四―五章
「師匠!?」
心は疑惑の目を酔螺に向けた。やはり、得体の知れない企みに巻き込まれたのか?
「まあねぇ」
酔螺は、出来の悪い息子を見るように、視線だけを斜め下に向けて心を見た。
「心、お前添付ファイルを読まなかっただろう」
酔螺からのメールに、そんな物がついていた事を思い出した。あの時は、どうせろくな物ではないと削除してしまったのだ。
「あ……」
「あ、じゃあないよ。翻訳ができたところまで送っておいたのに」
大きく溜息をつく。
「危うく学校もろとも灰になっちまうところだったよ」
と言う事は、まだ功宝はあるのだ。
「そうだ師匠、理事長は!?」
「王木のお嬢ちゃんとこに匿ってもらってるよ。秘伝書も返しといた。もう狙われる事もないから安心おし」
少し残念な気もするが、鉄砂掌で叩かれるリスクは避けたいので、よしとする。
「普段はやる気の〈や〉の字もないくせに、突然突っ走るところがあるからねぇ、お前は」
不肖の弟子を持つと苦労するねぇ、とカラカラ笑う酔螺に、心は不機嫌な顔で弟子じゃあない、と否定した。
「やはり、全てはあなたの謀の中でしたか」
「こっちにも色々都合があってねぇ、悪く思わないどくれ」
全然悪びれずに答える酔螺。
思うに決まってるだろう、と呟く心に蹴りを入れて黙らせる。
酔螺はにやりとすると、行き成りとんでもない事を言い出した。
「心と戦って勝てたら渡してもいいよ」
「師匠!?」
思わず心は叫んだ。無茶を通り越して狂っている。賭けにもなっていない。
一瞬警戒の表情を見せ、次いで笑うと、行斗は言った。
「功宝を使って、私たちに何かをさせようとしていますね」
「そうと知っても、やるのだろう?」
狐と狸の化かし合だ。哺乳類にしては、かなり凶悪な種類ではあるが。
「不本意ですが、乗せられましょう。こちらへ」
燃えている校舎が、炎に耐え切れなくなって崩れ落ちる。
それを振り返りもせず、三人は山道を上がって行った。




