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前座 

学校が終わると同時に全速力で駐輪所にむかい、自転車に乗って全速力で家まで帰る。少しの時間も惜しい。どうせベットに横たわるんだから、その前にシャワーを浴びなくてはならない。だから、垂れてくる汗も無視だ。

 幸い信号にも引っかからず、最速記録を更新する形で家に着く。ただいまとすばやく言い、風呂場へとむかう。かいてきた汗と熱を帯びた体を冷たいシャワーでながす。

 ぱぱっと部屋着になり、自室へと駆ける。そうしてVRMMOにログインするための機会を作動させ、胸を高鳴らせる。ゲームへと意識が落ちていく。感覚を取り戻し、最初に目に入ったのは……メンテ延長のお知らせだった。


 「いやいや、ひどくない?こっちの流した血と汗はどうなるんだよ」

 「いやお前の確認不足だろう。メール届いてたし……」

 急いでスマホを確認してみると確かにメンテナンスの延長を詫びるメールが届いている。

 「それに血はながしてないよな?その言い方だとケガしたことになるんだが」

 何気なく自分のことを心配してくれる電話の相手に内心感謝しつつ、その感情は声に出さないで話を続ける。

 「言葉の綾ってやつだよ。ケガはしてない。ってかお前外にいるの?後ろうるさいんだけど」

 「いやあのね、お前の急ぎ方がおかしいんだからね。まだ帰宅途中だよ」

 電話のむこうから「はぁ~」と深く長いため息が聞こえた。

 「というか、そんなに急ぐ理由がわからないんだけど……。今回のメンテナンスってただのサーバー強化だから、なにか新しいことが始まるわけでもないし……」

 「え?しらないの?新しいエリアが広がるって話あるだろ?新しいエリアを早く見たくてさ」

 「それデマだよ……」

 「うぇ? 」

 「そ れ デ マ だ よ 」

 丁寧に一文字ずつ区切ってくれる、がしかしこちらとしては現実を受け入れられない。

 こちらはこの情報に踊らされ汗と血と涙を流したんだ。その見返りがサーバー強化だけとは何の冗談だ。

 「冗談じゃないし、涙追加されているし。むしろ涙するのはこれからでしょうに」

 友人の冷たい返しも耳には入らない。

 「イヤ、デモほら、サーバーメンテナンスにしては時間かかりすぎでしょう。いったい何のためのメンテ延長なのさ。教えてほら情報屋インフォメーターさん」

 「いろいろ言いたいが情報屋インフォメーターはやめてくれ。ダサい」

 「ちょっとまて、それ自信作なんだけど」

 「時折、発揮されるお前のセンスのなさには驚かされるよ……」

 「いや、こっちの問題じゃなくて、そっちの問題じゃないのか?そんなことを言われたのは初めてなんだけど」

 「ちなみにそれはどこでのお話し? 」

 「ゲーム内でだけど……」

 「そりゃ、だれも文句言わないよ」

 「なんで? 」

 「なんでって、お前姫じゃん」

 「姫じゃんと言われても……確かに苗字は姫木だけども」 

 「そうじゃなくて、お前風に言うならプリンセスって感じだな」

 意味が分からない……姫をただ英語にしただけじゃないか。

 「話がそれてるね。話を戻すと今回のアップデートはサーバーメンテナスだけだ」

 「ソースは?」

 「開発者インタビューに新しいエリアの解放条件はステージクリアだけって書いてあった」

 「路線変更した可能性は? 」

 「それを言われると否定できない」

 「まぁ、入ってみればわかるか……。最初から思ってたけど」

 「お前……、何のための会話だったんだ……」 

 「強いて言うなら暇つぶしだ。」

 「強いて言ってもそれかよ……つき合わされたこっちの身にもなってくださいな」

 「悪かったって、でもどうせ何もしてないでしょ?してても関係ないけど」

 「結構お前さんって理不尽よな……」

「そこも魅力ってことで一つお願いします」

 「はいはい、というか今日も一緒にログインする? 」

 「うーん……、じゃあお願いするわ」

 「OK、入れるようになったら連絡する」

 「よろしく」

 「じゃああとで」 

 流れてくる通話終了の音。

 再び電話がかかってくるときに備えて、眠りに落ちることにした。

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