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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
798/1298

798 星暦557年 紫の月 4日 人探し

ばたん!!


「どうしよう!?

従姉妹が誘拐されていたんだって!!!」

朝食を食べようと降りてきた階段の下でふと立ち止まってあくびをしていたら、突然玄関が物凄い勢いで開かれてシャルロが飛び込んできた。


あぶねぇ、危うく正面衝突するとこだったぜ。


「はぁ?

身代金狙いか?

だったら金を渡す際に蒼流と風の精霊あたりにでも手伝ってもらえばあっさり犯人の隠れ家に辿り着けるだろ?」

シャルロの従姉妹だ。

ほぼ間違いなく貴族だろうから、そうなると身代金狙いの可能性が高いだろう。


まあ、美人だったら惚れ込んだアホな貴族令息が強引に結婚に持ち込むために誘拐という可能性もあるが・・・その場合は救出して犯人側の人間の口を恒久的に封じる必要があるかもな。


そこら辺の貴族の対処法に関してはシャルロの家族の方が色々と詳しいだろう。


「いや、どうも母上のお姉さんの娘のキリファが後妻に冷遇されていて、とうとう領地に軟禁されて今年は社交シーズンにすら王都に連れてきて貰えなかったから逃げ出したらしいんだけど、母上の所に助けを求めに来る途中で攫われちゃったみたい。

行方に関しては今年の初めぐらいからこっそり父上達が探していたらしいんだけど、どうも港の方で見つかった人身売買組織で情報が出て来たらしいんだ」

シャルロが食堂の椅子に腰かけながら言った。


おやぁ?

なんか聞いたことがあるような組織の話が出て来たな。

「侯爵の姪を軟禁するなんて、どんな後妻なんだよ。

まあ、それはさておき。

本当に誘拐されたのか?

後妻が、邪魔だから『家出した』形にして組織へ売ったんじゃあないのか?」

シャルロの従姉妹となったら確実に正妻の娘だろうから、それなりに相続権があるだろうし普段は冷遇できたとしても遺産相続なんかの際には露骨なことは出来ないだろう。

というか、母親が嫁入りの際に持ってきた結納金とかは娘が相続することが多いらしいし。


だとしたら居なくなった方が後妻にとっては(下手をしたら実父にとっても)都合がいい筈だ。


死ぬのが一番かも知れないが、行方不明という事で後見人扱いで財産の管理権を手に入れるのでも悪くはない。

そう考えると家出なんてされて親族に保護を求められるよりも、二度と表に出てこない形にしたくなりそうなものだが。


「あ~。

そこら辺は知らない。父上がしっかり調べさせるんじゃないかな?

母上がキリファが王都に出てこないのが風邪じゃなくって軟禁されていたからだったって話を助けを求めに来たキリファの侍女に聞いて激怒しているから。

それよりも、今はキリファを見つけて助け出さなきゃ!!」

俺の質問に一瞬動きが止まったシャルロだが、直ぐに再起動し始めた。


「その人身売買組織の家探しは多分俺が関与した奴だから、初日に調べた建物にあった隠し書類は全部見つけたはずだぜ?

量が多かったから全部に目を通して情報を精査できたかは知らないけど。

他にも情報がありそうな建物があるなら捜索に協力するが・・・その従姉妹とやらはどこで足取りが消えているんだ?」

少なくとも、助けなきゃと言っているのだからあの港の傍の店の地下室から救出された被害者の中には居なかったのだろう。


その従姉妹とやらが誘拐されたってどうやって分かったんかね?


「どうも、組織の人間に名前を言って母上に連絡を取ってくれたら若い貴族の娘を売って得られるよりも多い身代金が手に入るって言っていたらしいんだ。

それで船で他国へ売り払う人たちとは別の場所に閉じ込めて母上の方に連絡を取ろうとしていたらしいんだけど、なんか組織が捜索を受けて滅茶苦茶になっているどさくさに、逃げたのか下っ端に攫われたのか、居なくなっちゃって見つからないって今朝連絡が来て」


なんとまぁ。

ある意味、あの人身売買組織が潰されない方がシャルロの従姉妹は安全だったのかも知れないな。


一斉捜査で人身売買組織が潰されたのは21日の夜中。

逃げ出したとしたら22日。

今が4日かぁ。

10日強の間、王都でどこに隠れたんだ?


「下手をしたら逃げた後に別のゴロツキに捕まって娼館とかに売られた可能性もあるな。

娼館ハーロットギルドには確認したのか?」

流石に王都近辺の海に死体が浮かんでいないかの確認はシャルロに話が来る前にやっているだろう。


まあ、海に沈められた新しい死体を探して欲しいと頼むつもりの可能性もゼロでは無いだろうが。


『清早〜!

王都の傍の海に、ここ10日の間に沈められた新鮮な若い女の死体があるかどうかって分かる?』

こっそり声に出さずに念話で尋ねる。


『・・・若い女かどうかは分からないけど、新しい死体は特にないかな~。

沈められたんじゃなくって単に流れ出ていったんだったら不明だけど』

清早から直ぐに返事が来た。


そっか。

まあ、浮いて流れ出したんだったら多分港を出入りする船に見つかっただろうという事で、そちらは考えないで良いだろう。


「娼館??!!!」

シャルロが絶望したような顔で叫ぶ。


「まあ、そっちも多分シャルロの兄貴や親父が調べてるだろ。

取り敢えず、俺は盗賊シーフギルドに聞いておこうか?

お前の従姉妹って見た目はどんな感じなんだ?」

映像用魔具の映像があれば一番なのだが、直近の姿の記憶を読み込んで印刷するのでも十分だろう。


まあ、ストレスと疲れでやつれていたら大分人相は変わるが。

そこら辺は裏の人間も良く知っているから、裏社会の誰かに捕まっていたら分かるだろう。

多分。


世の中色々と繋がってますw

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― 新着の感想 ―
[一言] 父親がシャルロの一家に激詰めされる&後妻が離婚される未来が見えるわww
[良い点] …………良かったなシャルロ君、一番有能な味方が学院から友人で。 (しかも理由が二人揃って補修を受けていたという(乾いた笑い)) [一言] ……………偽装誘拐というか、馬鹿な事をしでかした連…
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