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第二話 ネーム

「ようこそTrans Sexual Onlina。通称TSOへ」

言葉に詰まった末に出した、半分無理やりな台詞だがエッジの聞いた言葉が出てきたと思う。

 自信満々にイケメンの方を見ると「は?」という表情を浮かべてこっちを見ている。

 「は?」 

 実際に言われた。ともかくさっきの狼狽した状態からは脱せられたから良しとしよう。

 「……というか、私の性別が男になってる理由わかる?」

 「ええ、まぁ、それなりに……」

 返答が曖昧になってしまうのは、説明があまり得意でないからだ。ここで下手な説明で勘違いや間違いが生まれたら、余計混乱してしまうだろう。と言って、このまま放置というのもよろしくない……。

 「あの……、考え込まれると怖いんだけど……」

 「あ……、ごめんなさい……」

 ここはたとえあいまいでも軽く説明しておくか……。

 意を決して話そうとした瞬間、フレンドからの連絡が来た。

 「あ、電話的なものが来たのでちょっと待ってください」

 「電話って……? 」

 悪いけど一旦スルーさせてもらう。

 『もしもし?今大丈夫か?』

 通信の相手は情報屋インフォメーター。今日はこいつと電話してばっかりだな。

 「問題ないよ」

 『今どこにいる? 』

 どこにいるって言われても適当に歩いてきたからわかるはずもない。

 『あー、じゃあこっちに位置情報を送ってくればそっちに行くから』 

 「いや、やり方わからないんだけど……」 

 『フレンドのところから〈位置情報を送る〉で送ってくれ。じゃあ』

 一方的に電話を切られ、唖然とする。仕方なく言われた通り、位置情報を送っておく。

 これで数分もたたないうちにここに来るだろう。

 「今の電話は?どうしたの……」

 「ひぇ」

 急に話しかけられて小さい悲鳴が出てしまう。頭から抜けていた。

 「えっと、いまから友達がくるそうです」

 「え?私邪魔じゃない? 」

 「いや、この状況をわかりやすく説明してもらえると思うから……。そういうのが好きなやつでして……」 

 「そう。じゃあ、お願いしようかな」

イケメンのセリフを最後に、会話が途切れ沈黙が訪れる。気まずい……。

 こういうときほど時間がゆっくりと流れるもので、そんなに時間がたっているわけでもないのにどうするべきか、考えたこともないよなスピードで思考が動く。

 体感的には三十分ぐらい、実際には二、三分たってようやく電話の主がやってきた。

 「おそくなったなー」

 特徴的な関西弁。実際に関西の人の前で披露したならばどつかれそうな似非関西弁を使いながらこちらに手を振っている。

 なんでそんなしゃべり方をするのか聞いてみたら、「こっちの方が情報屋っぽいでしょ」とのこと。一言でいえばキャラ付けというやつだ。

 キャラ付けと言えばもう一つ、頭から耳が生えている、それも狐の。尻尾も下手をすれば自身の体よりも大きいのがついていて、前からも見ることができる。服は着物であり、妖狐をイメージをしていると思われる。本人の趣味が出ています。

「何してたの? 」

 「うーんとな……、まぁいろいろやな。ところで、そこのあんちゃんなに? 」

 あからさまに話題をそらす。質問に答える気はない様だ。だが、こちらとしては本命の話題はそこのあんちゃんなので問題ない。

 「そこのイケメンは……」

 言葉に詰まる。そういえばこのイケメンとはお互いに名乗りもしていない。どおりで気まずいわけだ。

 「あぁ、私?私はクロb……クロでいいんだよね? 」

 おそらくハンドルネームの名乗りでいいのか疑問に思っているんだろう。もちろんそれでいい、というか本名を名乗ってしまったら問題だ。

 「ウチはリークや。よろしく」

  二人の視線がこっちに集まる。当然だけど今度は自分の番だ。クロはなぜ名乗らないのか、リークはまたかといった感じの顔している。

 アイコンタクトでクロに紹介してもらえるように頼んでみるが拒否された。

 「えっと、ひ、姫です……」

 仕方なく名前をいう。

 「名乗るのが恥ずかしい名前を付けるなよ……」

 リークに詰られるがしたかないだろう。チャットと違い、自分の喉で言葉を紡ぐのは難しい。それが恥ずかしいこととなるとなおさらだ。姫という名前も苗字をもじっており、ゲームの名前にいつも使っているだけ、こんなことならしっかりと考えるんだったと後悔している。

 「まぁ、なれるしかないよ」 

 リークがフォローを入れてくれる。なれたくないと突っ込む前に一つ。

 「キャラ外れてるけどいいのか?」

 「あー、まいいよ。関西弁も疲れるし、これから結構説明しなきゃいけないかもしれないし。というか、そっちこそ普段のゲームのキャラと違うじゃん」 

 「……そうだけども」

 「あのー」 

 クロが遠慮しがちに間に入ってくる。

 「ああ、ごめん。長くなると思うからどっかお店に入ろうか。えっと……」

 「あそこに新しいのができてるから入ろう」

 多少食い気味にリークの意見に賛成する。クロには、えぇみたいな反応をされてしまったがしょうがない。指定した店に入れただけで満足だ。

 

 

 


       

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