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おはるちゃん1

 静男は春代と夜空を見上げていた。

「ほら、流星群よ。見えるかしら」

 春代は夜空を指差して、興奮したように話し掛ける。静男は寄り添いながら、

「美しか――。星が降る、まさに星が降っているとしかいいようがない」

と、その指さす方角を見つめた。北東天の一角であった。

「ペルセウス座流星群っていうのよ。お盆の時期に観ることができるの」

「おはるちゃんは星のこと、詳しいね」

「それほどでもないけど」

 春代は、お星様はいつも観ているの、がんかけしているから、と言って両手を合わせた。去年の八月のことである。

 深夜零時を回ってもふたりは夜空を眺めていた。


 年も改まり正月の二日目、静男は一人でこたつに入っていた。

 暮れから正月にかけて到来した寒波。山から吹き下ろす風は冷たく、その寒さはやはり骨身にこたえる。

 妻の秋子と三歳になる息子は、電車で三十分ほど離れた妻の実家に帰っており、静男が常々狭いと感じていた六畳の居間も、こうして一人っきりで居ると意外と広く見える。実に寒々として、わびしいものである。

 静男は新しい作品の構想を練っていたが、どうも落ち着かず、以前書き溜めておいた自分の作品に目をやっていた。〈短編小説風に書いたものを、ある程度まとめて、全集という形で世に送り出せないものか〉などと、大雑把であるが、そんなことを考えていた。

 静男は小説家であるが、その仕事ぶりはかんばしくなく、収入は細く、生活は苦しかった。

 それに引き換え、静男の実家は代々続く漁師の網元で、船もたくさん持っている資産家である。父母は高齢であり、歳の離れた長兄、作蔵が上柳の家督を相続していた。


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