お化け屋敷で働いてる首が回る人形なんだが最近やって来た新人が人気をかっさらってってすごいムカつくから決闘する
目の前に突然現れたのは古びた人形。しかも首がくるくる回るタイプのやつだ。
「ぎゃあああああああ!!」
カップルは驚いて走り去っていった。それを嬉しそうな表情で眺めながらその人形はこうつぶやいた。
「はー、首を回すだけでびっくりするなんて人間も情けねえなあ」
「いやあ、貫禄ありますからね。長いことこのお化け屋敷で脅かしてることありますよ-」
近くにいたミイラの人形がそう声をかけた。時々、めくれている包帯を巻きなおしては、細長い配置である箱の中に窮屈そうに入った。
「いやあ、長いことやってるけど、ほんと首回すだけでいいんだから楽でい...うっぷ」
首をくるくる回しながら余裕そうにそう語ると急に様子が変わった。
「首回して気分悪くなるのまだ治ってないんですか」
「うるさい、しょうがないだろ」
この首の回る人形は、このおばけ屋敷で一番の怖いとされる人形として知られていた。
その不気味な見た目と首が回ると言うおぞましい姿は、あっと言う間に有名になった。この人形目当てで来るやつだっている。
「ははは、もっと、もっと怖がらせたいなあ」
「今日も絶好調ですね」
「ああ、今日ももっと脅かしてやろうほら、次の奴が来たぞ」
天下といってもいいほど自分目当てで来る客が多く、それはとても満足だった。
だが、あの日が来るまでは...
だが、それはあまりにも突然だった。天下はすぐに終わってしまった。
スタッフが持ってきた新しい人形が人気を脅かす存在となったのだ。
それは首吊りの人形で、上から大きな音を立てて降って来ると言うもの。
黒い髪に覆われ顔は見えないがそのボロボロの服は白のワンピースをきている。ボロさやシミなどが付いていて怖さを引き立てる。
あろうことか、そいつはその恐ろしさに自分以上に人気が出てしまったのだ。
「おいお前、そう新人のお前だよ」
ある日首が回る人形が話しかけてみた。嫉妬と、人気を取られた憎しみのようなものがこもった声。
「はい、なんでしょうか?先輩」
「お前、ちょっと人間から人気が出て調子に乗ってるらしいな」
「いや、そんなことないっすよ」
現代人のような喋り方に少し動揺したが、負けじとこんなことを聞いてみる。
「いまやお前が、人気トップらしいな」
「え?そうなんですか?困ったなあ〜そんなつもりじゃ...」
白々しくそんなことを口にする。少しムッとなったが、先輩として大人の対応という奴を取らなければ。
「まあ後輩がトップっていうのも花が高いな」
「ありがとうございます」
「そこで一つ、勝負しないか?こう見えてもお前が来るまでは自分目当てで来ていたんだ」
「いいんですか?」
勝負という名目で先輩の威厳という奴を見せてやろう。さて、どのぐらい圧勝できるか。100戦して99勝1敗ぐらいか。
「ルールは簡単。客をどれだけ怖がらせられるかだ。判定はミイラ男くんがやってくれる」
「お任せください」
こうして、一進一退の戦いは始まった。後輩もなかなかのツワモノで、なかなか後を引かない。
こうして100勝が終わり、50勝50敗というとてもいい勝負となった。
「やるな、さすがライバルだ」
「いえ、先輩こそ」
やっているうちに「ライバル」と言い合えるほどいつの間にか仲良くなっていた。
「明日、最終決戦を行ういいな?」
ハァハァと息を切らせながらそう問いかける。後輩の方もハァハァと息を切らせ「わかりました」とだけ言った。
「よし、また明日な、ライバルよ」
「負けませんよ!!」
握手をし、持ち場に戻る。明日は最終決戦。決して負けられない戦いだ。
「あら、こんなところに古いのが。もう捨ててもいいわね」
掃除のおばちゃんが通りかかり、後輩を拾いあげる。このおばちゃん、新人なもので後輩がここを支えて来た人形だとは全く知らない。
「ゴミ箱に捨てましょうかね」
持って行きゴミ箱に捨てた。それを見届け、こう叫んだ。
「ああああああ!!我がライバルがぁぁぁぁ!!」