第三話
『アナザーチャット』の続編となります。が、書き方もジャンルも完全に変わってしまっています。見直しを怠っている部分があるので、もしかしたら間違いがあるかもしれません。ご一報ください。
さて、主人公行方不明から始まる物語スタートです!
地学講義室。古臭い教室で、部屋の隅にはほこりが山のように積まれており、使われているのだろうかと思うほどガランとしている。
そんな古びた場所の中、二人ほどPCの前で何かをしているのが見えた。
「あの………」
「お、来た来た。君が加澄君の紹介で入ることになった転入生か。僕は高三の佐々木 翔だ。ま、一応ここの部長。よろしく」
「アタシは百日紅 光香。高二。平部員。よろしく」
眼鏡部長と気だるそうな平部員? の先輩の自己紹介だった。百日紅先輩とダメ黒羽を比べるのはいい勝負のような気がした。
綾切は早速、容姿観察タイムに入った。ここ最近新しい人に会う事が多いので、特徴を押さえるためにやっているのだ。
まず佐々木部長。黒ぶち眼鏡に半袖カッターシャツ。いかにも勤勉って感じがする。胡散臭さもどことなくあるがいい人そうだ。次に百日紅先輩。紺のブレザーの上になぜか男物のコートを着ている。髪は長めのポニーテール。机の上でだらけていなければモテるのではないかと思う。
おっと、私も自己紹介しないと。
「私は綾切 繍花といいます。二年です……よろしくお願いします」
間を置き、部長がにやにやした顔を浮かべ、
「うん、こちらこそ、ハナウタさん」
「は?」
あれ? 私のチャット名が呼ばれたのは気のせいだろうか。さっき、久里は禁句とか言ってなかったっけ。なんでバレてるの?
「僕らの中では加澄君しかあれには参加してないから警戒しなくていいよ。言いふらしたりもしてないしね。安心して入部してくれ、『唯一の助手』さん」
――こっちも! 安心してくれと言っているがそのにやにや笑いのどこが安心できるんだ!
気にしても仕方がない。もう入ってしまっているのだ。何を言われても動じないこの鉄のように堅い精神でなんとか凌ごう。
「よ、よろしくおねがいします」
うう、ひきつった笑みで返すのがやっとだ。
「綾切 繍花をよろしくお願いします!」
先輩達が触っていたPCからいないはずの女の子の声が聞こえてきた。
「ティ、ティエちゃ~ん。いつの間にそこにいるのかな?」
百日紅先輩がPCをこちらに向けてくれると、真っ白な少女が映っていた。黒羽がインベンションのためだけに作った最後のTAI、ティエ。いや、これからいろんな人がTAIを作るだろうから最後というのはおかしいかもしれない。
「さっきまでずっと話してたんだ。この子面白いよね。綾切君がどこの部活に入ってるかを調べて、このパソコンに接続してきたんだよ。ニュースで『TAI』や『SIX』のことは聞いていたけど………まさか、ここまでとは」
「人類の躍進ってのも、頷ける」
私はガックリと項垂れた。まさか、ここまで疲れることになろうとは。いつからこんなに世の中は狭くなったんだ。ティエまで出てくるなんて……。
「こんちはー! おっ。ティエじゃん! 久しぶり」
久里が来てくれた。なぜかテンションがすごく高い。
「お久しぶりです。マロンさん。いや、もう加澄さんでいいでしょうか?」
「うん、いいよ………………あれ? バレてる?」
やっと状況を理解したようだ。久里は恐る恐る先輩方に視線を移す。すると、そこには爽やか笑顔の部長がいた。はっきり言ってこの上なく気持ち悪い。ティエも一緒に笑っているが、天と地の差だ。
「キモッ」
言わんとしてたことを百日紅先輩が言ってのけた。尊敬に値するかもしれない。
「ありがとう」
なんでお礼なんか言っているんだろう。もしかしたら、ギャグに突っ込んでくれてありがとう、ということかもしれない。
「先輩、お遊びはここまでにして下さい。活動内容とか繍花に教えて下さいよ」
さっきまでとは一転して冷たい声だ。久里ってテンションの強弱が激しいなあ。
「え、フリー活動?」
「そうじゃなくて、科学部として活動する時です」
「ああ、そうだね。じゃ、そこの椅子に座りたまえ」
私が部長の前、久里が百日紅先輩の前に腰かけた。荷物は机の横にでも置いておく。
「オホン。ここ、科学部が本格的に活動するのは水曜日のみで、ほかは自由な事ばかりしているんだ。幽霊部員ばかりでね。ぶっちゃけ言うと部活として成り立つのは週一だけなんだ」
「そうなんですか」
なぜかティエが相槌を打って、頷いている。
「水曜日になにをするかというと、決めたテーマについて研究論文を作ったり、実験をしたり、物を作ったり。今は夏休み明けでテーマなしだけどね」
「テーマは黒羽 雄介に関してでいい」
百日紅先輩は突然口を挟むと、テーマをあっさり決めてしまった。
黒羽 雄介。謎の天才。
私は彼の心の傷を知り、インベンションの事件も、行方不明のいきさつも知っている。
私は彼の願いを叶えると決めた『唯一の助手』であり、彼の絶対の味方。特別だとは思わない。今は私一人だけど、きっとたくさんの人が黒羽の味方になってくれると信じているから。
「綾切さん」
ティエに呼びかけられてやっと気付いた。意識が飛んでいたらしい。
「あはは、繍花ってば~、かの『マスター』に思いを馳せていましたか?」
見ると、先輩達もクックッと喉を鳴らして笑っている。
恥ずかしさで胸がいっぱいになった。黒羽のことが心配になっていただけなのだが、別の捉えられ方をしてしまったらしい。
「うん」
ここははっきり言っておかなければ、誤解される。慌てる必要はない。
「ありがとう。……やっぱり私の目は間違っていませんでした」
ティエが深深とお辞儀した。うむ。私の気持ちを理解してくれたのは彼女だけだ。
「――マスターのことをそんなに想っていてくれたなんて」
見事に私の期待を裏切ってくれたね。確かに黒羽のことは考えていたけど、みなさんが思っているような関係ではありません。
「ま、これでいこうか。黒羽 雄介に関しての研究が今回のテーマね」
部長がこれで決まりと言った顔でウンウンと何回も頷いている。
私も反対意見は特にないので、反論はしなかった。