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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目

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957 星暦557年 黄の月 12日 新しい伝手(21)

「う~ん、成分読み取り部分はちゃんと機能しているっぽいけど、疑似的に反応を確認する側が駄目っぽいか?」

魔術回路用の新素材を使って一回り小さくした試作品は上手く動かなかった。


が、最初の方の成分を読み取る機能の方はちゃんと魔力が流れて魔術が起動しているように視える。

次の疑似的に反応を生じさせる方が上手くいっていないっぽい。


「一応、どちらか上手く機能していないのか確認する為に、機能すると分かっている元の大型サイズのをと別々につないでみよう」

アレクが提案し、試作品をばらして昨日までに作った大きくて使い勝手が悪い試作品をばらしたのに繋いでみた。


確かにな。

大きければちゃんと機能するのは分かっているのだ。

成分読み取り部分だけ大きいのと、疑似的に反応を確認する部分だけ大きいのに変えて、どの組み合わせがちゃんと機能するかでどちらがサイズの縮小で問題が起きているかはっきりするだろう。


ということでまずは多分機能するであろう、成分分析は小さくしたが疑似的反応確認側は大きいままの試作品を腕に嵌め、比較的弱い毒に指を突っ込んでみる。

ピカ。

腕輪の上に付けた明かり回路が光った。


「うん、こっちは大丈夫みたいだね~」

シャルロがそう言いながら、今度は疑似的反応を確認する魔術回路を小さくしたのに繋いだ試作品を腕に嵌めて、毒に指を突っ込む。

何も反応なし。


「・・・ちなみに、触れるだけだったら蒼流が毒を無効化しているなんてことは無いよな?」

蒼流だって俺たちが何をやっているか分かっている筈だが、いかんせん過保護だからなぁ。

大事なシャルロの肌に毒が触れるのも許容できん!!とうっかり無効化している可能性もゼロではないので一応確認する。


『・・・大丈夫だ』

ふいっと蒼流が現れてぼそりと呟く。


最初の沈黙は何か意味があったんかな?


まあ、良いんだけど。


「ふむ。

成分分析の魔術回路は普通の素材で小さくしても機能しているのかな?」

そう呟きながらアレクが試作品の山をかき分け、初期に作って没になった試作品を取り出す。


あ~あれは貰った毒探知用魔具と同じサイズに普通の魔術回路の素材を使って造ってみたやつだな。

それを切り分けて成分分析の部分を大きな疑似的反応確認部分につなげた腕輪を嵌め、アレクが毒に指を突っ込んでみた。

・・・ぴかり。


「微妙に反応が遅い気がするが、ちゃんと機能したな。

ということは、疑似的に反応を確認する部分の魔術回路が問題なのか」

そこだけ色々な素材で試作品を造りまくって繋げて試せばいいんだから、少し作業が楽になった。


まあ、上手くいかなければ今度は大きな魔術回路をどうやって腕に嵌めて目立たない様に細工するかの工夫が必要になるが。


「いや、反応が遅いのでは『毒味をしているように見えずに確認できる』というこの魔具の利点が活かし切れなくなるかも知れない。

この部分は魔術回路の新素材を使う方が良いだろう」

アレクが言った。

まあ、無理に昔の素材を使う必要はないからな。

最近は新素材も大分とお手頃な値段で流通するようになったらしいから、効率を上げる為にも新素材を使うので良いだろう。


「そうだな。

さて。

毒の反応を試すこっちは・・・それこそ、毒を調べるのに使う銀とか、反対に毒である毒キノコでも混ぜてみるか?」

適当に手当たり次第な素材を調べるが、ついでに毒に関連しそうな物も調べてみても良いだろう。


「ついでに卵の殻とか塩とか炭とかも試してみよ~」

楽し気にシャルロが提案する。


「卵の殻が好きだねぇ、シャルロ。

学生時代の時もランプの素材に混ぜてたよね」

アレクが笑いながら言った。


「やっぱ卵はお菓子を作るのに不可欠だからね!!

殻を買い取るような需要があれば、お菓子の値段が少しでも下がるかも知れないじゃん!」

シャルロが堂々と主張した。


「・・・もしかして、シャルロが卵の殻を色々と素材を試す時に使いたがるのって、お菓子を作る際の費用削減の為なのか??」

貴族のお坊ちゃまのやる事じゃないぞ??


「ウチの料理人なんかはお金の心配はいらないんだけどね~。

街の美味しい焼き菓子の所の料理人さんなんかは、普通に決まったレシピのは販売価格も費用を考えて決めてあるから良いんだけど、新しいお菓子を作ろうと試作する時に卵の費用ってそれなりに痛いって言っていたから。

使い切っちゃう砂糖とかはどうしようもないけど、卵だったら殻を売れたら少しはマシでしょ?」

シャルロが裏を明かした。


あ~。

街の甘味処や料理店や菓子屋の美味しい菓子を良く知っていると思っていたら、実はそう言うところの料理人とも仲良くしているのかぁ。

卵の殻を売れたところでどの程度料理人の収支が改善されるのかは知らんが。


シャルロらしい。

まあ、俺も美味しいお菓子は好きだからな。

卵の殻が役に立つなら、それはそれで問題はない。

早速色々と試してみようじゃないか。


・・・パディン夫人から卵の殻を貰わないとな。




意外なおぼっちゃまの経済感覚w

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― 新着の感想 ―
[一言] 割とリサイクル(?)という概念がしっかりしているシャルロ君(苦笑)。 まあ、「当たるか不明の新商品」の開発はどこも大変でしょうしねぇ。 (それがお菓子限定なのが”らしい”っちゃ”らしい”んで…
[一言] ファンタジーに限らず毒キノコの分別って難題の一つだよなぁ…人間が食べてたまたま平気なだけで基本全てのキノコは有毒なんよね…(毒=旨味成分)
[良い点] 殻の話、作品の始めあたりからずっとキャラ設定の伏線として考えてたなら凄すぎです。
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