「野球ボール」「チャイム」「窓ガラス」
まず、あなたに心からの感謝を。
私の側に居てくれてありがとう。
この真っ白な部屋から出れない私をあなたは愛してくれた。
この何も無い部屋にいつもと違っていたのは窓ガラスを割って入ってきた一つの野球ボール。
心配してお母さんが急いで来たら転がっていたボールと割れた窓ガラスを交互に見て苦笑い。
少しすると家のチャイムが鳴った。
お母さんと誰かの歩く音がする。
お母さんがドアを開けて入って来ると後ろにお母さんより少しだけ背の高い青髪の男の人が入って来た。
青髪の男の人は私を見ると少しだけ驚いたような顔をして、謝ってきた。
彼が野球ボールの持ち主らしい。
それから彼はよく家に来るようになった。
一年後には彼と一緒に居るのが当たり前になった。
彼は部活が終わると直ぐに家に来て私の介護をしてくれるようになった。
私は一度、たった一度だけ彼に聞いた。
何で私の介護をしてるの?と。
彼は笑って、
何でってお前の側が一番暖かくて俺が人生で初めて好きになった人の側だからだよ。
って笑われた。
私は顔が自分で解るぐらいに紅くなっていただろう。ただ一言、バカッっと言って布団で顔を隠した。
彼は私の自慢の赤のようなピンクの様な髪を手で剥いていた。
私はそのまま眠りに着いた。
「…ぉぃ……あさ……はゃ……ほら起きな、朝ご飯だぞ。」
「………あれ?老けた?」「…色々と突っ込みたいが寝ぼけすぎだ。」
……………そうだあれから4年も経ってるんだ。
「早く起きろ〜飯を食べる時間が無くなるぞ」
「分かってるよ。車椅子に乗るから手を貸して。」
彼はハイよと私を簡単に持ち上げると車椅子に座らした。
「ねぇ…」
私はあの時の質問をもう一度した。
「どうして私の介護をしてるの?」
彼は立ち止まって背中を向けたまま
「お前の側が一番暖かくて、俺が人生で初めて好きになった人の側だからだよ。」
彼はあの時の言葉をサラッと答えた。
「やっぱり私はあなたの事が…」