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第102話 今日のところはこれで勘弁してやろう

「お、おいおいおい、ちょっと待て!? 貴様いま、どうやってボクの魔力を吸収したんだ!?」

「どうやってって、マジックドレインっていう魔力を吸収する魔法だが」

「あり得ないだろう!? 人間ごときが、あの魔力を一瞬で吸収し切るだって!?」


 唾を散らしながら、信じられないとばかりに叫ぶアマイモン。


 マジックドレインはリオンが言う通り魔力を吸収する魔法だが、一度に吸収できる量には限度があった。


 さらに生き物が持つ魔力の保有量にも限界があるため、その限界を超えて吸収してしまうと、肉体が耐え切れずに暴発してしまう恐れがあるのだ。

 口の中に無理やり大量の水を入れ続けると、胃が破裂してしまうようなものである。


 とはいえ、魔力が大幅に増大するクラスⅢジョブを二つ――【大魔導師グランドウィザード】と【聖者セイント】――もマスターしているリオンにとっては、これくらいの魔力を一度に吸収することなど造作でもない。


「くそっ! だがその程度で勝ったと思うなよ! 今のはほんのお遊び――」

「じゃあ次はこっちから行くぞ」

「っ!?」


 リオンは土魔法で足場を作ると、それを蹴って一瞬で少年悪魔との距離を詰めた。

 ゼタに打ち直してもらったアダマンタイト製の剣を振るう。


「ぎゃぁっ!?」


 アマイモンは咄嗟に後ろに下がって躱そうとしたが、間に合わずにリオンの剣がその胸を深々と切り裂いた。


「ば、馬鹿なっ!? こ、このボクが人間ごときに傷を負わされただと……っ!?」


 傷の深さの割にあまり痛みは感じていないらしく、アマイモンは苦しむというより目を剥いて驚いている。


「信じられないっ! ボクの身体はグランドドラゴンの爪でも傷つけられないはずなのにっ! だいたいお前、魔法使いじゃな――ひぃっ!?」


 何やら叫び散らしている相手のことなど意に介さず、リオンは追撃を見舞おうとしたのだが、それはすんでのところで躱されてしまう。


 アマイモンは背中の翼を羽ばたかせ、一気に高度を上げた。


「冗談じゃないっ! あんな人間がいて堪るかっ!」


 リオンも魔法で空を舞うことはできるが、さすがに翼を有する悪魔には及ばない。

 アマイモンはどうにかこちらを引き離したことを確認すると、


「きょ、今日のところはこれで勘弁してやろう! だが覚えているんだな! ボクはどんな手を使ってでも、必ずアレを手に入れてみせる!」


 そう三下のような捨て台詞を残し、姿を消してしまった。

 どうやらリオンには敵わないと見て逃げたらしい。

 高いプライドの割には賢明な判断だった。


「……アレって何のことだ?」


 一方、リオンにはそんな疑問が残った。

 恐らく悪魔たちがこの街を襲う理由がアレとやらなのだろうと推測できるが、それが何かはまったく見当がつかなかった。

 考えても分かるようなものではないので、ひとまず地上へと戻ることに。


「あの悪魔を追い払ったのか……」

「マジかよ……」


 すると当然と言うべきか、騎士たちの驚愕の視線が集まってくる。

 再召喚された悪魔たちは、アマイモンの逃走と一緒にどこかに消えてしまっていた。


(あー、また面倒なことになったな……)


 内心で辟易していると、聖女マリーが物凄い剣幕で駆け寄ってきた。


「ちょっと!」

「あ、聖女のお姉ちゃん。どうしたの?」

「どうしたのじゃないわよっ! あの悪魔は!?」

「なんか帰っちゃった」

「帰っちゃったって……」


 リオンの頓珍漢な返答に呆れたように息を吐く聖女マリー。


「色々と聞きたいことは沢山あるけど……ともかくあなたのお陰で助かったわ。ありがとう」

「んー、僕は大したことしてないけど?」

「誤魔化さなくていいから……。怪我人を治してくれたのもあなたよね?」

「それは僕じゃないよ」


 これに関しては本当だった。

 勝手にリオンに付いてきたゴーストがやったことだ。


「お陰であれだけの戦いだったのに死者はゼロよ。中にはすでに事切れていたはずの騎士もいたのに……」


 どうやらあのゴースト、蘇生魔法まで使えたらしい。


 それなら自分自身を生き返らせればいいと思うかもしれないが、蘇生魔法は魂だけではダメで、肉体が残っていなければいけないのだ。


(あれ? どこいったんだ?)


 しかしそのゴーストの姿がない。


(もしかして成仏したのか? それならそれでいいが、結局あいつは何者だったんだろうな……)


 などと考えていると、突然、先ほど破壊されたはずの神殿区を護る第三結界が復活した。


「結界が……」

「復活した……?」


 しかもリオンが張りなおしたものとほとんど遜色のない強度である。

 龍脈を最大限に活用して張られており、これをやるには相当なスキルが必要であるはずだ。


「上手くいきましたーっ!」


 と、その第三結界の方からゴーストが嬉しそうに飛んできた。


「え? お前がやったの?」

「そうですよ! 何となくできそうだったので、やってみたら本当にできちゃいました!」


 蘇生魔法といい、このゴーストの能力は【聖者セイント】に匹敵している。

 生前は名の知れた人物だったのかもしれないと、リオンは評価を改めるのだった。


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