2話 青色の風
書きあがったら出す感じにします。よろしくお願いします。
「ん…あぁ…」
(頭の中がぐわんぐわんする……オレはさっきまで……なにを……)
フラフラする頭に手を当てながら起き上ろうと片手を地面につけるとシャクッと音がすると同時に手に感じる草の感触。そして吹き抜ける爽やかな風。そこで今自分が外にいて、草原に寝転んでいたということに気がつく。
「は……?」
恐る恐る目を開くと一瞬にして目の前に広がる大草原。澄みわたる青い空においしい空気が肺を満たしてゆく。何もかもがきれいな場所が日本にあっただろうか、いや、少なくともオレは知らない。今、自分の置かれている状況を忘れしばらくただこの景色に見入っていた。
「っは!!!!いいんだ、きれいなのはわかった!!オレはここでなにをしている!?なんでこんなところにいるんだ!?……いやまて、落ち着け、そうだ。ゆっくり落ち着いて考えよう……」
景色をみて呆気にとられていた反動か急に焦る気持ちが出てきそうになるが必死に抑え込む。落ち着いてここまでの状況を考えると
(どう考えてもあの門だよなぁ……)
そうとしか思えないのである。ちょっとばかし異世界モノが大好きな友人から似たような話は何度も聞いている。いわゆる、これは異世界にトリップしたのではないかと、思いつくまでにはそうは時間はかからなかった。
「まぁ、その線が濃厚ってのを踏まえて行動してみるか…ここが日本でも外国でも変わらないしな。最悪のパターンを考えよう」
と、まず始めにすることは自分の状態確認である。服は?顔は?持ち物は?と一通り調べた結果、不覚にも何も反応できなかった。
「顔はわからん。鼻が若干高くて眼鏡をしていないのによく見えているくらいか?まぁそれはいいや。問題は装備品……だよなぁ……」
まず服装が迷彩服であり、ご丁寧にタクティカルベストを装着している。そしてなんと左右の腰にはサンリバで愛用していたSIGのP226が2丁あったのだ。そして更に胸部には互い違いになるように横に差し込まれた2本のコンバットナイフ、背中にはトマホークが2つあるではないか。
「完全に昨日最後にサンリバやった時の装備だよなぁ……」
と、呟く。なにより不可解なのが結構な重装備なのにもかかわらず、全く重いと感じないのである。SIGだけで1kgはあり、今の装備品の合計重量は7kgもある。万年運動音痴を自負しているだけあって、自分がどの程度動けるかなどわかりきっているのだが、走ったりジャンプしたりなど確認をすると明らかに以前より動けている。
次に銃を扱えるかどうかだ。もし異世界なら文明基準によっては自分の身を守る上で大いに役に立つことだろう。
50mぐらい先にある幹の太い木に向かって発砲しようとする。
「……ッが!!?う……グッ……!!」
頭の中に急激に流れ込むあらゆる武器の扱い方や知識。めまぐるしく移り変わる様々な光景や文字列が知識として自分の脳に染みわたっていき無理矢理に押し込められた情報は代償に痛みと苦しみが巻き起こる。うずくまり、頭を抱えて過ぎ去るのを待つしかない。
「はぁッはぁッ……こ、これがチートってやつか?そりゃあ…銃なんて撃ったことない初心者が……簡単に……扱えるわけないもんなぁ」
数十分後、冷や汗を大量にかき少しげっそりとした様子で起き上がる啓はたった今詰みこんだ知識を基に先ほどの木にP226を構え撃ちこむ。
パン!パンパン!
「こりゃあ……すげぇや……」
走って木の下まで行き確認をすると、穴が1つしか開いてないではないか。これはまさかと思い、穴をほじくってみるとひしゃげた銃弾がポロポロと落ちてきた。いわゆるワンホールショットというやつだ。
「確信はなかったけど、やっぱりグラウンドリムのキャラの影響もでているっぽいな……」
先程、知識の波の中での場面で何度もグラウンドリムらしき場所での鍛錬や戦闘が行われている映像を見た記憶があった。その中でレンジャーとして遠くのまとに矢を射る、敵の急所にあてるなどの訓練があった気がする。
しかしそれはすぐに経験として変換されてしまったようでいまや感覚的なことしかわからない。経験に基づく勘や直感で出来てしまう事を説明しろと言われても困ってしまう。
となると、他のスキルもちゃんとあるのだろうと思い策敵をかけてみる。
「あー、やっぱさっきの発砲音に反応したかぁ。絶対なんかいると思ったんだ、オオカミかな?」
策敵の説明としては自分を中心とした約半径2キロの中にいる敵対生物は赤い点で脳内に表示される感じをイメージしてもらうとわかりやすいだろうか。そんな感じで全方位から囲まれる形で5つの赤い点が急速に接近してきている。そろそろ目視できる頃だろう。
「うーんと、どれどれ……お!やっぱりオオカミだ!こりゃあ貴重なたんぱく源ゲットか……な……」
どんどん近寄ってくるオオカミらしき姿に早くも食べる事を考えるあたりレンジャー教育の賜物であろうが、そのオオカミが想像していたよりもはるかに巨大な事に気づきはじめた。なんと普通のオオカミより5倍ほどもあるではないか!軽乗用車並みのオオカミが5匹とか無理、もうおうちかえる状態である。
「ぬおおおおおお!!!!!勘弁してくれええええぇぇ完全にここISEKAIだぁぁぁぁああ!!!」
猛ダッシュしながら叫ぶ啓。しかし、囲まれているわけで最低2匹ぶっ殺さないとこちらがたんぱく源になってしまう。
「とりあえずッ……撃つ!!!」
走りながらP226を抜き接敵まであと100mというところで2匹の脳天めがけて1発ずつ発砲する。
「ギャンッ!!?」「ガアァァッ!?」
ドゥドシャアァァア…
「あれ……案外いけるこれ?」
2匹は頭部命中で即死。脳漿をまきちらしながら地面を転げまわった。
そもそも射程距離が50mの銃で100mヘッドショット自体がおかしいのだが、それを差し置いても9mmパラベラム弾でこの威力はおかしい。
うんうん唸りながら走っているとすぐ2m後ろから気配を感じとっさに背中のトマホークをぶん投げる。
「ガッ……?!」
「うっおー!!!!あっぶねぇなおい!っておまえも……かッ!!」
「ギャインッ!?」
立て続けに後ろから迫っていたもう2匹の巨大オオカミをトマホークにより粉砕。凄まじい速度で振るわれる手斧は巨大オオカミの頭部のみならず体内半ばまで至っており、辺りに血と臓物をまきちらしていた。
最後の1匹は目の前で瞬く間に仲間が殺され驚き、一目散に逃げてしまったようだ。
「ふぅ……なんとかなったけど、あっけないな……。こいつらはスライム的ポジションなのかね?まぁ、とりあえず死体処理するk……」
【レベルが上がりました】
【イベントリを習得しました】
【固有スキルCreateCompanionを習得しました】
【固有スキルCreateWeaponを習得しました】
【詳細はステータスにて確認できます】
「ッな……はいきた天の声えええええぇぇ!!!!!」
突如脳内に響く謎の声にMAXハイテンションになる啓。これが友人から聞いていた天の声かと感動に打ちふるえる。
「というと、この世界はレベル制なのか。さっそくステータスでも見ますかって、どうみんの……?」
ステータスの見方なんて小学校でならってねぇよちきしょうとぼやきながらステータス…見たい…ステータス…と、うんうん唸っていると
ヴンッ
「うおっ」
name:SENRI Race:ハイヒューマン HP:36500/36500 MP:1499200/1500000
固有スキル:CreateCompanion Ⅰ
CreateWeapon Ⅰ
PartyAmplifier Ⅰ
職業スキル:ウェポンマスター Ⅹ
レンジャー Ⅹ
凡庸スキル:イベントリ、言語理解
「ふむふむ、筋力値とかは数値化されないのか。イベントリってつまりアイテムボックスだろうな、さすがに4次元ってわけではなさそうだけども。スキルの右のギリシャ数字は熟練度ってとこか?凡庸スキルには熟練度無しと……。ってかこのずば抜けたMPなんだ…?減ってるってことはどっかのタイミングで魔法つかったんか」
ステータスをみながらぶつぶつと考察を重ねていく。どうやら一番めんどくさそうな固有スキルについては後回しのようだ。スキルについて詳しく知りたいと思い始めた時、ちょうど見ていたウェポンマスターの欄が広がった。
ウェポンマスター Ⅹ
・古今東西様々な武具、火器の知識の扱い方をマスターした者が習得できるスキル。武器を持った場合にその武器の性能以上のものを引き出し本来の100倍の威力を発揮する。習熟すると様々な武器を扱う為に常に身体強化Ⅹ、自動回復Ⅹの効果がある。
「あー……超チートね。あんなつらい思いしてホント報われます……」
レンジャー Ⅹ
・様々な環境でも生き残ろうとする能力をマスターした者が習得できるスキル。生き残る為、採取、解体能力がうまくなり、相手に気づかれていない場合の攻撃力が100倍になる。習熟すると生存本能が極限まで引き出され罠探知Ⅹ、気配察知Ⅹ、隠密Ⅹ、魔力探知Ⅹが任意、または常時発動される。
「これで君もスーパーマンだ!やったね!妙ちゃん!……って、おおおおおおおおおおおおいい!!?なんだこのチートの感謝祭は!!!拝啓、母さん。僕、人間やめました」
あまりのチート祭りに妙ちゃん(誰)と母さんに話を振るなかなかの壊れっぷりを見せるも三分の一の冷静な啓があることに気づく。
「ちょっと待てよ……このCreateCompanionってグラウンドリムのコンパニオンか……?だとするとまさかこれきたかぁぁぁ!!!!?」
CreateCompanion
・大量の魔力を消費してCompanion(仲間)をつくれる。Ⅰの時点では2人まで。
「少なあぁっ!?いやいいんだけど、少なあぁっ!?」
盛大な突っ込みを入れつつ、早速スキルを使ってみる。すると、ゲームのスロット選択のような画面が現れるが2つしかない。そしてそこには既に名前があった。
「アイラとリン……!!!!!」
そう、啓が愛してやまないグラウンドリムのコンパニオン達である。意を決して、まずはアイラを召喚と念じる。
「うっ……くっ……!」
体の中、主に丹田の辺りから何かが急に抜ける感覚がし思わず膝をついてしまうも、意識を失うほどではない。
「くぅぅ……今のが…魔力ってやつだな…覚えたぞ。そんなことよりも、アイラだ……。アイラ!アイラァ!どこだ!どこにいる!?」
早く会いたくて、いっきに魔力を消費した反動でふらふらしながらもアイラを探し始めるが、足元も覚束ないのかつまずいて転びそうになってしまう。
「アイラァー!どこdうおぉっ!?」
ドサッ
正面からいってしまったので思わず目をつむってしまうが、いつまでたっても地面とキスできない。おかしい!と思っていると
「こーんな美人がいるってのにセンリは地面とキスしたいのかい?妬いちまうねぇ」
「アイラ!!!」
ピッチリとした軍服に赤い髪がよく映える。整った顔にニヒルな笑みを浮かべつつも慈愛に満ちた表情でこちらを見るアイラ。啓は思わず涙ぐみ、抱きついてしまう。
「おーおーよしよし……。センリは甘えんぼさんなんだねぇ。でも焦っちゃだめだぞー?童貞はその辺がいかんねぇ。くふっ」
「どどどどどどどど童貞ちゃうわばかあああああ!!!!」
「くふふっ。あーはいはい、心配しないでもおねえさんが奪っ…んんっ…貰ってやるから安心しなさいな。いや、リンの奴がゆるしてくれないかなぁ……?」
聞き捨てならない言葉がいくつもあったように思えたが今はそんなことより、リンだ。
(魔力の残量は残り76万…アイラ召喚に74万使ったとすれば十分足りる……!!)
「アイラ、オレ今からちょっと無理するけどリンが来たら頼んだ」
「あぇー、あたしがとめるのかい…?倒れてるセンリ見たらわめくよあの子……。見た感じ魔力がギリなんだろ?ちょっと回復するの待てばいいんじゃないかぃ?」
いかにもいやそーうな顔をしたアイラがいやそーうに啓に言うが、目をぎらつかせた啓は曲げない。
「いや、今じゃなきゃだめだ。そんな気がする」
「はぁ……。わかったよ。ちゃんとやっておくからしっかりやんな。」
「おう。まかせとkんぅっ!?」
「んッ……はぁ……。いいかい?これはあたしへのご褒美だ。リンには内緒だからね!」
「おまっ……お前なぁ……!!!」
「はいはいやったやった!!!早く呼ばないとリンがすねちゃうぞー!!」
気合いに満ちた啓のガラ空きの唇を奪ったアイラは満足そうに笑いながらため息をつく啓を煽る。そう間もなく、凄まじい魔力の奔流を感じたと思ったら啓がぐらつき始め倒れるが、素早く抱きとめるアイラ。やさしく微笑み啓の額をなでる。
「あんたはいつもあたしら優先なんだねぇ……。そろそろ自分も大切にしないと」
しばらくは心地よい風に吹かれ、二人は寄り添っていた。
次回でようやっとヒロイン出そろう…。あ、こんなあまあまもがんがん入れてく予定なんで。もちろん、戦闘もしますよ!!
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