表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

第4話 『彼女の、不可逆なインフレーション』 「彼女の計画 ―役作りの夜」

場所:『彼女の計画』撮影セット。非常階段。夜遅く。


瞳を演じる役者が、一人で壁に向かってセリフを繰り返している。


瞳(役者)(独り言のように):「『特別じゃなくていい』——ここは、もう少し力を抜いた方がいい? いや、ここは力を込めて……」


純を演じる役者が、カメラを肩に担いで現れる。


純(役者):「撮ってもいい?」


瞳(役者)は振り返り、少し笑った。


瞳(役者):「……また? 純さん、ほんとに変わってるね」


純(役者):「うん。この『作り込む過程』が、本番の『揺らぎ』になるから」


純を演じる役者はカメラを回し始めた。


瞳を演じる役者は壁に向き直り、再びセリフを繰り返す。カメラの存在が、彼女の「演じる自分」と「素の自分」の境界を、少しだけ曖昧にしていた。


ファインダー越しに、純を演じる役者が呟く。


純(役者):「……いいね。その『揺らぎ』。本番でも、それでいこう」


非常階段の暗がりで、"カノジョ"は二人を静かに見つめていた。彼女はまだ直接的な介入を控えていた。ただ、二人の肩に視線を落とし、まるで黒いインクを一滴垂らすように、ゆっくりと染み込ませた。その染みは、翌日の本番で、静かに、しかし確実に広がることを彼女だけが知っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ