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パレットはもういらない  作者: 真咲 透子
『続きは生徒会で!』クリス編
15/30

15.  もうひとつの再会

 波乱に満ちた収録が終了した1か月後のことだった。前作『恋のメロディーを聴かせて』はおおむね好評で、ほっとしたのもつかの間。プロデューサーからのちょっとした仕事や強化特訓など慌ただしい生活を送っていた。


「おはようございます、プロデューサー!!」


 今日は学校が終わったら事務所に来るように言われていたので、ローラントプロデューサーの元へ顔出しに来た。


「サラ、よく来たな」

「……はい」


 プロデューサーはなぜか満面の笑みで迎えてくれた。なんで。怖い。


「お前にオファーが来ている。ほらよ」

「はぁ。え、まさかまた」

「安心しろ。今度はお前がヒロイン役とか愉快なことにはなっていないから」


 プロデューサーに差し出されたキャスト表に目を通す。本当だ、ヒロインじゃなかった。……てか何気にプロデューサー、今バカにしたよね?


「私がメインヒーロー役ですか」

「そうだ。『続きは生徒会で!』は漫画だったな。お前、読んだことあるか?」

「読んだことはないけれど、友達が騒いでた記憶があります」

「なら読んでおけ」

「はい」


 『続きは生徒会で!』は少女マンガだ。がっつり恋愛系だけど、この前みたいにヒロイン役ではないのでいくぶんかは気が楽だ。私はキャスト表で気になったところをプロデューサーに質問した。


「あの、キャストが一人空白なんですけどまだ決まっていないんですか?」

「あぁそれか。……それなぁ」


 プロデューサーがため息をついた。どうしたんだろ。珍しい。


「お前、明後日の放送……いや、いい。丁度今からもう一人のキャストが来るから、お前も挨拶についてこい」

「はい」


 「全く上は何を考えているのか」などぶつぶつ言っている。こんな浮かない顔のプロデューサーを見たのは初めてだ。何が起こっているんだ?そんなに問題のある人なのか。


「お前、アイドルとか興味あるか?」

「一ミクロンも興味ありませんけど」

「ならいい」


 今の、何の確認だったんだろう。私はプロデューサーに連れられて部屋を出た。



(そういえば、今日のプロデューサーの格好、いつにも増してぴしゃっとしてるなぁ)


 プロデューサーの背中を見ながらそんなことを思った。もしかして、今から会う人って超VIPだったりする?うわぁ、私普通にのこのこついてきちゃったけど、よかったのかな。

 ローラントプロデューサーは、応接室の前でピタリと止まり、私の方へ振り返った。にっこり、そんな効果音が聞こえるいい笑顔で、


「今日会ったことはくれぐれも内密にな。バラしたら吊るすぞ☆」


 そうおっしゃった。


(こわぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!)


 いやいやいや。なにこれ、この扉の向こうにどんなお方がいらっしゃったらそんな笑顔になるのですか!?ていうか、けっこう最近にこんなことがあったような。いや、気のせいだよね!出会ってから驚きの大連鎖~とかあった気がするけど、そんなこと全然ないよね!!デジャヴちっくだ、なんてほんっっのすこしも思ってないから!!


 プロデューサーの笑顔で内心パニックになる私をよそに、プロデューサーはノックした後あっけなくドアを開けた。


「失礼します」


 私たちが入っていくと、先方はソファから立ち挨拶をした。


「本日は、わざわざお越しいただきありがとうございます」

「いえ。こちらこそお忙しい中お時間をいただきありがとうございます」


 大人同士の会話が進む中、私は部屋の中にいた2人に釘付けだった。


「彼女が『続きは生徒会で!』のルカ・アルバトフ役のサラです」

「はじめまして、サラです」


 声は震えてないだろうか、動揺を見抜かれてはいないだろうか。あの子は特に、鋭い子だったから。


「はじめまして。今回バーレント・メイネス役を務めるクリス=カスタルとそのマネージャーをしているアレックス=マクネアです」


 笑顔でそうおっしゃったのは、かつて上官だったもう一人の少佐。そして後ろにいたのは、いつも軽口ばっかり叩いて、意外と打たれ弱くて。置いて逝くには一番の気がかりで、自慢の部下の彼だった。

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