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三―三章

「……何でそんなところに?」

「色々あるのさ、女には色々とねぇ」

わざとらしく遠い目をする酔螺を見て、からかわれていると分かる。だが、その中に真実が含まれていて中々に油断がならないのだ、この超年上女は。

「にしても、エロは良いけれど妖怪は聞き捨てならないねぇ」

意外と根に持つタイプだ。

「うちのじーさんの代から、その姿でフェロモン全開していると言う噂の女が、人間の訳がない」

「おやそうかい?」

酔螺は不意を突いて心を引っ張り寄せた。

「久しぶりだねぇ。ちょっと見ない間になかなかの男前になって」

酔螺は懐かしそうにしながら、小さな頃のように、その豊満な胸で心の頭を抱きしめた。

「は、離せっ、年甲斐のないバインバインしやがって!」

「バインバインは嫌いかい?」

「大好きだ!」

「正直だねぇ、ならゆっくり堪能おし」

「年齢不詳の、人外化生以外のは、だ!」

「あら残念だねぇ、あたしは結構……」

無理やり酔螺の抱擁をもぎ離すと、恥ずかしさを誤魔化すために一つ咳をして、心は真面目な顔を作った。

それを見てニヤニヤ笑う酔螺は無視する。

「師匠のせいで、豪い目に遇ってますよ」

「そいつは災難だねぇ」

「人事みたく言わないで下さい!」

思わずテーブルを叩く心。

全く、煮ても焼いても食えないとは、こう言う女の事を言うのだろう。

「で、そんなところで日本にまで悪影響の出るような事をしていたんですか?」

「ある文献について、調べていたんだよ」

意外と真っ当な答えが返ってきた。

最古の思想、身体運用法について調べていたと酔螺は言った。

「珍しくまともですね。師匠ならもっと、国家規模の大層な事をしているのかと思っていましたよ」

通じないと知りつつ、半分嫌味を込めて心は言ってみた。

「その、大層な事をしてたのさ」

今度は自分用に泡盛を出しながら、酔螺は答えた。

古臭い酒瓶に入っている泡盛を、一緒に持ってきた湯飲みに注ぐ。泡盛の古酒独特の香りが部屋に広がった。

匂いだけで酔っ払いそうだ、とぼやいて窓を開ける心を見て、酔螺は少し残念そうな顔をした。

「ひょっとすると、人類の歴史を変えてしまうかも知れないねぇ」

「何を大袈裟な……」

「大袈裟じゃあないよ」

身を乗り出すようにして酔螺は言った。

「辺境とはいえ、自治政府を組織する部族が丸ごと襲ってきたからさ」

一体何をやっていたんだこの女は。

いや、やっぱりからかわれているのかも知れない。

「昔あった架空テロ事件みたく、騒ぎを大きくしただけなんじゃあないですか?」

懐疑的な視線を向けて、心は言った。

「あんなものと一緒にするでないよ、あれはカルト教団を潰すための方便に使われたのさ、公安にね」

自治政府にカルト教団、公安と言う単語まで出てきた。とても一般人の会話から出てくるものとは思えない。

やはり早めに縁を切った方が身のためか。

「一体何を見つけたと言うのですか?」

「遺跡さ」

くーっと、酔螺は一息で泡盛を飲み干した。

酒の飲み方の分からない心でも感嘆する、深い飲みっぷりだった。

その酒に込られた全てを、体に染み渡らせるような飲み方だった。

「遺跡に、一国が動いたと言うのですか?」

「唯の遺跡じゃあないよ、今の歴史が始まるより更に古い時代の物さ」

「確かに考古学的には貴重だとは思いますが」

「ただ古いだけじゃあない、それだけの価値のあるものを見つけたのさ」

「だから何なんです、それは?」

勿体付ける酔螺の物言いに、心は焦れた。

急かせば答えてくれるような性分ではないと知っているが、それでも聞いてしまう。

「お前さんにも関係のある事なんだよ」

心には思い当たる事があった。それも極最近の事で。

――とんでもない目に合うかも知れないぞ。

嫌な予感が、隊を成して警鐘を鳴らしてくる。次は弄られる位では済まないだろう。

それでも。

「功宝、の事ですか」

心は言った、心当たりを。

「……なるほどねぇ」


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