7話 女騎士イルネスタ
くっ!!もうむっさくるしいおっさんの予定だったのにぃっ!!体がっ勝手にっ女騎士にしてっ…………よろしくお願いします。
後ろでアイラがパンパンッと発砲しているのを聞きながら、猛スピードで景色が流れる。
徐々に魔物の群れは大きくなっていくが、そろそろあの女騎士ともすれ違う頃だろう。色々と説明している暇もないのでセンリは華麗なスルーをかますことにした。
しかし、近づいてわかったが、左腕のみならず右足も出血しているではないか。
見た限りかなり深く、これじゃあ戦えたものではない。舌打ちをしつつ、急いでアイラに念話をする。
『悪いアイラ!あの人相当なケガしてるみたいだから守ってやって!!!なんとかそっちまで行かすから!!!』
『あいよぉ!!まだ数の少ない今のうちにやっとくれ!!』
『頼む!』
そうと決まれば早速センリは、腹式呼吸と身体強化Ⅹの会わせ技をつかった芯のある声で呼び掛ける。
「そこの騎士ぃぃぃい!!!!!後ろのはまかせてぇぇぇぇえ、赤い髪の女性のとこまでぇぇぇえ!!!!真っ直ぐはしれぇぇぇぇぇえ!!!!」
ビリビリと空気を震わせ、大声を出すセンリ。これで、女騎士はもちろん、後ろの魔物達もこちらに気づいたであろう。それを見越してセンリはやったのだが、はたして、ほぼすべての魔物の殺気を感じるではないか。
(まずは成功っと………)
そして女騎士とすれ違うと、目をぎゅっとつむりとても悔しそうで申し訳なさそうにしていたのがありありと伝わった。案外いい人かもしれないなと思いながら、その場で止まる。
魔物達はちょうど矢じりのような形になっており、あまり広がってないので、この場で留めやすいだろう。さすがに、全てを留めるのは人数的にも無理臭いのでセンリは考えた。
「今からオレらの遠距離攻撃でなるべく数をへらそう。50メートルくらい近づいたらオレが突っ込んで掻き回して来るから、リンはこぼれたのを中心にやってくれ。あ、後退する時はお互い念話な」
「了解ですが………それではセンリさんが危険では………」
「大丈夫だってぇ、危なかったら下がるからさ。それに………こんなのも出来ないで、その、二人を貰うなんて言えないよ」
「っ………!はぁ~またポイントアップですよセンリさん。全く、どれだけ好感度あげるんですか………」
「ははっ!ほら、そろそろ射程距離だぞ!」
(実際は怖くてマジ漏れそう。あっ腹いてぇ。あっ)
別の戦いが勃発しているのはさておき…………、射程距離といってもまだ300メートルは有り、普通の10倍以上あるのだが、二人は余裕で圏内だ。
リンは投げナイフを両手に1本ずつ持ち時にはトマホークも使い、投げては持ち、投げては持ちを繰り返していく。心臓をひとつき、脳天をひとつき、足に当てて転がして後続の魔物に踏ませるなど、確実に1本につき1匹殺しているのが普通じゃないポイントである。
センリは主にSIGP226を使いながら、魔力によるリロード中(数秒)にトマホーク、投げナイフというローテーションだった。こちらもリンに負けず劣らずの活躍ぶりだ。みるみるうちに魔物は減っていくが、やはりまだまだいる。
残り50メートルのあたりでセンリは両手のSIGを撃ちながら群れに穴を開ける。穴が埋まる前に駆け込みSIGを投げ捨て、トマホークを持ち切りかかりに行く。
3メートルはあろう熊2匹が左右から来るが、持っていたトマホークを一閃。一瞬のうちに熊の頭には深々とトマホークが刺さり、ドゥという大きな音を立てて倒れ混む。
そして死角を捉えたと思ったであろう、1メートルほどのうさぎが鋭い前歯を出し、後ろの首もと目掛けて飛びかかる。
しかし、センリはスキルによって戻ってきたSIGを素早く後ろに向け発砲。うさぎは前歯と顔半分を失い吹き飛ぶ。
この流れでどんどん殲滅していくが、しばらく魔物を殺していると溜まりに溜まった死骸につまずいてしまう。
「おっと………危ないな………ッ?!」
つまずいたと思ったが、見てみると顔を半分失ったでけぇ熊が渾身の力で足首を掴んでいたのだ!さすがのセンリも驚いて一瞬硬直してしまった。
すると、今までされるがままだった魔物達が今が好機!と片っ端から襲いかかってきた。
「くっ!!黙ってやられるかぁああ!!!うおおおお!!!」
一瞬の内に数は減らしたがまだ3匹残っている、だめだ、間に合わない、と思い来るであろう痛みに歯をくいしばると、
ヒュヒュヒュン………ドッ!ドッ!ドッ!
『ほれ!!さっさと立ってキリキリ働きなぁ!!!』
『アイラ!!!!』
アイラのスキル、後方支援によりセンリの危機を察知し70kgwはある剛弓仕様のロングボウによる超長距離連射によりセンリは助けられた。
(あーもうアイラに抱かれたいかも………かっこよすぎるだろいまの………)
今度は足元にも気を配り、アイラに言われた通りキリキリ働くセンリ。トマホークを投げてからリロードや取り出す手間も惜しく、コンバットナイフも使って総動員である。
その甲斐あってか、10分もしないうちにぼちぼち魔物の数も減ってきており、リンも前に出て残党狩りにシフトしている。
ちらりとリンの方を見ると横に真っ二つ、縦に真っ二つ、首なしの死骸ばかりで、カッコつけないで代わってもらえばよかったなと思ったセンリであった。
そのさらに10分後ーー
先ほど魔物がひしめきあっていた場所にはおびただしい数の魔物の死骸、死骸、死骸。そしてそこに息を荒くして立つ男女であった。
「はぁ………はぁ………なんとか…………なったか…………」
「さすがに………多すぎましたね………」
【レベルが上がりました】
【 CreateWeaponのレベルが上がりました】
「お?レベルが上がったぞ?」
「あ!私も上がりました! EnchantAttributionがⅡになりましたよ!!そういえば全然使ってませんでした………」
「同時にレベルアップか。倒した数絶対違うよなぁ………経験値制じゃないのか?」
そこで満身創痍の女騎士を連れたアイラがやってきた。すれ違ったときの騎馬した女騎士は満身創痍で息も絶え絶えの様子だったが、合流した際にアイラに回復魔法をかけてもらったのか幾分か顔色が良くなっている。
「おお!アイラ!ご苦労様。怪我はない?」
「それはこっちのセリフさね。ずいぶん無茶したみたいじゃないか」
「なんでも、私達をもらうにはこのくらいはできないといけないみたいですよ」
少し諌める口調で言うアイラに、にやにやとうれしそうにそう教えるリン。すると、呆れつつも嬉しそうなアイラは苦笑をもらし、そっとセンリの頬に触れる。
「まったく……あんたが死んじまったら意味ないだろうに。だけど、うれしいよ。」
微笑みあう3人。まさにこれがリア充オーラというものだろうか。何人も立ち入れないサンクチュアリが形成され始めている中、おいてけぼりにされている者が若干1名いた。
「えーと……ちょっと、いいだろうか……」
「あっ……あぁ、すまないね、紹介しよう。こいつらが仲間のセンリとアイラだ」
「やぁ、センリです。災難だったね」
「リンです。ご無事なようでなにより」
アイラに紹介されたのでよそいきの笑顔で簡単に自己紹介をしておく。すると、女騎士はビシッと姿勢をただして胸の前に右手で拳をつくりガンッ!!!と勢いよく叩きつけた。
「ラドムア国防総軍、東部防衛軍第一討伐部隊、隊長、イルネスタ・エスティードであります!この度は、危険を顧みず危ない所を助けて頂き、誠に感謝申し上げます!」
「…………あっ、はい、どうも………」
急なスイッチの切り替えに少しポカーンとしてしまったが、なんとか元日本人らしく社交辞令だけは口に出すセンリ。
「それで………助けて頂いて図々しいのですが………砦まで護衛をしていただけないでしょうか………傷はアイラ殿に治して頂いたのですが、何分失った体力と血は戻らないもので………もちろん報酬はご用意致します!!」
「えっ、あー………どうする?二人とも」
「あーん?そりゃリーダーのお前さんが決めな。」
「そうですね。私達はそれに従いますので」
センリはいつの間にかリーダーになっていたが、本人もまぁまぁその気だったのかあまり抵抗せずに受け入れた。
「うーん、じゃあお受けします。ただ、自分ら今まで魔狼の森で暮らしてたので何分常識知らずなとこがあります。そこらを教えてくれませんかね?」
「魔狼の森…………ッ!?それでこの強さか………納得はできる。それならば、最近魔狼の森で変わったことはなかったでしょうか?」
テキトーにでっち上げた話を掘り下げられたので少し焦ってしまうところだったが、すかさずアイラが助け船を出す。
「あぁ、最近やけに魔物がいなくてね、獲物に困っていたよ。こっちに来たのも半分はそれが理由さね」
『アイラさすが!!』
『ちゃんと相手の話もきいときなよ?』
そう、イルネスタはセンリ達が魔狼の森に住んでいたと言ったら驚き、そしてセンリ達の強さに納得をしていたのだ。というと、魔狼の森は本来、なかなかの魔物がはびこる森だ、ということになる。
「やはり………いや、おとといにも魔狼の森方面から一挙に魔物が押し寄せてきて、東部防衛軍総出で迎撃に当たったのですが………魔物達の様子がおかしくて。そして今回もです。魔狼の森の調査に向かっていると魔物の群れが………。まるで何かから必死に逃げているような………魔狼の森でとてつもないモノでも現れたのでしょうか………」
「はぁ~、そりゃ大変でし………た………ね……」
そりゃ踏んだり蹴ったりだなぁとねぎらいの言葉をかけようとしたところ、ふと気付く。魔狼の森?おととい?そして今日…………
すかさず念話。
『ねぇ、アイラ、リン。たぶん、恐らくだよ?魔狼の森に現れた何かって……………………オレらじゃないかな………?』
ひきつった顔で頷く二人。
聞かなかったことにしよう、しょうがないもんはしょうがないと、強引に事実を心の闇に葬りさった。
「ん?何かありましたか?」
「え、あー、いやいや、ほっ、他の部隊の方達はどうしたんですか?!」
「あぁ、屈強なあいつらなら全員助かっているでしょう………いや、いてほしいな………土壇場で私がこの魔香器を使って魔物どもを引き付けたんですが、多少残っていましたし…………」
「魔香器?ってなんですか?」
「あぁ、常識に疎いのでしたね。魔香器は………」
魔香器とは、空気中に存在する魔素を吸収して凝縮、そして放出できるというドワーフとエルフの発明品である。(そこそこするけどがんばれば一般人も買える)
魔物は習性として、人類以外にも凝縮された濃い魔素に反応する事がわかっており、この国の兵士達は隊長レベルに達すると必ず渡され、有事の際には魔香器を使い魔物を誘き寄せ、その隙に逃げることになっている。
「しかし、今回は数が多すぎたので………私が囮になって群れの周りをぐるぐる回ってから誘き寄せたのです」
「なるほど、それで1人だったんですね………えーと、イルネスタさんは」
「ふふっ、イルでいい。あとその敬語もいらないな。私も堅苦しいのは苦手でな。まぁ今私は命の恩人の君たちにかしずかなくてはならないのだけどな」
「あぁー、いいよいいよ。そんなのお互い面倒だし。さて、そろそろ日も暮れてきたんで取り敢えずここから離れて野営の準備しますか。あ、イルはオレらの近くで休んでてくれ。」
「いや、そんなわけにもいk………」
「動いたら飯無しな」
くくぅ~
「う、くっ……、すまない。助かるよ………」
イルの可愛らしい腹の音でひとしきり盛り上がりつつ、野営の準備は進んでいった。
ほんと所属部隊とかめんどくさいですな。最初テキトーに師団とかつけたいなーって思ってたらそういえば下にいっぱいなかったっけ?って思ったら
旅団、連隊、大隊、中隊、小隊、分隊
こんなあったんですね、ビックリ。
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