5話 2度目の決意
うーん。説明会にしようと思ったらこんな感じに。よろしくお願いします。
「さてさて、こいつらに起きてもらうか」
バスッバスッ
「ぎぃッ……」
「ぐッ……」
センリは磔にされている男達の太ももを撃ち抜き、男達の反応を待つ。
「お、お前らいったいなにもんなんだよッ……!!」
「嫌だあぁぁああああぁあ死にたくっ死にたくないよっなんでボクがこんな目にっいいいいぃたいぃぃぃ……」
誰何をするのは筋肉男、泣きわめいているのはひょろ男。筋肉男は比較的冷静だがひょろ男はもう使い物にはならそうな感じだ。そこで、センリは海外のアクション映画で見た悪役の真似をしてみようと考えニヤリとする。
「うーん、ひょろい人は使い物になるかな?オレ達はちょっと聞きたいことがあるんだけど……答えられないよね?」
脅しをかけてもひたすら痛い、なんで、嫌だの三点張りで虚ろな目をしている。リンとアイコンタクトをとり、完全に使い物にならないと判断した。
ババスッバスッバスッ
「これが話にならないってやつだね。わかる?答えられないんだったら、いらないよね。なぁに、聞きたいこと聞いたら解放してあげるから。はい、じゃあお名前は?」
ひょろ男を殺すことにより聞かれる事に答えないと殺されるということを示し、もしかしたら生き残れるかもしれないという希望を持たせる。ただし、殺さないとは言わない。
見よう見まねなのでこのくらいが限界だか、センリはアクションスターになった気分で少しテンションが上がっていた。
「……ゴモリだ。このならず者達の……頭をやってた」
「あぁ、あんたがゴモリさんか。じゃあ隣の人は?」
「こいつは……首都の商人だ。オレらの……協力者ってやつだな。情報と資金援助の代わりに……さらってきた女を抱かせたり盗品の斡旋を……する契約だった」
行きも絶え絶えに答えるゴモリの様子にちょっともたないかなと思い、さっさと気になることを聞いてしまおうとするがなんて聞けばいいのだろう。この世界は~じゃおかしいしなぁと考えるも面倒になったのか、
「なるほどなるほど、じゃあここで歴史と地理の勉強をしようか!」
社会科の勉強になってしまった。
「は……?」
「まぁまぁ!まず世界の名前からいこうか!」
この世界はレリメサス。主な大陸がラドムア、リーンフェリア、ルルー、レンパドール、ローエンと5つあり、地球で言う南極と北極とされ大陸もあるそうだが開拓はされていないらしい。
種族も豊富でラドムアは主に人間、リーンフェリアは主にエルフとドワーフ、ルルーは主に獣人、レンパドールは主に人間、ローエンは全ての大陸の中間にある為、自由貿易国となっていて様々な種族がいる。そして今いるのはラドムア大陸で、大陸の名前がそのまま国、首都の名前となっているようだが……
「この大陸には他の国はないの?村とかは……」
「あんた、面白い事いうな……。ただでさえ魔物どもを押しやるので精一杯なのに、人間同士で争ってなんかいらんねぇだろ……」
「魔物……でかいオオカミとか?」
「……ッ!?ゴホッ!ゴホゴホッ……お前ら魔狼と遭遇したのか!?いやそんなはずは……」
「確かここ、魔狼の森だったよね?なんか関係あんの?」
「魔狼もしらねぇのかよ……お前らどこの国のd……ッ」
ヒュカカッ
すかさずリンとセンリが投げナイフを投げ、ゴモリの両頬に薄い傷がはしる。リンは無表情、センリはニコニコしながら先を促す。
「まぁ、いいじゃん。で、魔狼の森って?あ、ついでに魔物についても説明よろしく」
「わ、わかった……」
太古の昔、突如各国で起こった魔素の大量発生。虫、植物、獣、様々な生き物が大量に魔素を吸収し、強靭な体、高い繁殖力、凶暴性を伴った【魔物】となり各国の住人に襲いかかってきた。
多くの犠牲をだしつつも人々は生き残る為にまとまり、長い時を経て今も魔物を押し返し、討伐するというのを繰り返しているている。
ラドムアも例に漏れず、首都ラドムアを中心として東西南北に砦を築き防衛線を張っている。
騎士などでは手が足りず、魔物を狩るハンターの為の相互扶助機関、ハンターギルドを設立。今や各国に支店があり国から個人までの依頼を斡旋している。
そこで、魔狼が登場。
ギルド設立当初のラドムアの人々は魔狼に苦しめられていた。
他の魔物は多くても4、5匹だが魔狼は特に強い個体を中心として数十から数百匹の群れで襲いかかってくる。賢く統率もとれていて、なかなか殲滅ができず被害は増え焦りが先行するばかり。
そんな中、一つのハンターパーティが名乗りをあげ、人々を集め魔狼狩りを決行した。
結果は痛み分けで魔狼は最東端に追いやられ、人間は8割が死亡。そこでそのハンターパーティは森を利用し結界で魔狼を封じることにした。が、結界が完成した時に魔狼の襲撃に遭い相討ちとなってしまう。
人々は絶えぬ感謝を送り弔いの意も込めて、そのパーティーは英雄達と呼ばれるようになる。魔物と魔狼の森の話でしためでたしめでたし。
「ってゆうのが……ゴホッ……一般的だな」
「なげぇな……ご苦労さん。んー、あとはー……あぁ、これこれ、これなに?」
そう言ってアイラから預かった鉛色のカードを見せる。するとゴモリは苦虫を潰した顔になる。
「あぁ、おめぇ……そりゃステータスカードだよ……おめぇらが殺した奴らのな……ゴホッゴホォッ」
「ふむ、罪人じゃなくてもでるのこれ?」
「あぁ、魔素大量発生直後の種族には全員でるみてぇだ。これも常識なんだがな……」
「へぇ、便利なもんだねぇ……」
「……ところでよぉ、もう生かす気はねぇんだろ……?ひと思いにやってくれねぇか……ゴフッ……もう目が見えねぇ」
「あー、悪かったね。せめてお礼として苦しまずにやらしてもらうよ。」
と、SIGを構え引き金を引こうとするも、
「っとその前に!!……言いたいことがある……あー……そこの兄ちゃんよぉ、このままだとろくな生き方できねぇぞ」
「はぁ?」
「さっきまでずっと見てた限りなぁ……兄ちゃんは今のこの状況やら生きていることやら、夢か物語だとおもちゃいねぇか……?」
「……ッ!?」
「へへ……ゴホッ……なんもいえねぇってことは図星みてぇだな……なまじそんな力持ってんだ。そうなりもするだろうよ……世界はなぁ……そんな綺麗な……もんじゃ……ね……ぇ……」
ゴモリはニヤリと笑ったまま息絶えてしまった。
センリはSIGを構え固まったまま動かない……
センリは理解したのだ。
なぜここで暮らす決意をすぐに出せたか、純粋な日本人であったセンリがどうしてあまり抵抗もなく人を殺せたのか。
すべて、受け入れたように思えても心の中では“どうせゲームだし”“結局夢だろ”と思っていたのではないか?
今思うと行動すべてがその考えに基づいているように思えてしまう。
そしてアイラやリンのことすらもそう見ていたんじゃないか?
最初の野盗かの確認だってもしかしたらアイラに死ねって言っていたようなもんじゃないか……?
共に生きてくれとか、あんなこといっといて実は地球に帰る気満々だったんじゃないか……?
っていうかさっき何人殺した……?人殺しも簡単にやったのかオレは。それに尋問しているとき何て思った?アクションスターみたいで楽しくなってたよな……!!殺しを!!
だめだ、怖い、わからない、オレはなんだ……!!?
と自分を疑い、色々なことが混ざりに混ざって支離滅裂な思考を始めてしまう。
「センリさん……?」
さっきからピクリともしないセンリを心配して、リンが声をかけるが反応がない。目もどこか虚ろでなにも目に入っていないようだ。
「いやー、すまないね。きれいに葬ってやったら時間かかっち……まった……って、どうしたんだい?センリは」
ちょうど帰ってきたアイラは固まったセンリを見て怪訝な顔をしてリンを見る。
「あの……それが……」
リンは苦い顔をしながら、ゴモリが死に際に言った事について話すが、徐々にアイラが怒りに満ちた顔になってきたではないか。ギリッと歯をくいしばる。
「くそッ野盗の分際で……!!余計なことをしてくれたね……!!その価値観はゆっくりすり合わせていく予定だったのにさ……急に理解しちまったらセンリは自分がわからなくなくなっちまうよ!!」
「くッ……何とかしてあのドツボから出さないとっ……!センリ!おい、センリ!!」
アイラはセンリの肩を掴み揺さぶるが応答はない。どうしたものか、とリンを見るとなにやらすわった目をしているではないか。
「アイラさん」
「お、おう……」
「上裸になってください」
「お、おう…………おぅ!?」
「ほら、早く。」
バッ!と上着を脱ぎ去り下着姿になったかと思ったら大きいモノを震わし、一気に上裸になっていた。
そのままセンリの方へ行き、そっと抱きしめる。
「えっ……あ、おい!!」
「ほら、センリさん。わかりますか?私、今すごくドキドキしてます。それに火照ってます。私達は生きてるんですよ、この世界で……」
まるで赤子をあやすかのようにゆっくり、ゆっくりと頭を撫でる。
「あぁ、なるほどな」
それを見たアイラはリンのやりたいことに気付き、服を投げ捨て素早く上裸になると、リンの反対側から頭を抱きしめる。
15㎝ほどだろうか。センリとの身長差により胸で後頭部を包み込むかのような状態だ。
「ほら、センリ。暖かいだろう。大丈夫だ。怖くなんかないからなぁ。自分なんてゆっくり探してけばいいんだ。ゆっくり考えればいいんだ。あたし達がずっとそばにいるから……あたし達はセンリをよく知ってるから……」
「うっ……ひぐっ……アイラぁ……リン……ごめぇん……ごめんよぉ……オレなんも考えてなかったぁ……何してもなんとかなるだろって……ひっひぐっ」
カシャーン……とSIGが落ちる音が響く。
センリは二人を抱きしめ泣きじゃくり始め、アイラとリンはセンリが落ち着くまでゆっくり、ゆっくりと撫でていた。
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「ご迷惑をおかけしました……」
しばらく泣き、センリは二人に抱きしめられたままでいたが、いい加減泣き止み、落ち着いてきた。さっきは混乱と恐怖でヒステリックになってしまっていたが、今なら多少落ち着いて考えられる。
二人にと一緒にゆっくりこの世界を見て生き方を考えてみようと。所謂、自分探しの旅ってやつだろうか。
「やれやれ……ちょっと難しく考えすぎなんだよあんたは」
「そうですね、混乱して当たり前ですよ。私達はセンリさんに作って頂いたんでぶれませんけどね」
「うん…………ゆっくり考えるよ…………それでさぁ、こうやって安心させてくれたのはすごくうれしいんだけども、あのー、えーっと、このサンドイッチは……なんぞ……?」
「あぁ、これかい?役得だろ?良かったじゃないか」
「まぁー、私達も色々吹っ切れましてね。もう、こうなったら二人いっぺんにもらって下さいよセンリさぁーん!!」
二人ともさっきのままなので、上裸である。まさにおっぱいサンドイッチである。ん?クランベリーも入ってるかな?って感触のおっぱいサンドイッチである。センリはやめて、グリグリしないで、やめて状態でもあった。
「ほ、ほらっ、貰う予定だけどっ、そういうのはもっと甲斐性もってからにしようって!!!!思って!!!!」
大事な事がどさくさできまってしまいそうになるのを必死に阻止しようとするごアイラとリンはどこ吹く風で全くこたえる様子はない。なんかゼ○シィをドンッと置かれた気分になる。
「わ!貰ってくれるみたいですよアイラさん!!!やりましたね。もうこれでイチャイチャ合法化です。」
「くふふ、そうだねぇ。こうなったら近いうちに二人で喰っちまうかね!!それに甲斐性て……これだから童貞は。どうせ3人で稼ぐんだから甲斐性なんて関係ないない!!!」
「どどどどどどど童貞ちゃうわい!!!!!!!!」
「え、童貞じゃないんですか……?いつの間に……まさか、アイラさんと……」
「すいません童貞ですごめんなさいもうしません」
ちなみに、この間ずーっとゴモリとひょろ男の死体の前である。心なしか死んでまでこの扱いのゴモリが可哀想に見えた。
こう、あり得ない出来事とかに遭遇すると、は?ゲームみたい、映画みたい、とか思いませんか?あれです。
あの状態で色々やりながら「あはは、すげー。これもゲームじゃん」とかやってたらそりゃ嫌になりますわ。自分が。
さて、次回はやっと一般人に会えるかな?
ご意見ご感想お待ちしてます。