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二―三章

そう言って、静かに心を見つめた。

心にと言うより、心を通してその向こうの何者か、或いは自分自身に語りかけているようだった。

心は、何を行斗が語ったのか、半分も理解できなかった。

ただ、途方もない事を言われた事だけは分かる。

妄想と片付けるには、それは真摯で深過ぎる内容だった。

「何かレベルが高過ぎて、良く分かりません」

「本当に、心の底からの言葉ですか?」

嫌な事を言いやがる。

心は再度、内心で毒づいた。

そこを自覚したら、引き返せなくなる。

茫洋とした、ぬるま湯のような世界から。

行斗は、心が巧妙に避けてきた、自分自身への根本的な問いを突きつけてくる。

自分が何を求めているのかを。

苦手だ。

逃げ出したかった。

でも、逃げ出せなかった。

行斗の問いかけは、魅力的でもあったからだ。

「思い出しました。

〈師匠〉はお元気ですか?」

椀を置いて、行斗は切り出した。

「……さぁ」

やはり本題はそれか。

全く厄介な人間と知り合ってしまったものだ。

石動と知り合いだった事については、納得できた。

顔の広い酔螺らしい。

「意外ですね、弟子のあなたが知らない訳はないでしょう」

「あちこちで誤解が宣伝活動をしているようですが、おれは〈師匠〉の弟子じゃあありませんよ。

そりゃあ、小さな頃から知ってはいますが」

「弟子ではないと。

秘伝とされた狂心功を伝授されておいて、ただの知人と言うのですか」

「狂心功?」

心には初めて聞く気功法の名称だった。

酔螺からは、何も聞かされてはいなかった。

ただ、それだけは毎朝やらないと、ひどく怒られた。

「お前さんの家系は本来短命なんだよ。長生きしたかったらサボらずおやり」

いつもは鷹揚としている酔螺が、その時ばかりは鬼のようだった。

おかげで今は、唯一の習慣になってしまった。

「小さな頃、気功みたいなものを教えてもらった事はありますが、そんな恐ろしげなものじゃあありませんよ。

ただの健康法です」

「なるほど……」

行斗は茶器を脇にどけた。

「あなた自身にも、興味が湧いてきました」

行斗がすっと立ち上がった。まるで、始めから立っていた様な、何の力みもぶれもない動きだった。

「少し、手合わせしてみませんか」

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