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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目

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924/1342

924 星暦557年 緑の月 6日 熟練の技モドキ(6)

「やっと試作機が出来上がったな。次は計測すべき成分か」


トレー型の感知面の上に土を広げることで成分を分析する魔具は3日程試行錯誤して大体出来上がった。


毒探知用魔具ではどれも基本的に探知用のサンプルである毒に一致すれば光るだけだったのだが、こちらではどの成分に一致するかで違う場所が光るようにし、また光る部分も小さな屑魔石を10個ほど並べて成分の多さによって光る屑魔石の数を増やす形にすることで、成分量の多寡が見て取れるようにした。


ちなみに、塩を対象にして海水で探知してみたら塩の濃度も確認できた。

まあ、海水の塩の濃度なんぞを調べる必要性はあまりないのだが・・・液体にも使えるかを試したいというシャルロの提案でやってみたのだ。


「考えてみたらこれって酒場のワインがどれだけ水で薄められているかのチェックにも使えるかもな」

庭から取ってきた土の入ったバケツを見ながらふと呟く。

酒場によってかなりぼったくりなレベルまで水増ししたワインを出されるところがあるからなぁ。


とは言え、ワインの美味さというか不味さは水でどれだけ薄めたかよりも元のワインの質の方が重要な場合も多いし、態々調べたくなるほど安い酒場に行かない方が無難なので調べてもあまり意味がないが。


「・・・小麦粉や塩の納品確認用に商業ギルドで売るなり貸し出すなりしても良いかも知れないな」

アレクが俺の言葉を聞いて提案した。


「え、流石に市場や商業ギルドで売買されているような小麦粉や塩に毒は入っていないだろ??」

そんなことをしたら王都で大々的な食中毒というか大量殺人が起きてしまうだろうに。


戦時中ならあり得なくもないかも知れないが、平時にそんなことはしないだろう。


「いや、小麦粉や塩っていうのはそれっぽい粉を適当に混ぜてかさ増しさせる業者がそれなりにいるんだ。

と言うか、精製の精度によって成分が変わるから、余程の超一流品じゃ無い限り不純物が無いなんて事はほぼ無い。

わざとかさ増しすると舐めてみたら変な味がするからそれなりに分かるし、値段相応の混ぜ物は当然と言えなくもないから極端には煩い事は言わないが、ちゃんと確認しないと際限なく混ぜ物を入れてくる業者もいるからな。

客観的に数値化して成分が分かる魔具があったら便利がられると思う」


まじか~。

まあ、塩なんかは海水から抽出する時もなんか関係ない成分も入っているのを濾していたし、小麦粉だって麦の表皮とか諸々がある程度は入っているんだからおまけで何かを意図的に更に混ぜ込むこともあり得るか。


「単に純粋な塩や小麦粉の割合を確認するだけの機能だったら現時点のこれで出来るよね?

だったらシェフィート商会で試しに使ってもらって改善点が無かったらあっちで欲しがるところに売るなり貸し出すなりしてもらったら?」

シャルロが提案する。


だよなぁ。

成分の分析ついでに混ざりものの割合を確認するだけだったら、現時点の大元の機能だけで何とかなる筈だ。


実際に使ってみて足りなかったり使い勝手が悪い部分があるなら指摘してもらって直せばいいし。


農作物や果樹園用には更にどの成分を重点的に分析するかとか、どの成分がどんな分量であると植物が喜ぶかの研究が必要だからなぁ。


何でもかんでも研究する気は俺たちにもないが、ある程度テストケースっぽい使い方を見せないと誰も高額な魔具なんぞ買わないだろうから、先ずはどの成分が農作物や果樹に喜ばれるかを幾つかの典型的作物で確認してその理想的な割合を俺たちの使い魔の協力のもとに割り出さないと。

あとは地中にあっちゃ駄目な成分の確認もした方が良いだろうな。


「そうだな。

魔術回路その物はこれ以上大して変える必要はないだろうから、改造したものを特許登録しておくか。

考えてみたらこれを使って解明させた理想的な成分の割合とかが重要なんだが・・・そっちの情報に関して特許を取るのは無理だろうなぁ」

アレクが呟く。


「まあ、成分の割合だってこの魔具が無ければどの程度どの肥料を足す必要があるかとかが分かりにくいだろうから、特許を取らなくても良いんじゃないか?

理想的な成分割合はこの魔具を買ってくれた場合のオマケみたいなものだろ。

それよりも、俺たちが分析していない作物を育てたい農家なり領主なりが理想的な成分割合を調べてくれって言ってきたら嫌なんだけど」

調査をしないと買わないとか言われてシェフィート商会とかから泣きつかれるのは嫌だぞ?


最初の数回程度ならまだしも、ずっとなんて事になったら碌に新しい魔具の研究開発が出来なくなる。


「・・・初期的な調査をして使い勝手を確認したら、農作物学会の人間に本格的調査と試用へ参加してもらって、彼らの方で調査が出来る様にしよう」

アレクが提案する。


確かに。

農作物学会の将来的な収入源になりそうだったら、調査と試用の手伝いも割安でやってくれるかも?



銘柄によっても違いがあるし、肥料によって味に違いが出たりもするだろうし、奥が深そう・・・;

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― 新着の感想 ―
[一言] 定量分析が出来るなら、ブレンダーに重宝されそう。
[一言] 混ぜ物絡みはやる夫スレでヴィクトリア時代込みで英国料理が紹介された時にやってましたねぇ。 多分三人の前で同じ事をやったら、精霊たちの怒りを買って、何されるか分かったもんじゃありませんが。 (…
[一言] 距離も伸ばせば砂金とか鉱物探査にもいけそうな
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