2話 ロジェ=デザルグ(1)
はーい今日も今日とて篠宮凛です。
相変わらず短いです。そんでもってめちゃくちゃな文章です。
気ままに読んでくれると嬉しいです。
デスクワークは苦手だ。ロジェ=デザルグは凝り固まった首をコキコキと鳴らし、ため息をついた。ターニャが解決した事件についての報告書を書かなければならないのだが、どうも上手くいかない。知人に聞いても、報告書にコツも何もあるかと一笑されてしまった。
「なんだロジェ、まだ書いてたのか?」
隣のデスクのトゥールがコーヒーと山のような書類を抱えて現われた。
「そう言うあんたも、それは……始末書か?」
ロジェの問いにトゥールは頭を抱えて
「そうなんだ、またルーシーがお得意のうっかりをやってくれてな。向こうは子どもだから始末書もろくに書けんし、全部俺に回ってきちまう」
「それはそれは。うちの子はその辺しっかりしていてくれて助かるよ」
もちろんターニャの事だ。ターニャは基本的に大人しく、指示にはしっかり従ってくれる。それでいてミスも少なく成績もいい。
「お前らは仲が良すぎるんだよ、ロジェ」
「仲が良いって……僕とターニャがかい?」
トゥールは呆れたようにため息をついて
「他に誰がいるってんだ?まさか彼女がいる訳でもないだろ?」
「今はね。それにしたってそこまでターニャと仲良くやれてる気はしないな。僕は未だに心のどこかで彼女を受け入れられてないんだ。だからどうしても他人行儀になってしまう」
「何だお前、まだそんな事考えてたのか?」
良いかロジェ、トゥールはパソコンを操作する手を止めロジェの方に向き直って語りだした。
「ターニャは人間じゃない、機械だ。いいか?兵器なんだよロジェ。それはうちのルーシーにしたって同じだ。あいつらの事を人間のように扱っていたらいつか痛い目にあうぞ」
「トゥール、それは違うよ。彼女達は人間だ、身体が機械で出来ていて人間離れした身体能力を持っていても、それでも人間なんだよ」
「じゃあ何でお前は悩んでるんだ?」
「それは……」
それは彼女達が人間らしくない感情を、価値観を持っているからだ。
「トゥール、僕にはわからない。どうしてあんな、まるで道具のように扱われているって言うのに悲しまないんだ?」
「そりゃそれが正しい事だって教え込まれてるからさ」
教育、そう呼ばれるのは一種の洗脳のようなものだ。大社に忠誠を誓い、指示されたように動く生きた人形を作る為の教育。
「馬鹿げてる、仮にも彼女達は生きてるんだぞ?」
「あぁ、生きた人形だ」
トゥールはぶっきらぼうにそう言い、笑った。
「まああんまり深く考えるなよ。お前は考え過ぎだ、もっと割り切って考えろ」
「……わかった。ありがとうトゥール」
彼女達は生きた人形。そうだ、彼女達は人間じゃない。
ロジェはそう自分に言い聞かせた。人機達の教育のように、ただただそう信じる事にした。
「ニホンですか?」
ターニャは愛銃のメンテを早々に切り上げ、ロジェの話を聞いていた。
「あぁ、なんでもトーキョーでテロを行うと犯行予告があったらしい」
「トーキョー!知ってます!ニホンで一番大きい都市ですよね」
ターニャは目を輝かせながら自分の知っている日本知識を語ってみせた。
「驚いたな、そんなに詳しいと思わなかった」
「えへへ……1回行ってみたかったんです、ニホン。だからいっぱい勉強しました!日本語だってちょっとは話せるんですよ?」
ターニャのその年相応な態度にロジェはまたしても複雑な心境に陥っていた。
「……なぁターニャ。もし、テロや戦争の無い世界になって自分の自由に生きていいと言われたら、君ならどうする?」
ロジェの突然の問いにターニャは、しばらく考えた後、笑顔で答えた。
「そうなったら、世界中を回ってみたいです。銃もナイフも持たずに、フリフリのドレスを着て色んな町に行ってみたいです」
「そうか……そりゃあ良い夢だ」
ロジェがそう言うとターニャは元気いっぱいに、はいっと答えた。
「それじゃあ、出発は明日の朝だ。今日は訓練も程々にして休んでおけ。明日から忙しくなるぞ」
「わかりましたロジェさん」
ターニャは訓練に戻ろうと立ち上がり、そこでひとつ質問いいですか、とロジェに聞いた。
「もし、世界が平和になったらロジェさんはどうするんですか?」
ロジェは立ち上がり、笑いながら言った。
「僕は、僕はきっと自殺するよ。もう誰かを傷つけなくていいんだ、ってね」
ターニャはそう言うロジェを見て、まるで死にかけの病人のようだと感じた。
如何だったでしょうか?第二話。補足ですが、大社というのはロジェやターニャが所属する秘密組織の事です。テロリストや国際的犯罪者を粛正する連中です、おー怖。
ではでは、また次回、読んでくれると嬉しいです。