763 星暦557年 藤の月 11日 ちょっと方向が違う方が良い?(4)
「色々と買って来たよ~」
シャルロがアレクと一緒に大量の荷物を持って帰ってきた。
結局、神殿地下室にあった空気清浄・除湿用魔具の効果の確認やちょっとした改造に忙しくて俺は東大陸には行っていない。
シェイラがヴァルージャに戻るまでは一緒に食事を食べに出たりしていたんだが、6日に彼女を送ってからはひたすら色々と実験していたのだ。
効果を反転させて香りの効率的な分散とかへの使用には手が届かなかったが、除湿器や汚れ落としにはかなり役に立つかもしれない。
パディン夫人は非常に気に入った様子だったが、できれば部屋全体ではなく決めた場所を集中的に清浄化できたら更に良いとも言われた。
部屋全部だと一気にがっつり綺麗になるというよりは徐々に綺麗になるって感じなので、ある意味毎日換気用魔具の代わりに使っていたら壁も綺麗になるって感じかも知れない。
ただ、単に煙い状態を改善するだけだったら以前開発した換気用魔具の方が効果は高い。
この神殿で見つけた魔術回路の利点は除湿が出来ることと、漂っている煙だけでなく壁に着いた汚れも湿気と一緒にある程度除去できる点だろう。
「お帰り。
あっちはどうだった?
通信機でも話したが、香りを分散させる魔具の研究は全然進まなかったが、あの海神神殿の地下宝物庫にあった魔術回路を使った魔具で除湿と部屋の清浄化が出来ることが分かった。
今度、船の貨物室様に買った除湿用魔具の魔術回路の効果と比較してみないか?」
改造中だった魔術回路から顔を上げて、帰って来た2人に挨拶を返す。
「部屋の清浄化
空気の清浄化じゃなくて?」
お土産らしきものを箱から出しながらアレクが聞き返してきた。
「微細な水に溶け込んだ汚れも湿気と一緒に除去するから、湿気ている時とかお湯を暫く沸かして蒸気を部屋に充填させた時とかだと壁の汚れもある程度落ちる。
一気に汚れが全部落ちる訳ではないから強力な清浄機って訳じゃあないんだが、それこそ潮風でいつの間にかべたつく海際の部屋とか、汚れが溜まりがちな台所で湿度の高い日に使うと良いかも知れない」
お香や精油を工房の机に色々と並べながらシャルロが首を傾げる。
「面白い効果だね。
香を焚く時に使うとどうなるかな?」
「匂い成分も除去されちまう可能性が高い・・・かも?」
香を焚きすぎて部屋がべたべたになった場合に清浄化するって言うんじゃない限り、この魔術回路は基本的に香関係では活躍の場は無いだろう。
「そっか。
まあ、香で体に良いのと悪いのはラフェーンに聞いて見かけたのに関しては全部確認できたし、僕たちがすることはそれ程ないかな?
魔具を使うことで効果的に匂いを分散出来て安く沢山香りを届けられたら便利だと思ったけど」
シャルロが肩を竦めながら言った。
「蒸気を部屋に充填させてから使うと壁の汚れが落ちるのだったら、蒸気を充填させる機能と香油を温めて揮発させる機能は同じ魔術回路で出来るんじゃないか?
使った後や何か気になった時に部屋の清浄化に使える魔具という売り方も出来るかも知れない」
アレクが提案する。
確かに、一々火器で鍋の水を沸かすのは面倒だ。
水を蒸気に変える仕組みと精油を徐々に揮発させる仕組みが完全に同じとは思えないが・・・段階を付けて出力を選べるようにすれば良いかも知れない。
それに、香油だって油なのだ。
使いまくったらそのうち部屋の壁がべたつくだろう。
と言うか、冬なんかに風呂に入る代わりにちょっと湯気で体を温めて汚れを落とすなんてことも可能かな?
汗ばんだ服がどうなるか、試してみよう。
魔具を買う金があったら普通にお湯を沸かして風呂に入る可能性も高いが。
でも、一般家庭で実際に家の中に風呂がある家はそこまで多くはない。
風呂完備の屋敷となると豪商や貴族レベルになるので、魔具は買えるけどそこまで余裕はない程度の家庭にはありかな?
まあ、販売しようにも人にそんな使い方を知ってもらうのが難しそうだが。
取り敢えず。
色々試してみよう。
サウナでついでに体も綺麗に出来たら便利かも??