9話 東の街アズール
やっと砦のなかに入った……!!またちらほら設定のお話はでてきます。
よろしくお願いします。
門の前までたどり着くと、改めてその大きさに圧倒される。これは鉄なのだろうか、所々錆びらしきものがみえるがそれがさらに威圧感を増しているように思える。
「この門は一度も開かれたことはないんだ。今はいないがいつ魔物が現れるかわからないしな。だから
これで行き来をするんだよ」
リンはそういい、右手の親指につけた指輪を見せる。
「指輪……?鍵かなんかなのか?」
「まぁ、そんなものかな。門塔の見張りもすでにこちらにきづいているだろうからな、さっさといってしまおう。私に触れておいてくれ。なに、一瞬だよ」
センリ達はそう言われ、各々リンの肩や腕などを掴む。
「いいな?全員つかんだか?いくぞ」
その言葉とともに風景が暗転。浮遊感が襲ってくるが一瞬のことで既に地に足をつけていた。
「ようこそ、東の街アズールへ」
「ッ……、今のは、転移魔法かい」
転移魔法はグラウンドリムでは定番だったので皆知っていたが、意表をつかれアイラしか反応できなかった。
目の前に広がるのは多くの人と綺麗な町並み、門の前にはかなり広い広場が広がっている。行き交う人々はみな一様に武装していて、広場に整列をしている多くの兵もいて、ものものしい雰囲気となっている。
「お、アイラは知っていたか。そうだ、これがエルフの魔法技術をふんだんに使った転移システムだ。防衛にも使われていてな、多くの兵をいっぺんに……ん、来たか」
と、突っ立っているセンリ一行のもとに整列した兵達の方から完全武装の壮年の男が走ってやってくる。白髪まじりの短髪に年を感じさせない鋭い眼と頬にはしった大きい傷が猛者の雰囲気をより増している。
「イっ、イルネスタ隊長!!!よくぞご無事でっ……あんな無茶をしてっどれだけ我々が心配したかっ……いくら非常時とはいえ魔物の群れに単騎で行くなんて考えられません……」
「あっはっはっは!エドガー!生きていたか!!まぁお前達を失う訳にはいかないからな。なんにせよ、助かったからいいじゃないか」
「隊長……貴女のお蔭で我々、第一討伐部隊は1人も犠牲者はいません。しかし、貴女もこの国にはなくてはなならない存在なのですぞ、努々お忘れなく。それで、後ろの方々は…………?」
自分よりふたまわりほど大きいエドガーにまじまじと見られ、センリは少し怯むが負けじと目をみかえす。
「こいつはリーダーのセンリ、後ろの赤髪の美女はアイラ、その隣の黒髪がリンだ。センリ、こいつはエドガー。第一討伐部隊の副隊長兼、第二討伐部隊の隊長だ」
「はじめまして、エドガー・ブラインと申します。隊長、それではこの方達が……?」
「あぁ、私はこいつらに命を救われたんだ。聞いて驚くなよ?あの魔物の群れをたった3人で殲滅したんだ、ボロボロの私を守りながらな」
イルの言葉で構えていたエドガーは目を大きく見開き口を開け、驚きのあまり言葉をなくしたようだ。
「あっはっはっはっ!!まぁ、無理もない、私も自分の目で見ていなかったらとても信じられないさ。だが、事実だ。そこに待機させてる部隊と死骸を見てくるがいい、原因究明ついでにな」
「…………ッ!はっ!!今すぐにでも行って参ります!!」
すかさずエドガーは部隊に指示をだし、迎撃、討伐任務を確認兼調査への変更準備を進める。数百名ほどだろうか、隊の中で班をつくって動いているのがわかる。統率力、練度も見事なもので瞬く間に準備が終わる。
「エドガー!少しいいか!」
「はっ、何用でしょうか」
「司令はどこにいる?」
「本部の執務室にて執務中だと思われますが……」
「ほう、司令なら討って出ると思ったが、存外冷静だな」
「なにをおっしゃいますか……静かにペンを置きタワーシールドと大槍を持つ司令を誰が留めたと思っておいでなのか……」
「…………そうか、ご苦労だったな……」
今も目に浮かぶと苦々しい顔をしながら訴えるエドガーに眉間を揉むイル。
「では私達は司令に報告をしてくる。あとは委細頼んだぞエドガー」
「はっ!!第一討伐部隊出発だ!!!」
エドガーはすぐに振り向き兵達の方へ出発の号令をかける。すると、すれ違う兵達が口々とイルに声をかける。
「隊長!!帰ってくると生きてると思ってましたよ!!!」
「ちっ……ちょっと早ければかっこよく助けて隊長の好感度アップ狙えたのによ」
「うおー!!イルネスタ嬢!!結婚してください!!!」
「はっはっはっはっ!!お前達、くっちゃべってるとエドガーにどやされるぞ?気張って行ってこい!」
さっきまで屈強で精悍な顔つきの兵達が一変、ワイワイガヤガヤし始め張りつめた空気が緩むがそれも門の手前になると一瞬で戦士の顔になる。
「さて、それじゃあ司令の所へいこうか」
「え、オレらも行くの?」
「当然だろう!!護衛の報酬もあるしな。観光したいのならあとで連れて行ってやるから……」
久しぶりに文化的な人々の営みを見たセンリは観光をしたくてうずうずしていたのだが、そんなに顔に出ていたのかイルに若干呆れられる。
露天、宿屋、武器屋、防具店が立ち並ぶ大通りを進むと、真ん中に鐘のついた塔がある広場でる。そこをまた真っすぐ進んでいくといかにも高級そうな大きい屋敷が立ち並ぶ通りが見える。
「ところで、うちの兵達はどうだった?」
「さすが、というべきですね……第一と冠するには練度が一番高いのでしょう?」
「ああ、東部には第一~第六まで討伐隊があってな。総勢三万ほどだが精鋭中の精鋭は第一、第二の三千人だな。」
「そんなにいるのかい?この砦があるんだったら必要ないように思えるけどねぇ」
「ああ、今回のは別枠だろうが年に1、2回魔物が大量に発生していてな。今は静かなもんだが時期が来るとあの丘陵地は魔物だらけになるぞ。あれの倍以上はくだらんな」
魔物は繁殖期があるが、その繁殖能力が異常なのだ。ばんばん繁殖し、食べるものがなくなると食料を求め砦の先に行こうとする。それがこの世界に住む種族を苦しめていて、この国では砦を築くことにより滅亡の危機を回避したようだが、今もなお繁殖期の襲撃は続いているようだ。
「うーん、根源はわかっていないの?」
そんな困ってるんだったら原因を見つけて根源を断てばいいとセンリは思ったが、なにしろ今までは絶滅の危機だったのだ。ここ最近地力も上がり、余裕ができているが昔は自分の身を守るのに精いっぱいだったのだろう。
「魔物自体の繁殖能力もあるがな、討伐隊が度々異常個体の存在を確認しているのだ。しかも、記録がある限りだと300年前からな」
「はぁ!?300年もいきてんのかよそいつは。」
「その場に出くわした兵士の記録によると空の魔香器が一瞬で溜まった、とあってな。その魔物はより多くの魔素を吸収して生きているということだろう。問題はどこにそんな魔素があるか、だ」
「なるほど、今まではそれを調査する余裕がなかったのですね。」
「ああ、それで今は調査する為の人員が三千人いるということかい」
「正解、そのとおりだ。さて、ついたぞ。ここがラドムア国総軍東部防衛軍本部だ。」
そう言って振り向くイルの後ろには煉瓦作りの大きな屋敷がある。いかにも古そうな建物に見えるが不思議と脆さは全く感じられず、むしろ堅牢なイメージが残る。そして意外なのは、兵士ではない武装している者が頻繁に出入りしている事だ。恐らくハンターなのだろうとあたりをつけるが、なぜ軍本部にいるのかがわからない。うんうん唸っているとイルが
「まぁまぁ、司令に会ったら全部わかるさ。さぁ入ろう」
というので、促されるまま一緒に入る。大きめの鉄の扉を開けると目の前すぐに大きいカウンターがあり中にはおっとり系巨乳美人女性が仕事をしている。右には階段、左は大きな酒場がある。酒場にはちらほらと客がいるが軍服姿の者と一般人が楽しく酒を飲み交わしているのをみて驚くセンリ達。
「はは、軍本部に酒場があって驚いたか?実は東部のハンターギルドと軍部は同じところにあるのさ。結局同じことをやるんだ、どうだ合理的だろう?ハンターと軍人との交流の為、っていうのは建前でなんもない時くらいは酒を飲みたいだけだ。」
「まじかよ……いくらなんでも合理的すぎ……いや、テキトーすぎんだろ……」
といってふふんと胸を張り、笑うイルを尻目に軽くひいてるセンリであったが、そうしている間にイルはカウンターまで行き受付嬢に声をかける。
「おーい、イルネスタ・エスティードだがしれうぐむぅ!!!」
「イルぅぅぅぅぅうう!!あんた無事だったのね!!!!!どんだけ心配したと思ってんのよぉぉぉお!!!ばかああああああああうわあぁぁぁぁんよかったよぉぉおお」
「ぶはぁ!!エっ、エスカ姉さん……司令に報告しにきたんだが……その、迷惑かけた。ごめんなさい……」
話しかけたおっとり系巨乳美人の受付嬢がイルの知り合いだったようで、イルがエスカのたわわな胸にむぎゅうっと、うずめられている間イルの帰還に怒ったり、驚いたり、泣いたり忙しい人だなぁと思ったが字面も眼福なのでいいぞもっとやれ。
「ひっぐ…うん、いいの、イルが無事ならいいの…ぐずっ…しれいなら執務室よ、早く行ってあげて。きっとたっぷり叱られるわよあなた」
「はぁぁぁ…、そうだろうなぁ。あ、後ろのやつらはまた後で紹介するよ」
「あら、そうなの。わかった、楽しみにしてるわね」
ばつの悪そうな顔をして戻ってきたイルにアイラが言う。
「くふふ、イルは相当な人気者だねぇ。ほら、酒場の奴らもざわついてるよ」
「うおおおおおおおおお!!!第一討伐部隊隊長にカンパーイ!!!」
「イルネスタ、われらの戦乙女にカンパーイ!!!わああああ!!」
いつのまにかほぼ満席になっている酒場に市民、ハンター、軍人入り乱れての大宴会になっている。
今度はイルが唖然として、止まってしまう。
「わぁ、混ざっていいですか?すっごい楽しそうです!!われらの戦乙女にかんぱーい!!」
「お、オレもやるやる!!われらの戦姫にかんぱーい!!」
センリとリンの音頭にうおおおおおおお!!!!わああああああ!!とやかましく応える飲んだくれども。
「やっやめてくれぇぇぇぇえええ……なんかすごくっ恥ずかしいぃ特にその戦乙女と戦姫がなぁ!!!!」
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「はぁっはぁっ……ふぅーっ……やっとここまできたぞ。おまえら、ここが東部防衛司令官の執務室だ。心してかかれよ」
あの場から渋る三人をひっぱり3階にある執務室の扉までやってくるイルは、荒くなった息を整え準備をする。そんなびびるか?と思いつつ一応心持を変えておくセンリたち。
コンコン
「イルネスタです」
「入れ」
扉を開けた瞬間に殺気のような気配がぶわあっとセンリ達を包む。
センリ達は一瞬武器を出そうとしてしまったが思いとどまる。目の前のイルは青い顔をして冷や汗がだらだら流れていたからだ。あと、敵意が全くしなかったのもあるが。
「ほう、後ろの君達がイルネスタを助けたのか。どうやらなかなかの猛者だな。はじめまして、私がラドムア国総軍東部防衛軍司令クレール・エスティードだ。」
金髪の長い髪を後ろで一つにまとめ、少しでているほうれい線、整った精悍な顔つきに、ギラギラと光る青い瞳はニコニコしながら凄まじい気迫を出しているのも相まって、結構な眼光だ。クレールが座る座り心地のよさそうな椅子のうしろにはどでかいタワーシールドにポールランスがたてかけられていて、マジックアイテムだろうか、どうみても普通じゃない何かを感じる。と、一通り観察しおえた後で気づく。
(装備を見るにこの人はパラディンか……さすがに強そうだ。クレール・エスティード……ん?エスティード!!)
「……ッ!!御兄弟ですか……?」
「はははっ、イルネスタは言ってなかったのか。そうだ、イルネスタの兄でもあるな。」
「あと……エスカ姉さんの夫だ……」
「あー……そういうことでしたか……」
「そういうことだ。さて、イル。私は怒っている。なぜだかわかるか?」
「はい…………自分の……命を、なげうった……からです……」
「そうだ。私はパラディンとは何があっても弱きを守るものと言ったが、それは最後の選択肢だ。状況を聞く限りまだまだやれることはあった。違うか?」
「その……通り、です……」
「簡単に命を諦めるな。誇りをかけるべき時を見誤るな。そしてもっと部下達を信じてやれ。」
「はい……肝に銘じておきます」
「上司として言う事は以上だ。あとは……」
気迫が一瞬で消えたと思ったらクレールはおもむろに立ち上がり、イルに近づいて行った。すると、思いっきりだきしめたのだ。
「兄として思う。よく無事に帰ってきてくれた……!!そして部下を助ける為に危険を顧みず囮になったお前を誇りに思う……!!」
「兄さま……」
最初の時とは逆で今度はこっちが完全においてけぼり状態であったが、こっちは心温まるいい光景であった。よかったねぇ……と人事のように見ているとクレールがこっちを向き盛大に頭を下げてきた。
「危険を顧みず妹を救ってくれた君達にはなんと礼をしたらいいかわからない……とりあえず、感謝をさせてくれないか。ありがとう」
「「「いやいやいやいやいや!!!!!!頭を上げてください!!!!頼みますから!!!!!」」」
人事ではなかった。
頭をあげてくださいと感謝してます、ありがとう合戦が落ち着き、是非、家に来てくれとご招待してもらったので、お言葉に甘えることにする。
「今日は疲れているだろう、報告は明日にでもして屋敷で休んでいなさい」
「わかったよ兄さん。じゃあ私が三人を連れていくよ」
「ああ、おもてなしは頼んだぞ」
また後で、とクレールとはその場で別れ、まだ昼過ぎだがエスティード邸へと向かうことになった。
さて、今度はどんな街並みが見れるのかな、とわくわくしているセンリ。
「ついたぞ」
「えぇー……本部の隣かよ!!」
歩いて10秒もなかった。
ぐふふ、おっとり巨乳美人……しかも人妻……どうよ(ゲス顔)