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第101話 君たちの運命は決まっている

 少年悪魔が投げた魔力の塊が、第三結界に激突する。


 ビキッ……。


 しかし先ほどと違い、僅かに罅が入っただけで結界は耐えていた。


「へぇ、さすがに少しは頑張るか。でも残念、ボクにとっては誤差の範囲だ」


 結界が受け止めていた魔力の塊が、その勢いを増す。

 すると一気に結界に亀裂が走り、


 パリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ!


 ついには粉々に砕け散った。


「ば、馬鹿な……ああも容易く、結界が破られるなんて……」

「終わりだ……」


 騎士たちが絶望してその場にへたり込む姿を見て、少年悪魔は哄笑を上げた。


「あはははははっ! 絶望したかい、人間ども! でも本当の絶望はこれからだよ!」


 少年悪魔が片手を上げると、地上に異変が起こった。

 空間が歪み、そして再び悪魔たちが姿を現した。


「なっ……」

「なんて数だ……っ!」


 しかもこれまでを遥かに凌駕する大群だ。

 下級悪魔ばかりか、上位の悪魔の数も多い。


 結界を完全に破壊された今、彼らの進軍を防ぐ手段はもはやなかった。

 このままでは住民たちが避難している神殿区までもが、悪魔たちの蹂躙を許すことになる。


「なるほど、この辺りの龍脈を使って結界を張っていたのか。だが、それであの程度の強度にしかならないとは……随分と術式が甘かったみたいだな」


 そんな中、結界が消えて周囲の魔力の流れが変わったことで、リオンはこの一帯の地下を巡っている巨大な魔力流――龍脈を感知していた。


「俺ならこれをこうして……よし、こんな感じか」


 ぶつぶつと一人呟くリオンは、その龍脈から膨大な魔力を利用し、大魔法を行使した。


「ランパートバリア」


 ブゥゥゥゥゥン!


「……は?」

「え?」

「な……」


 聖女マリーや騎士たちはもちろんのこと、少年悪魔までもが唖然とした。


 壊されたはずの結界が、一瞬にして新たに張りなおされたのである。

 しかも強度は今までのものとは段違いで――


「あ、あはははは……っ! 同じものを作ったところで何の意味もないよ! ボクがまた一瞬で壊してあげるからさ!」


 やや頬を引き攣らせながらも、少年悪魔が再び魔力の塊をぶつけた。

 だが先ほどと違い、結界を破壊するどころか、傷一つ付かない。


「何だって……? そんな馬鹿な……くっ、お前たち! 総攻撃だ!」


 さらに少年悪魔の命に応じて、新たに召喚された悪魔たちが一斉に結界を攻撃する。

 しかしそれでもビクともしなかった。


「どういうことだよっ! こんな丈夫な結界、人間ごときに作れるはずがっ……」

「喚いてるところ悪いが、お前が悪魔たちの大将だな?」

「っ!?」


 少年悪魔が肩を跳ねさせ、慌てて背後を振り返る。

 そこにいたのはリオンだ。

 風魔法を使うことで少年悪魔と同じように空に浮かんでいる。


「い、いつの間にっ!?」

「たった今だ。もうちょっと周りに注意を払った方がいいと思うぞ」

「っ! うるさいっ! 人間の子供がこのボクに偉そうな口を利くな!」

「そっちも子供だろ」


 と言っても、見た目通りの年齢とはいかないのが悪魔という種族なのだが。


 リオンを見下しながらも、少年悪魔は警戒したように身構えつつ問う。


「あの結界はお前が張りなおしたのか……?」

「そうだ。今度は龍脈の魔力をしっかり活かしながら張ったからな。そう簡単には破壊できないはずだ」

「余計なことを……。しかしまぁ、所詮は死ぬのが伸びただけだ。このボク自ら出張ってきたが最後、君たちの運命は決まっている」

「それはないと思うぞ」

「なにっ?」

「だって、お前では俺に勝てそうにないしな」

「っ……このボクを誰だと思っているんだい?」

「いや知らん」


 上級悪魔すらも従えていることから恐らく著名な悪魔なのだろうと推測はできるが、それ以上のことは知る由もなかった。


「ふ、ふふふっ! ならば、身の程知らずな人間に寛大なこのボクが教えてあげようじゃないか! ボクの名はアマイモン! 魔界のプリンスとして知られる爵位持ち悪魔だ!」

「ふうん」


 高らかに名乗られたが、生憎とリオンにはいまいちピンと来なかった。


 リオンたちが暮らすこの世界とは、異なる位相に存在している世界――魔界。

 そこに棲息している悪魔たちは、そこで何らかの社会を構築しているらしいが、その詳しいことはよく分かっていなかった。


「き、貴様ぁ……何だその興味のなさそうな返事はっ! 魔界のプリンスだぞ! 爵位持ちだぞ! 強くてすごくて偉いんだぞ!」

「語彙力が乏しいせいか、逆に凄さが伝わってこないんだよなぁ……」

「……っ! 人間相手にわざわざ名乗ったボクが間違いだったようだなっ! もういい! とっとと死ね!」


 少年悪魔は激怒して叫びながら、両手に魔力の塊を作り出す。

 魔法へと転じる前の純粋な魔力は、それだけでは殺傷力が乏しいのだが、膨大な量を集束させたとなれば話は別だ。


 当然、魔力効率は悪くなるものの、多少のロスなど気にしないぐらい自身の魔力量に自信を持っているのだろう。


 少年悪魔――アマイモンは、二つの魔力の塊をリオン目がけて投擲してきた。


「マジックドレイン」


 リオンはその魔力をそのままいただくことにした。

 魔力の塊がリオンに吸収され、消失する。


「……は? ボクの魔力を……吸収した、だと……?」


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