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第11話 もしかして上位種だったのか

 普通のスライムはもっと弱いはずだった。

 レベルが上がればともかく、スーラはレベル1である。


(もしかして上位種だったのか……?)


 そんな考えも頭に浮かぶが、ステータス上は「スライム」としか書かれていない。


 と、そこでリオンは思い出す。


(そういえば、従魔は調教士の持つ魔力で強化されるって言ったっけ)


【調教士】のジョブを取得する際に教えてもらったのだった。

 ただ、強化率はたかが知れているため、気休め程度だと言っていた。


 しかしリオンの現在の魔力評価はSだ。

 ゆえに大きく強化されたのだろう。


「ぐっ……ま、まいった!」


 ザラガが膝を突いた。


『たおしたのー』


 スーラが意気揚々と戻ってくる。

 よしよし、よくやったぞと、リオンは抱き締めてやった。


「馬鹿な……オレはクラスⅡの【重戦士】だぞ……? それがここまでのダメージを受けるとは……」


【重戦士】というのは高い腕力と耐久力を持ち、主にパーティの盾役として活躍するジョブだった。


「まさか、ベテランのザラガさんが負けるなんて……」

「ザラガさんってCランクだよな? 何なんだ、あのスライムは……?」


(ん? Cランク? えっと……今は前世の頃と冒険者のランク付けの基準が変わっているはずじゃなかったっけ?)


 今のDランクが当時のAに相当するとすれば、今のCランクはSに相当する。


(……Sランクって、もうちょっと強かったはずだけどなー?)


 ワイバーンくらいは瞬殺していた記憶がある。


 どういうことだろうと首を傾げるリオン。

 だがそれ以上に合否の方が気になって、


「それで、試験の結果は?」

「もちろん合格だ。試験官を倒すようなやつを不合格にできるわけがないだろう」


 ザラガは呆れたような顔で言う。


「しかしそのスライムの実力は分かったが、従魔が一体だけというのは心許ないな。すぐにでもパーティを組むことをお勧めしよう」







 試験が終わり、今回の合格者はリオンを含めた五人だけとなった。


 合格証を渡されたリオンは、それを窓口へと持っていく。

 そこには昨日、世話になった受付嬢のシルエがいた。


「すごい! 合格じゃないの!? ザラガ氏は厳しい試験官で有名なのに……っ!」

「そうなの?」

「しかも〝優〟だし!」


 試験の結果は、優、良、可、不可の四段階で判断されるそうだ。

 不可はもちろん不合格で、優や良だと、高いランクからスタートできるのだとか。


「え? 備考欄に試験官が負けたって書いてる……?」

「まぁスーラが頑張ってくれたからね」


 がんばったのー、とリオンの頭の上でスーラがぷるぷる震えた。


「それより一つ聞きたいことがあるんだけど」

「何かしら?」

「今って、SSSってランクはないの?」


 リオンの問いに、シルエは怪訝そうに眉根を寄せると、


「ないわけじゃないけど……現状、その基準に相当する冒険者はいないわ。だって、ベヒモスをソロで倒せる強さっていう、とんでもない基準だもの」

「ベヒモスをソロで?」

「そう。信じられないでしょ」


 むしろリオンは思った。

 そんなに難しい基準じゃないと思うが……と。


 ベヒモスは神話級の魔物とされているが、前世では何度か撃退したことがあった。

 希少な存在で、地域によっては信仰の対象となっているため殺してはいけなかったのである。


 ひとまずこれで、今でもSSSというランク自体は存在していることが分かった。

 つまり「当時とランクシステムが変わった」わけではないらしい。


「じゃあSSランクは?」

「それもいないわ。レッドドラゴンをソロで討伐するなんて、どんな化け物だって話だもの。現状、Sランクが最高ね。それでもソロでキングオークを倒せる実力がないとダメだから、世界に数人しかいないけれど」

「Sランクが世界に数人……?」


 リオンは耳を疑った。


「なんでそんなに少ないの?」

「……何を言ってるのかしら? そりゃ、魔王がいた時代ならSSランクやSSSランクもごろごろいたらしいけれど、当時は今と違って魔物の強さが桁違いだったらしいし」


(ああ、なるほど……)


 リオンはそこでようやく納得がいった。


 魔王が持つ膨大な魔力は、魔物を強化し、狂暴化させていた。

 しかし俺が魔王を倒してから百年。

 世界は平和になり、魔物も弱くなったのだろう。


 そして魔物が弱くなれば、必然的に人間も弱くなる。

 経験値を稼ぐのが難しくなるからだ。


(そういうことかー)


 でも平和なのはいいことだよなと、リオンは暢気に頷くのだった。


 ……そんな世界で自分がどれだけ異端な存在なのか、深く考えることもせずに。






 それから諸々の手続きをして、晴れてリオンは冒険者となった。


「はい、これがギルド証。再発行にはお金がかかっちゃうから、無くさないようにね?」


 ギルド証には〝E〟の字が印字されている。

 下から二番目のランクだ。


「それからこれはその子の従魔タグよ。それを付けてさえいれば、街中で連れ歩いても心配ないわ」


 そう言って、シルエが長方形の金属プレートを手渡してくる。


「……でも、スライムって付けられるかしら? 身体の中に埋め込むとか?」

「これ、体内に入れておける?」

『やってみるのー』


 スーラの体表に金属プレートを押し当てると、ゆっくりと中に沈んでいった。

 体内に異物が入ってる感じで気持ち悪そうだが、本人は気にしてなさそうだ。


 それからスーラは『ここがいちばんおちつくのー』とリオンの頭の上に乗っかってくる。

 ぷにぷにの帽子を被っているような感じで、ちょっと気持ちいい。


「か、かわいい……」


 シルエがリオンを見てそんなことを呟く。


(いや、俺じゃなくてスーラの方か。確かにスーラはかわいいしな)


 それからせっかくなので早速なにか依頼を受けようと、リオンは依頼書が張り付けてある掲示板へと向かった。




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