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第十一話

『アナザーチャット』の続編となります。が、書き方もジャンルも完全に変わってしまっています。見直しを怠っている部分があるので、もしかしたら間違いがあるかもしれません。ご一報ください。

さて、主人公行方不明から始まる物語は再会した後からの話となります。

どうぞ!


 遡ること、ゲーム開始直後。

 百日紅は黒羽が無作為に選んできたメンバーの一人に突然攻撃された。不意打ちだ。

 彼女も大人だ。それにこれはゲーム。だから、汚いどうこうなどの文句を言うつもりはなかった。ただほんの少しこの仮想世界から離れてしまうことに未練を感じた。

 人が死ぬ時と一緒。ほんの少しの後悔や未練をこの世界に残してしまった。

「いや……」

 まだ楽しんでいない。まだ生きてはいない。

 そんなことを現実でもないこの世界で本気で言葉にした。独り脱落することを恐れた。

 幸運なことにまだ体力はあり、戦える。もうあと一撃でも受けてしまったら『死』が訪れるが、それはまだだ。まだ死ぬわけにはいかない。

 そんなエゴが生まれた。

 百日紅という人間はそれほど何かに本気になることがない。何事にも無気力で怠惰。ある意味、黒羽などより怠け者だ。現実に起こっていることを自分のことと捉えられず、まるで他人のことのように受け止め、前に進むことが分からなくなってしまったよくある人間の一人だ。

 そんな彼女は、この『SIX』を用いた仮想世界に人生で初めての感情を想いよせた。恋に近い感情だ。

 

 この世界を欲しい、ほんの少しだけそう本気で思ってしまった。


 それがこの世界を狂わせるとも知らずに。

 そして、あるオブジェクトがその心に反応してしまった。特殊オブジェクトだ。ただし、この世界にあってはいけない効果を持っている黒羽の思惑とは外れた何か。

 在ってはならない禁忌の力。

 それに百日紅はこの世界の『死』が来る寸前に触れてしまった。恋という名の欲望と恐怖の元で求めてしまった。




 



『確認』

 俺は現在の生存状況を確認した。最初の参加人数は一三人。現在はその約半分の七人。俺が知っている人は綾切、久里、ティエ、キルト、百日紅さんくらいだ。どうやら部長さんはリタイアしてしまったらしい。あの鬼にやられたのだろうか。イベントはいつの間にか終了してしまっているが、鬼が全員消えたかどうかは知らない。

 俺は屋上から逃げて、今は二階の校長室にいた。何かないか探しているのだが、何もない。オブジェクトはすべて取られてしまっている。

「武~器~お~く~れ~」

 恨めしや。恨めしや。日本刀を壊されたせいで何も武器がない。《エア・パック》のみだ。

 俺は校長室に置いてある机の下に隠れることにした。今から何をするのかというと、特殊オブジェクトの発生していそうな場所及び敵プレイヤーが探索をしていなさそうな場所の推測である。

 まず、第一に特殊オブジェクトについてだ。あれから逆転武器やアイテムが出てくるわけであるが、逆転というにはそれなりの条件が必要なのだ。例えば、武器のない状態である部屋に行くと出現とかライフルだけでプレイヤーキルを続けるなどだ。これは勝手な妄想でしかないが、あながち的を射てると思う。

 第二には、敵プレイヤーが探索していないような場所。もしくは俺が今しているようにじっくりと考えないと分からないような場所だ。俺はこの二つの条件に当てはまる場所の心当たりがあった。

 校庭だ。

 トラックしかないような殺風景な場所でライフルに狙われると即死必須だ。つまり、誰も近づこうとしない。何もないように見えるし、いちいち死地に向かうような馬鹿はいない。

――何もないことないよな、たぶん

 記憶がおぼろげなのでよくは覚えていないが、確か隅の方に倉庫らしきものがあったはずだ。俺はそこに特殊な何かがあるのではないかと踏んでいる。理由はいたって簡単。俺が設定した時にお約束を忘れないようなコアな作りにするようにした。こういう時に考えたら逆転できるようにしておいたのだ。

「行くかって。おっと?」

アナウンスが流れた。イベントだ。

『イベント二回目の発生。このフィールドの一階に地下への入り口が出来ます。地下にはお宝オブジェクトが存在しています。地下ではプレイヤー同士で戦ってもダメージも効果も発生しません。そのため、今回のイベントでは協力プレイが出来ます。奮ってご参加ください。なお、そこには狂ったモンスターが徘徊しています』

 なんとも濃い設定のゲームだ。俺が作ったにしても違和感がある。なんていうか、まるでTAIが組み込まれているようだ。俺が組み込んだのはいくつかのAIだけのはずで、そんな高度なプログラム入れていない。AIに小さい細切れのプログラムを山のように投入しただけだ。

カタ。カタ。タ。

校長室の前を誰かが通って行ったようだ。武器でも引きずっているような音が聞こえる。誰だろうか。なぜ武器を収納しないのだろうか。

 音が遠ざかっていく。どうやらイベントに行くために上から降りてきただけのようだ。

 俺もイベントに行きたいが、先に確認しておきたいことがある。


 玄関ホール。周りに気配はない。ここは一階だから人が集まっていてもおかしくないのに、なぜか誰の姿も見かけない。もうイベントに参加しているのだろうか。

「どっちでもいいか」

 運動場まで腰を屈めて移動する。屋上からもし射撃されても大丈夫なように角度を考えて遮蔽物の間を転がる。

 砂地のトラック。運動場だ。倉庫も正門と反対方向に存在している。

 俺はどの学校にも存在するはずの運動場がなぜか特別に感じた。なぜだろうか。

 息を整えることにする。一回吸って、吐く。それを三回。

 運動場に飛び出て、ダッシュ。六秒後エア・パックを展開する。ジェット噴射のように粉塵を巻き上げながら倉庫に一直線に突っ込む。

 何事もなく辿り着いた。倉庫の重たくなった錆びついた扉を開ける。中には何もない。

「なっ、そんなはずは……」

 いや、俺が倉庫に入った途端、倉庫の端で黒光りする何かが見えた。

 黒のオブジェクト。

「よし」

 近づいて触ると武器を取得。という文字が暗い闇の中に浮かび上がる。

『確認』

 武器名: 憫��'j�%!荢�(ru&3�d鑾|�@e�$���R

「は?」

 効果:拱HX�-,^�・1QB���e否勦�lY穣t

「は? は? どういうことだ? バグってやがるのか? バグが起こらないように俺が何個デバックツールやバグ発見プログラム組んだと思ってんだ」

 苛立ちを覚え始めた。こんなふうにすぐバグってしまうようなゲームを作った自分に憤りを感じた。 こんなことでは綾切の期待を裏切ってしまうではないか、と。

 ドーン……。

 校舎の方から凄まじい爆発音が聞こえてきた。耳を澄ませば悲鳴も聞こえてくる。

「くそっ!」 

 俺は再び《エア・パック》を使い、校舎の方へと向かうことにした。


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