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終わりの日

聖女は、聖堂の奴らは俺がエルフを匿っていることを知っている。

エルフはただでさえ鼻つまみ者だ。

天使の魂の話を民衆にしたら、ますます立場がなくなるだろう。

「くそ……」

ダメだ。 逃げるしかない。

今の内にできるだけ遠くに行こう。

どこか、誰もいない場所に。

俺たちが安全に暮らせる場所に。

ラエルも店をやめさせよう。


「あ、メルト!」

家の中から、エフィが駆け寄ってきた。

「エフィ、ラエルはどこだ?」

「え? 多分、まだお店だと思うけど……。もうすぐ帰ってくるはずよ」

嫌な予感がする。

「今から家にこもってろ。鍵をかけて誰が来ても絶対に開けるな」

「ど、どういうことよ? 何かあったの?」

「詳しい話は後でする。 俺はラエルを迎えに行く」

「ち、ちょっと!」

「いいな、絶対家から出るなよ!」

走り際に念を押す。


全速力でアラモードを目指す。

途中、何かにぶつかった気もしたが気にしない。


「ラエル! いるか!」

ドアを開け飛び込む。

「おう、そんなに慌ててどうしたんだよ」

カウンターでグラスを磨いているベンが言う。

「ベン! ラエルは⁉」

「ラエルちゃんなら、今しがた帰ったとこだ。なんだ、入れ違いになっちまったのか?」

「……そうか、わかった」

家にラエルは着いているだろうか。


結局、家にはおらず、あらゆるところを探し回ったが、見つからなかった。


「はあ……はあ……」

そろそろ日が暮れる。

どこにいるんだ……

「メルト」

呼ぶ声に顔をあげる。

そこには、聖女がいた。

「……何の用でしょうか、聖女様」

「先程、天使様の魂を持つエルフを空に還しました」

「なに……? どういうことだ……!」

空に還す……?

まさか……。

「彼女の中にあった天使様の魂は、神の元に届いたのです」

「ふざけるな! それじゃあ……、殺したのか……?」

「はい」

意味がわからない。

ラエルが、いない? 死んだ?

どういうことだ? なんでなんだ?

「嘘をついてるんだろ?」

「嘘ではありません。事実です」

違う、こいつは間違ってる。

だって、だって、死ぬわけないじゃないか。

昨日まで、あんなに元気に過ごしてたのに。

「そして、わかったことがあります。エルフとは、十八年前に、天使様の肉を食べた者なのです」

「何を……言ってるんだ……?」

天使の肉?

食べた?

なんでそんな突拍子もないことを言うんだ?

「天使様の肉を食べた。そのことにより、この世界に滅びが起きた。彼女たちは、あの災害を起こしたのと同然なのです」

「……」

「私は約束を違えることはしません。だからこうしてあなたにまた会えた。そして、あなたと生きる世界を守るために行動します」

「なにを言ってるんだ……?」

「すぐに思い出すでしょう、それでは」

去って行く聖女。

その背中はとても大きく見えた。

俺はその背中が遠くなり、見えなくなっても動くことができないでいた。

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