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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
魔術学院3年目
95/1289

095 星暦551年 紺の月 16日 沖で

「うわ、真っ暗だね」

浅瀬が終わり、海底が深くなるところまで辿り着いた俺たちは下を覗きこんで足を止めていた。


真っ暗なのだ。

下の方が。


そりゃあ、昨日歩きまわった範囲だって海面上よりは暗かったが、それでもモノがはっきり見えていた。

周りの風景だって奇麗だったし。


だが、沖の部分に出て来てみたら・・・思ったよりも暗い。


「浅いところのはそれこそ引き揚げ屋(サルベージャー)や近所の子供たちにすっかり探索されつくしていたからねぇ。やはりこれは深いところを探す方が有利だから、頑張らないと。光の魔術でも使って探そう」

アレクがシャルロに答えた。


昨日は昼食の後に縄やコンパスを入手して最初の漁師達に聞いたところを回ったのだが、結局大した発見は無かった。

船の残骸は幾つかあったのだが・・・。

引き上げる価値があるようなものは全て取り去られていた。

魚介類が住処にしていたお陰か船の家具とかもすっかり腐っていたし。


だから深いところに行く方が何か発見出来る可能性は高そうなのだが・・・。

暗い。


光よ(イルム)

シャルロが唱えて光球を作り出した。


うん、何とかあれで周りが見えそうだ。

「海の中で崖を降りるのは嫌だから、とりあえずここの下のところまでドームごとゆっくりおろしてくれない?」

清早に頼む。


「了解」


清早の言葉とともに俺たちが立っていた空気のドームが俺たちごと浮き上がり、ゆっくりと前の暗い水の中を下がり始める。


「おいで」

シャルロがペットに呼び掛けるかのように光球に声をかける。

ついてきたよ。


そりゃあ、自分で作った光球だから自分の意思で動かせるのは不思議じゃないが、最初に条件付けをしていなかったようなのに『おいで』で付いてくるところが流石シャルロだな。


◆◆◆



沖の深いところの海底は浅瀬より歩きやすかった。

暗いだけあって、生えている海草がぐっと減っていたから。

ある意味、潮が引いた後の砂浜を歩くのとあまり違いが無いかも。


「とりあえず、私たちはここにいるんだろう?」

アレクが地図を見ながら浅瀬が終わる部分の一点を示した。

「麻紐を置きながら北西に進むとして、正面だけじゃなくって左右も照らして何か見えないか確認しながら進もう」


「ん」「うん」


しっかし。

考えてみたら、沖で沈んでいる船って言うのは嵐で実際に浸水したせいで沈んだ船だ。

浅瀬では嵐で船が座礁して波に破壊されるとか、嵐で岸壁に打ちつけられて壊れたとかいうことが多いから沈没する確率が比較的高い。


でも、沖合になるとねぇ。

まあ、嵐が酷くって浸水して沈没っていうのも十分あるだろうけど、場所が『この岩にぶつかって』とか『この浅瀬に乗り上げて』という決まったポイントに限られないからどこでもありえる。


探しにくそう。

沖合で深いところに網を張って変なモノを引き上げた漁師たちの記憶だよりだが、どのくらいはっきり覚えていたのか不安だなぁ。

精霊の加護かかなりの魔力を持った魔術師の助けが無ければこんな深いところを潜ってどこにあるか分からない船を探すのは難しいから、船を見つけられさえすれば何かしらの収穫がある可能性は高いけど。


◆◆◆



水打ヒタン!」

右側に見えた岩陰モドキに軽く術を当てる。

立ち止まって砂埃(と言うのか?)が落ち着くのを待っている間、シャルロが自分に癒し(ヒーリング)をかけていた。


昨日のヌルヌル海草の上を歩くよりはマシだが、砂浜の上を沢山歩くのも中々疲れるんだよねぇ。


「あれが岩だったら、あの上で昼食にしないか?」

アレクが提案した。


「いいね。そろそろ疲れてきたし。一休みしよう」


最初は船陰(というか現実的には岩陰なんだけど)を見るたびにそこまで歩いて行って確認していた俺達だが、意外と海底には岩が多かった。


あっちへ確認、こっちへ確認でジグザグに動いていると方向と距離の把握が難しくなる上、疲れる。

そこで結局軽く水の打撃魔法を当てて上に積もっている砂埃モドキをどけることにした。

この砂埃モドキ、打撃を与えるとぶわっと舞い上がって暫く周囲の水の視界を極端に悪くするのだが、それが落ち着くまでついでに立ち止まって休みを取るにしたのだが。


いい加減、疲れてきた。



だが。

砂埃モドキが収まった時にそこに合ったのは・・・船首の一部だった。


とうとう沈没船を発見か?!






中休みが5日有るのに2日目で発見しちゃうと後が続かない・・・。


もう少し苦労してもらおうかなぁ。

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