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第八話

『アナザーチャット』の続編となります。が、書き方もジャンルも完全に変わってしまっています。見直しを怠っている部分があるので、もしかしたら間違いがあるかもしれません。ご一報ください。

さて、主人公行方不明から始まる物語は再会した後からの話となります。

どうぞ!


 目を覚ますと、この学校の屋上らしき場所に俺はいた。空は禍々しく赤黒いものが渦巻いている。これも戦闘ゲーム共通の仕様の一つだ。ドロドロとした感じを演出させるが、血生臭いゲームにはするなと≪オート・ラウンド≫に命令した結果だろう。

 今度は屋上の淵から廊下などを遠目で覗いてみる。

 何も見えない。あまり遠すぎる場所を見るとドット画になってしまうようだ。モザイク処理が施されたように靄がかかってしまう。

 しばらく、近辺をうろうろしていると、空中に赤い枠に緑の文字のウィンドウが発生した。全員ログインした証しだ。



『ゲーム内容説明:

   ①プレイヤー右端に常に存在しているゲージは体力とスタミナです(赤が体力、白がスタミナ)。体力は的プレイヤーからダメージを受けた時に減ります。赤の部分がなくなったらリタイアです。その場に意識が漂っているだけの幽霊状態となります。生き残っているプレイヤーが最後の一人になるまで動けません。次にスタミナです。これはプレイヤーが走ったり、銃の反動などによって削られていきます。連続して使いすぎると0になります。0になるとペナルティが発生し、約5秒間の完全硬直状態が起こります。注意して下さい。スタミナは歩いていたり、止まっている時に秒毎で自動回復されます。


   ②このゲームはサバイバルのため、生き残るプレイヤーが一人になるまで戦ってもらいます。敵プレイヤー以外に時々ポップするモンスターも敵となります。体力を最後まで保つように努力して下さい。モンスターからは特殊武器が落ちることもあります。


   ③このゲームの武器は主に三つ。自分の肉体・銃類・剣類となります。どれもモーションがあります。例えば、肉体の場合は殴るという行動をしようとすると、身体が勝手にアシストされ、殴る動作をします。銃や剣も同様です。銃は弾の詰め込みや撃つ動作。剣は振る動作や突く動作などがあります。試して下さい。武器の性能については武器を触りながら、指で三回タッチすると表示されます。


   ④武器の取得方法又はアイテムについてです。武器は青い光のオブジェクトです。このオブジェクトは一定時間が経過すると再び出現します。武器の弾数の補充の際には同じ武器の青オブジェクトに触ると増えます。その武器ごとに限界保持量が存在します。限界保持量の状態で触れても消えるだけなのでご注意を。アイテムは緑のオブジェクトに触って下さい。ランダムで手に入ります。緑はかなりの低確率で武器が手に入ることもあります。フィールドのあちこちに散らばっているので探して下さい。


   ⑤特別なオブジェクトが存在します。色は青、緑以外の何色か分かりません。赤や黄や黒や白だってあります。よく注意して探して下さい。このオブジェクトは八つしか存在しません。数発しかないとても強力な武器やおかしな効果を持つアイテムなどが入っています。一回取るともう出現することはありません。他のオブジェクトのようにポップすることはありません。慎重に扱って下さい。


   ⑥武器の切り替え、アイテム使用、現在時刻、プレイヤー生存状況などの細かいことを知りたい時は『確認』とだけ呟いて下さい。そこにウィンドウが発生するので、そこをタッチすれば分かります。消したい時は消えろと思えば消えます。



「こんなところか。『確認』」

 小さく呟くと確かに白のウィンドウに黒の文字で空中に出現した。ウィンドウにはアイテム、武器、生存者、イベント、フィールドマップ、現実での時刻などが表示されていた。

 突然、無機質な機械音声とカウントダウンのウィンドウが出現した。

「スタートまで3、2、1……スタート。制限時間は二時間半です」

 早い。現実時間で六時までってことか。部活動の時間と思えばなんら大したことはない。



*******************************



 黒羽 雄介が見つかったという情報はすぐに世界の暗部に伝わった。

「羽瀬社長。以上が報告でよろしいでしょうか」

「いいですよ。下がって下さい」

 自分より随分年上の部下はお辞儀をしてすんなりと下がっていった。ということで、この部屋にいるのは『すぺーど』こと羽瀬 駿一だけとなる。

「松原さんもすぐ気付くだろうな」

 羽瀬は机に置いてある電話機を手に取った。ピピと番号を押していく。

 掛ける相手は『シダー・ローズ』こと松原 荊。《SIX》の研究者にして黒羽の支援者の一人。

「あ、松原さ――」

 がちゃっ。

 切られてしまった。話したくないということだろうが、羽瀬にとっては関係なかった。

 ピピ。と今度は携帯からかけてみる。

 すると、すぐに応対してくれた。

「もう掛けないので欲しいのだけれど? 用事だけさっさっと言って失せて下さいません? 聞き障りです」

「酷い言いようですね。僕も掛けたくて掛けているわけではありません」

「貴方が言いたいのはユースケが帰ってきたことでしょう? 私の方は昨日の時点で知っていたので今更言われても困るんです。お引き取り願いて?」

「いやはや。それは情報網がお早いことで」

「貴方に褒めてもらっても嬉しくありませんの。とっとと消えて下さい」

「いや、言いたいのはそのことだけじゃありません。マスターである黒羽とその助手として働いている綾切さんのことです。……ばらしていいですか?」

「……それは私ではなく彼らに聞きなさい。私は確かにあの自称助手の娘の事をどうにかしたいですが、ユースケに迷惑が掛かってはいけないですし……」

 羽瀬は口元を吊り上げて笑った。目の前で本物の三角関係ができているので、これは使えると思ったのだ。黒羽と綾切と松原の関係をばらして壊せば、世界の反応がどうなるかなんて目に見えている。

「オイ、松原。イイようにされてンじゃねェ」

 不意にくぐもった男の声が聞こえてきた。羽瀬でもなければ、松原でもない何者かの声。

「……そうですわね。このままいくと損するのは私達ですもの」

 謎の男の言葉で松原は勘づいてしまったようだ。羽瀬の思いつきの計画はこの瞬間に砕け散ってしまった。羽瀬はまたすぐに、他の計画を作ることにした。

 と、次に言葉を発しようとしたその瞬間、

「では。やるなら一人でどうぞ」

 切られてしまった。羽瀬も受話器を戻し、椅子の上で背伸びをする。

――何者だ。

 あの男の声は聞いたことがない。しかも、こちらが何か言う前に考えていたことを勘づかれてしまうとは……。とんだ失態だ。

 このまま黒羽たちを引っ掻き回してもいいが、それだと自らの会社は得をしない。

 身は熟れてから食べる方が美味いに決まっているのだ。これは羽瀬が気に入っているある商人の言葉だ。

「やめにしますか。しばらく様子を窺いましょう」

 羽瀬は残念そうに首を振ると、彼の前に置かれた書類に目を通した。

《SIX》と《TAI》の正体についての論文に。



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