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第五話

『アナザーチャット』の続編となります。が、書き方もジャンルも完全に変わってしまっています。見直しを怠っている部分があるので、もしかしたら間違いがあるかもしれません。ご一報ください。

さて、主人公行方不明から始まる物語は再会した後からの話となります。

どうぞ!

「マスター!」

真っ先に目に飛び込んできたのはティエの歓喜の表情だった。他にもよく分からない漫画を読んでいるキルト、既に就寝中のコトネ、TVに釘づけのカイがいるみたいだ。

「ん? 他のTAIは? アイリとダインがいないみたいだけど?」

クリスはSUMこと宇志が連れて行ったはずだ。今頃、TAI研究のために一日中働いているのだろう。宇志の熱意はニュースなどにも取り上げられていたため知っている。

「え……と、私じゃ全員の監視とか、調整とかまで手が回らないからアイリちゃんは久里に、ダイン君は松原さんに……任せました」

 綾切が申し訳なそうにパンと手を合わせた。

 ふむ。だがまあ、彼女たちならいつでも連絡を取れるので別に問題はない。むしろ好都合だろうな。保護という形ではありがたいくらいだ。もし、日本政府などに没収でもされたらTAIが分解されかねない。

「いいよ。気になったらメールすればいいし」

 俺がそう言うと、彼女は胸を撫で下ろして安堵していた。そんなに心配ごとだったのだろうか。

「あ、そうだ。黒羽。明日の放課後に来てほしい所があるんだけど、いいかな?」

「放課後……そういえば、久里と同じ高校に通ってたな」

「……なんで知ってるの?」

 眉をひそめて、詰め寄るように俺に迫ってきた。俺は彼女から目を逸らして壁の窓に視線を動かす。

 さて、困った。

「……それより、どこに行けばいいんだ?」

 いい言い訳も考えつかなかったので、話を逸らすことにした。綾切はそのことに怒っているのか頬を膨らませている。

「その、学校の地学講義室に。出来ればミラージュでも使って」

「うーん、それなら、俺も何か持っていこうかな? 学校の授業まで受けろって言ってるわけじゃないだろ」

「うん。三時くらいに来てほしいかな」

 なんとなく事情が見えてきた。彼女は俺を提出するつもりなんだろうな。

「分かった。俺は作業があるからまだ起きとくけど、お前はもう寝たら?」

 右の壁にかかっている時計を見て俺はそう言った。

 現在時刻一二時半。

 綾切は学校もあるのでもう寝る時間だ。もしかしたら、宿題などもあるのかもしれないが自分の部屋でやってくれるだろう。

 綾切の部屋。

 このビルの小さな空き部屋に彼女が住んでいる部屋がある。俺がいない間に作ったらしい。小さなといってもアパートの個室くらいの大きさはあるので、家具や必要な機械類などを配置すれば、立派な家となる。

 現役高校生の女の子との同棲みたいに聞こえるかもしれないが、ビル自体がそれなりに大きいのでそんなことはない。貸家みたいなものだ。賃貸料代わりに俺の手伝いや家事などをしてくれるってだけだ。

「じゃ、おやすみ」

「おやすみ」

なんかいいな。毎日挨拶してくれる人がいるっていうのは。






 俺が起きたときには綾切はもういなかった。そりゃそうか。一〇時半だし。

「科学部、ですか」

 独りごとを呟きながら髪を整え、服を着替える。

 しばらく、世間から離れていたせいかこう言う普通の事も特別に感じてしまう。ぼさぼさの髪を手で乱暴に梳き、クローゼットから緑と黒のチェック柄の半袖、上に羽織るための漆黒の服を取り出す。下は黒ジーンズでいいだろう。

 なんとなく学校ということを意識して服選びをしてみたが、どこかおかしい。

「ティエ。この服おかしくないか?」

 隣の机の上に置いてある機械に向かって話してみる。四、五秒待つといつも白い格好をしている少女が出てきた。何をしていたのか、作業着のような服装になっている。

「いつものマスターから考えればおかしいですけど、たまにはいいと思いますよ」

「そうか」

 俺は短い返事だけをして、作業用PCの前に座った。

「何をするんですか?」

 興味津津という顔で、目の前のPCにティエが映る。

 TAIはインターネットさえ繋ぐことができれば、どこにでも出現できるのだ。本体はこのビルのスパコンの中にあるが、それは容量の問題を解決するための策と言っていい。彼女たちは基本的に『分身』で動いているので本体はあまり意味をなさないのだ。といっても、本体が消えれば、完全抹消――つまり死を意味するので重要なことには変わりない。

「俺が逃げている間に作っていたプログラム《オート・ラウンド》を完成させてる」

「……それなんなの、くろえもん?」

 こらこら。勝手にかの有名なアニメの一番有名なキャラで話そうとするんじゃない。

「これは、勝手に《SIX》を使って自動でゲームを作ってくれるAIプログラムだ。こんなの初めて作ったけど、結構面白そうだぞ。お前らも参加できるし」

「? 私達TAIがですか?」

 ティエは首をひねって考える素振りを見せた。いくら考えても分からないだろうけど、それなりに理解しようと努めているらしい。

「簡単に言うと、自分の好きなジャンルの好きな形式の仮想ゲームを作って遊べる。《SIX》を使ってのゲームだから、もちろんTAIも人間も仮想世界で遊べるんだ」

「ほー。なんか尊敬しちゃいました」

 感嘆の声を漏らしているが、それほど本気な声ではない。なんとなくすごいみたいな理解しかできないのだろう。

「じゃ、それを今日皆さんで?」

「おう。何人来るか知らんが、お前達も来たければ来い。俺があらかじめ作ったゲームを持っていくから」

「わかりました」

 そう言うと引き下がっていった。おそらく働きに行ったのだろう。TAIも一応、仕事みたいなものがある。ティエの場合は情報収集だ。世界中の情報を引き抜いて、管理してくれる。人間じゃ到底できない荒技も使えるので、彼女たちにとっては『お手伝い』程度だろうが、仕事には違いない。

 俺はというと気だるげに「やるかぁ」と呟くと再び作業に没頭し始めることにした。





 こんなものか。

 俺は《オート・ラウンド》を作り上げると、机の上に頭を置いてしばし休憩をとる。

 ……五秒で復活。

 時刻は一時半。まだ約束の時間まで一時間は余裕がある。バスを使っても二〇分位しかかからない。だが、その前に用事がほんの少しばかりあった。

 俺は、ペンダントにしか見えない形のミラージュと貴重品、それと《SIX》用USBを持って家を出た。


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