SS 耐久:SSS 器用:SS 敏捷:SS 魔力:SS 運:SS
状態:リオンの従魔
アルク
種族:猫人族
種族レベル:54
力:SS 耐久:SS 器用:SS 敏捷:SSS 魔力:SS 運:SS
状態:リオンの従魔
イリス
種族:猫人族
種族レベル:54
力:SS 耐久:SS 器用:SS 敏捷:SSS 魔力:SS 運:SS
状態:リオンの従魔
悪魔との戦いを経たお陰か、それぞれ大きくレベルアップしている。
さらにリオンは、新たに加わった二人(?)のステータスを鑑定した。
メルテラ
種族:エルフ(ホムンクルス)
種族レベル:―
力:SS 耐久:SS 器用:SS 敏捷:SS 魔力:SSS 運:SS
シルヴィア
種族:ゴースト
種族レベル:―
力:― 耐久:― 器用:SS 敏捷:SS 魔力:SSS 運:SS
状態:リオンの守護霊
どちらも特殊な種族だからか、種族レベルが存在していない。
レベルが上がることはないようだ。
「って、何で守護霊なんだよ? 悪霊の間違いじゃないのか?」
「ちょっ、失礼なこと言わないでくださいよ! 私は良いゴーストですから!」
リオンの物言いにシルヴィアが抗議の声を上げる。
「むぅ……従魔、従魔、従魔に守護霊……わらわだけ仲間外れではないか……」
一方、なぜか不服そうに唸っているのはメルテラだ。
「それより【従魔将】がレベルマックスになってるな。クラスⅢを取得できそうだ」
幸い今リオンたちがいるのは教会の総本山とも言える神殿だった。
クラスⅢのジョブは、〝大祈祷〟スキルを使える神官でなければ取得させることができないのだが、ここであれば何人もいるだろう。
と、思っていたのだが。
「く、クラスⅢジョブですか? その、神殿長しか対応できないのですが……」
「え?」
〝大祈祷〟は、クラスⅡ【大神官】ジョブを高レベルまで上げていけば、取得できるはずなのだが、どうやらたった一人しか使える者がいないらしい。
「その神殿長は忙しくしておりまして、すぐには対応できないかと……」
神殿職員が申し訳なさそうに告げるそのとき、後ろから見知った人物がやってきた。
「何かあったの?」
「ま、マリー様っ!」
聖女マリーだ。
彼女はリオンたちのところまで歩いてくると、職員から事情を聞いた。
「そう、それなら私が神殿長にお願いしてあげるわ」
「いいの?」
「外ならぬあなたのお願いだもの、当然よ」
マリーからしてみればリオンは大恩人なのだ。
それくらいの要望には応えて当たり前だろう。
聖女の一声は神殿長を簡単に動かせるようで、すぐにそれらしき人物がマリーに連れられてきた。
なぜかマリーの他に、モーネとシアも一緒だ。
「私が神殿長のバスティアンであります」
バスティアンと名乗る神殿長は、聖女たちと違い、高齢の男性だった。
恐らく七十は超えているだろう。
頭髪は白く、顔には皺が多く刻まれているが、背筋はしっかりしており、足腰も丈夫そうだ。
「それで、クラスⅢジョブを取得したいというのは……」
「この子よ、神殿長」
「こ、このような子供が……?」
リオンを見て、バスティアンが目を丸くする。
「話は伺っておりましたが、まさかこれほどの子供だとは……」
さすがに神殿のトップだ、悪魔討伐に活躍したリオン一行についての情報は得ていただろう。
だが実際に会ってみたら、思いのほか幼くて驚いたらしい。
「で、では、これより神々に祈りを捧げ、君に新たなジョブを授けましょう。それで、どのジョブを取得したいのですか?」
「【従魔王】だよ」
「「「はあっ!?」」」
三聖女がそろって頓狂な声を上げた。
「ちょ、ちょっと待てっ。君は調教士なのかっ? 剣士でも魔術師でも魔法剣士でもなく……?」
「え? そうだけど。ほら、ちゃんと従魔もいるよね?」
『いるのー』
スーラが触手を出してぴこぴこ振る。
「スライム一匹だけだろうっ?」
(一応、双子もいるけど)
しかし考えてみれば元々従魔士を選んだのは、スーラとコミュニケーションを取れるようにするためだ。
すでにそれは達成されており、クラスⅢまで上げる必要はないかもしれない。
(まぁでも、何かクラスⅢジョブに相応しいスキルを覚えられるかもしれないし、一応取得しておくか。少なくとも従魔たちのステータスは上がるだろうし)
ともかく、リオンはバスティアンの祈りによって、五つ目のクラスⅢジョブである【従魔王】を取得したのだった。
「……まさか……こんなことが……」
リオンに新たなジョブを授けた後。
バスティアンは一人、放心していた。
というのも、大祈祷の際、あの少年の魂に、幾つもの強大な神々の加護が宿っていることを感知してしまったのだ。
加護――すなわちジョブだが、人の身で扱うには負担が大き過ぎる。
ゆえにクラスⅠから段階的に取得していくようになっているし、際限なく取得できるわけではない。
それがジョブポイントという形で制限されているのだ。
しかしあの少年は恐らく、新たに習得した【従魔王】以外にも、四つのクラスⅢジョブを有している。
「信じられない……」
だが神に仕える神官には守秘義務がある。
この事実を誰かに語るわけにはいかない。
少年の秘密を、バスティアンは自分の胸に閉まっておくのだった。





