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眠り姫と第三王子  作者: 山下ひよ
11/15

リリィの葛藤

今回はかなり短めです。

 


 部屋を出たリリィは、廊下の端まで歩き、握り締めた髪飾りを改めてじっと見つめた。

 どうしてこんなものをくれるんだろう。自分は、あんなに嫌な態度を取ったのに。

 自分の目の色と同じ石を選んでくれた。細工も地味で確かに安物なのだろうが、ギリアンは、リリィがこれをもらってどれだけ嬉しいかなど、きっとわからないのだろう。なぜなら彼にとっては、城に戻れさえすれば、結婚相手は自分でなくてもいいのだ。

 

 引き起こされた呪いにより、この世界で体は眠りにつき、魂は他の世界で生を受けた。

 宮田ゆりとして生き、健やかに成長し、たくさんの人に出会って幸せに暮らしていた。

 リリィ・ベル・グレイスだったことなどすっかり忘れて。

 あの世界での運命の相手は、京介だった。

 彼と結ばれれば、リリィとしての記憶はないまま、あの世界で一生を過ごすことになったのだろう。

 だが、そうなる前にこちらの世界で百年が経ち、時間切れとなった。

 宮田ゆりは運命の相手と結ばれず、呪いから開放されないままに、リリィに戻ってしまった。


 そして、何故か京介と同じ顔をしたギリアン・ランドールにより、目を覚ますことになった。

 彼が、リリィの運命の王子。

 だけど彼はきっと、自分を好きにはならない。

 ギリアンが知りもしない京介のことで彼を責めて、ひどい態度を取った。

 こんな性格が悪くて愛想のない女に優しくするほど、彼は寛容ではない。

 嫌われるのが怖い。だったら初めから、嫌われるようなことをしていればいい。そうすれば、嫌われても「やっぱり」だから、傷つかなくて済む。


 なのに、どうして彼は、こんなものをくれるんだろう。



「何て顔をしているの、リリィ・ベル」


 突然かけられた声に、リリィはびくりと体を震わせる。この、声は。

 振り向くと、数歩先に女が立っていた。前に鏡越しで見た、大嫌いな女。


「王妃…!」


 王妃と呼ばれた女は、赤い唇を笑みの形に歪めた。





「遅いな…」


 しばらく部屋で荷物の片付けをしていたギリアンだったが、なかなか戻らないリリィが心配になってきた。

 部屋を出てからの足音からして、廊下にいるであろうことはわかっていたのだが、意地を張って戻りにくくなっているのだろうか。

 そうっと扉を開けて廊下を見る。だが、そこにリリィの姿はなかった。


「リリィ?」


 気付かない内に階下に下りたのだろうか。だが、気を配っていたがそんな気配はなかった。

 ブーツを履き廊下に出てリリィを探そうとしたそのとき、廊下の端に光るものを見つけた。まさか、と思い駆け寄って拾い上げると、それはギリアンが先程渡した髪飾りだった。

 ギリアンは蒼白になる。リリィの身に、何か起こったのだろうか。

 ギリアンは部屋に戻って上着と剣を取ると、宿を飛び出した。



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