プロローグ
旅という物に憧れる。
いろんな町を、国を、物を、人を見ることができるから。
違う世界を見ることもできるかも知れない。
だから僕は、旅に憧れる。
旅を、してみたい。
旅をするとはどんなことか考える度に旅をしてみたい思いはふくらんでいった。
「リィ!」
僕の友達が、僕の名前を呼ぶ。
「パチ。お母さんとのお別れはどうだった?」
僕は友達の名前を呼ぶ。
今日、僕は旅に出る。パチと一緒に。
パチのお母さんがこの話をもちかけてきた。パチのお母さんはお土産を期待しているようだ。
「リィ…何で旅をすることになってるんだ?」
どうやらパチはこの話を知らなかったらしい。
「だってパチのお母さんが…」
この話をもちかけてきた、と言う前に僕にパチの右ストレートが決まっていた。
正直ものすごく痛い。パチはかなり強い。
「…痛い。」
「何で旅しなきゃいけないんだ!普通に暮らしたかったのに!!」
この感じだともう一発喰らいそうなので早めに話を終わらせることにした。
「まぁとりあえず旅の目標を決めようよ。どこに行くとか、何を手に入れるとか。」
もうほとんどパンチの体勢に入っていたパチはかなり不満そうな顔をした。
「……世界三大珍味を手に入れてこいと言われた。」
「そんなにお金ないと思うけど…」
「手に入れるまでは帰ってくるなと言われた。」
「一生帰れなかったりして。」
「縁起でもないこと言うなよ!」
今度は左ストレートを喰らった。パチはきっとカルシウムが足りてない。両方のほほがヒリヒリする。
「まぁまぁとりあえず出発しようね。」
このまま話を続けていたら僕はボコボコにされるだろう。早く話を切り上げるのが得策だ。
「…道連れが欲しいな。」
パチは時々恐いことを言う。
「ここって田んぼしかないから一緒に旅に出たいって人はいっぱいいると思うよ。」
僕達が住んでる村には田んぼと家しかない。それ以外にはなにもない。
「いいじゃないか。平和で。」
パチは平和が好きな割にはよく手が出る。
「ん〜…じゃあ村の出口にいる地味なおじさんとか…」
「じゃそれで。」
道連れは誰でもいいみたい。僕達は村の出口に向かった。
村の出口に地味なおじさんがいる。
僕達は村を出るついでにそのおじさんを道連れ(パチが言うには)にすることにした。
道連れというのはついでにするものなのかな…?