「ラグビー」「幼なじみ」「歯磨き」
ピィィー。
ホイッスルが鳴り響き、俺の高校ラグビーが終わった。なぜか涙は流れなかった。
〜帰り道〜
俺は川沿いの土手をゆっくりと歩いていた。
空が真っ赤に染まっていてどこまでも空は広がっており下を見ると影が後ろに向かって伸びていた。
「そこのラガーマン!待ちなさい!」
聞き覚えのある声が聞こえて声のしたほうを見てみると「腐れ縁のチビがいた」「私はチビじゃない!」
「なんとチビは読心術が使えるようになったみたいだ」
「アンタ口に出てるからね全部」
チビが詰め寄って来るが俺は、
「そら失礼。」
と芝居かかった動きで頭を下げて歩きだす。
「…なんだ。大丈夫そうじゃん。心配して損した。」とチビは俺の隣に付いてきた。
「心配したのかお前でも?」笑いながら言うと少し怒りながら、
「当たり前じゃん、最後の試合なんだから。」
俺はなんだか温かい気持ちになった。純粋にうれしかったのかも知れない。
「そっか、ありがとう。」自然とそんな言葉が出ていた。
「あら珍しい事もあった。滅多に感謝しないのに」
チビがなんか言ってるがスルーだスルー。相手にするとさらにうるさくなる。
「こら無視すんな馬鹿」
袖を引かれるが無視だ無視これ以上なんか言うと俺が不利になるからな。
「徹底的に無視か、良いわよこっちにも考えがあるから。」
チビなんか考えたらしいまあまたくだらん事だろう。チュ。
…………え!えぇ!
「反応が無いのでキスしてみました!」
チビが馬鹿な事を言い出した。
「何にやってんだよお前は!馬鹿なのか?馬鹿なんだな?!」
マジでこいつ馬鹿だろ。
「バカバカうるさい!話しかけてんのに無視するのが悪い。」
「でも限度を考えろよ。いきなりキスするかよ。好きでも「好きだよ。」ない奴に…。マジで?」
「好きだよ。高校入る前からずっと好きだよ。」
チビが真っ直ぐに俺を見ている。
「時間をくれ。明日の朝には答えるから。」
俺とチビは、それからろくに話もせずに分かれ道で分かれた。
〜自宅〜
今日はいろいろありすぎて疲れたな、ラグビーは終ったしチビには告られるし……どうしたら良いんだ俺…取り合えず明日の朝には、答えを出さなきゃいけないのか…マジでどうしよう。確かにチビは嫌いではないけど恋愛対象ではないようななんでチビは俺を好きになったんだ?…いやチビは高校入る前から好きだと言っていた、だとしたら何かきっかけがあったはずだ。俺は悩みながらキッチンに行くと母が洗い物をしていた。
「今日あの子試合見に来たの?」
俺は少し驚いた。母はあまりラグビーに興味が無く、自分からラグビーに関係するような話をしないのだ。そしてチビの話をするのも珍しい。
「あぁ、来たよ。一番前で応援してくれたよ。」
「そう、最近うちに来ないから、諦めたのかと思ってた。」
俺は母が何を言ってるのかわからなかった。
「なんのこと言ってんだ?」
母は手を拭きながら言った「将来の夢はあんたのお嫁さんがあの子の夢だったでしょ」
……マジか。そんなに前から……ダメだな俺…全く気が付かなかった、それどころか忘れてた。
ハハッ…マジでどうしようもないわ。
俺は家を飛び出していた。母が何か言ってたけどわからない、後で聞けば良いや、今はチビの所に一分一秒でも速く行きたい。
ラグビーで鍛えた足は直ぐにチビの家に着いた。
俺は裏手に周り庭の木を登りチビの部屋の窓を叩いた。
直ぐにカーテンが開き窓が開く「何やッ」
もう体が勝手に動いていた、俺はチビを抱き寄せキスをしていた。
「好きだ。」
チビはぽうっとした顔で
「え?」
もう思いが止まらなかった「好きだ。俺はお前が好きだ。だから俺の隣で一緒に一生居てくれますか?」
チビはポロポロと涙を流しながら俺を見ている。
「ずるいよ。もう答えはわかってるのにもう一回言わせるなんて。」
「もう一度俺はお前の口から聞きたい。」
チビは涙を拭いながら
「私もあなたの事が」
今までで
「大好きです」
最高の笑顔だった。
〜朝〜
洗面台で歯磨きをしていると昨日の事を思い出す。
あのあと家に帰ると母は笑いながら「頑張ってね」と言われた、仕組まれたかもしれないが後悔はしていない、てかするわけが無い。そろそろ出るか今日はチビと一緒に登校するから速く行かないとな。
玄関でマフラーをしながら靴を履きドアの前に立つ。「フゥ〜。んじゃ、いってきます。」
今日から隣は幼なじみから彼女になりました。