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第一話

『アナザーチャット』の続編となります。が、書き方もジャンルも完全に変わってしまっています。見直しを怠っている部分があるので、もしかしたら間違いがあるかもしれません。ご一報ください。

さて、主人公行方不明から始まる物語スタートです!

 九月一日。私、綾切 繍花はマロンこと加澄 久里の高校に転入することになった。

 夏休みの間に転入手続き等も済ませ、学校見学などもすでに済ませている。


 こんなことになった理由は三つある。

一つは今まで元の高校に通わなかったのに、いきなり登校してもありとあらゆる悪口、批難を浴びせられるだけなのが目に見えたからだ。もう一つは勉強のランクを落とさないと私が授業についていけなくなるからという理由だった。

 最後、出席日数がアウトだった。

 だが、久里の学校ではそんな人たちでも卒業できるような手配が出来るらしい。毎日拷問のような量の宿題をしてきて、その上夏休みなどがないなど学生の精神力が問われる曰く付きの条件だが、それが救済措置として有効になるので文句は言えない。


 私は現在、黒羽の金で生きている。あの古びたビルに住み、高校にも行け、飲み食いに困らないのは一重に『謎の科学者の唯一の助手』だからだ。

 その謎の科学者である黒羽は今、どこにもいない。完全に行方不明となってしまっている。

 実は居場所どころか生死も分かっていない。私を沖縄に置き去りにして逃げてしまったのち、その天才的な頭を姿を隠すためだけに使ってしまったのだ。国から追われる身となっても依然として、見つかっていない。

 本当にどこにいることやら。

「はぁ……」

 口から自然と溜め息がこぼれた。あの日から約二週間ちょっと経つと思うと肩が重たく感じる。

「繍花。学校」

 右横の機械の画面から声がした。キルトだ。世界で二番目に作られたTAIである。

「もう、そんな時間?」

「おう。通学時間も合わせるとそんなところだろ」

 彼女はヤンキーっぽい風貌に似合う男言葉を使っている。だが、見た目や口調とは裏腹に性格は割としっかりしているほうだ。

「気が重いけど、行ってくるよ。留守番よろしくね」

「ン、いってらっしゃい」

 ビルを駆け下り、折り畳み傘、肩から掛けるタイプのバッグ、財布を持つと近くのバス停へと走る。

 今日の空はほんの少し曇っていて、雨が降りそうだ。ジメッとした湿り気が辺りに広がっていて蒸し暑い。日本の気候は湿り気が多すぎてかなわない。




 

  バスから降りると手を振ってこちらに向かってくる少女がいた。

「ハナ……じゃなかった繍花! 一緒に行こう!」

 加澄 久里だ。インベンションで知り合い、現実で唯一の女友達である。

 彼女の今の姿はインベンションで見たような姿ではなく、上は紺のブレザーに濃紺のロングスカート、下は地味な色の靴だった。

「案内してね。久里」

 そう言って私たちは一緒に高校まで歩くことにした。バス停からは少し遠いから、しばらく話しながら歩ける。

「ウチの高校に初登校ってわけじゃないでしょ? 夏休みに行ったんだし」

「うん。だけど、ほら。先生とか生徒とか」

「ああ、そういうことね。気にしないでいいよ。女子はそんなに目立つような子いないから」

 地味な子が多いということだろうか。もしかしたら校風としておとなしい感じなのかもしれない。

「行ってみれば分かるよ。分からないことがあれば私に訊いてくれてもいいし」

「ありがと」

 校門が見えてきた。たくさんの生徒が入って行くのが見える。


 黒羽に手伝ってもらって抑え込んでいるアレが、心の奥でまるで生きているみたいに蠢いた。だが、前みたいな拒絶反応は起こらない。

 決して大丈夫とは言えない恐怖感があるが、それでも以前と比べたらなんてことない。たくさんの人を見るだけで吐き気が催すようなこととはおさらばだ。

 このことに感謝したいが、肝心の彼は行方不明だ。

「確か、繍花は職員室とか行ってから終業式に参加するんだっけ?」

「あ、え、うん」

 考え事をしていたため、慌てて答えた。

 首をブンブンと横に振ったあと、深呼吸をする。その際、口から吸い込んだので、

「げっほ、げほっ」

 むせた。まさか深呼吸くらいでむせるとは思わなかった。

 久里に背中をさすってもらいながら高校生になってほとんど初めての登校。情けなさすぎる。


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