758 星暦556年 桃の月 29日 年末の予定(16)
『随分と変なものを運ぶのね』
年末のパーティ前に俺がお土産兼サンプルとして持って帰って来た各種お香や薬になるかも知れない香辛料及び精油をアレクがラフェーンの背に積もうとしたところ、珍しく無口なユニコーンがコメントしてきた。
「匂いがキツイか?」
アレクが尋ねる。
注意除けの魔具を使うことでユニコーンを街中で乗っても極端に凝視されなくなったアレクだが、香辛料を大量に運ぶのにはユニコーンは適していないかもと心配になったらしい。
とは言え、馬だって匂いには敏感だと思うから、口で説得できる使い魔に運んでもらう方が良いんじゃないかね?
『いや、匂いと言うよりも・・・一部は害のある物だから、アレクやアレクの親しい人間が使うつもりなのならやめた方が良いよ?』
ラフェーンが応じた。
「・・・そう言えば、ラフェーンって薬草とかに詳しかったな。
お香とか香辛料も実は薬草の一種扱いだったり?」
ちょっと頭を抱えながらアレクに尋ねる。
もしかして、シャルロ経由で態々ウォレン爺に調べるよう手配させたのって完全に無駄??!!
『ええ。
基本的に薬と毒になる物は通じてるわ』
俺の言葉にラフェーンへ尋ねる様に目をやったアレクにあっさりユニコーンが頷いて応じた。
・・・そうなのかぁ。
俺たちって折角幻獣に使い魔になって貰っても、移動手段とか土木工事とかの手伝い以外で殆ど頼ってない。
実はこれってとっても勿体ない事していた??
まあ、俺の場合は最近は鍛冶仕事も殆どやっていないし、金属や鉱物関連のこともやってないからあんまり損はしていない筈。
でも、今回の香辛料関係はかなりアホだったかもなぁ。
「・・・まあ、国に自力で調べさせておくのも必要だろう。
後で答え合わせする際に危険な物が抜けていたら指摘すれば良いだろうし」
ため息をついて荷物を降ろしながらアレクが言った。
「全部広げるから、食べたら危険な物、香として匂いを嗅ぐだけでもダメな物、肌にマッサージのような感じに塗り込むのもダメな物等々、人間・・・やペットに悪影響がある物を全部教えてくれ」
工房の作業机に広げるつもりなのか、家の方へ戻りながらアレクがラフェーンにお願いした。
一応工房だったらラフェーンやアスカでも入れるよう、庭からの入り口は大きめにしてあるんだよね。
何故か幻獣の足には泥が付かないから外から入っても大丈夫だし。
あれって本当に便利だよなぁ。
物理的に何かを蹴飛ばしたり運んだりできるのに、埃や泥を運び込まないのってなんでなんだろう?
靴やマントにその機能を模倣出来たら凄く便利だと思うが・・・まあ、靴に魔術回路を組み込むのは非現実的かな。
魔術回路で模倣できる現象な気もしないし。
「ちなみに、ついでにデザートに入れたら美味しくなる甘いのとか香りがよくなる香辛料って分かったりしないかな?」
色々とデルブ夫人たちが試しているようだが、既に答えが分かっているなら情報を得ておいてそれを活用する方に注力すればいい。
『ユニコーンは基本魔力と、気が向いたら草や果物を食べる存在。
人間の食事を美味しいと感じないから、健康への効果は分かっても食べた時の感覚は共有出来ないから参考にはならないわね』
あっさりラフェーンに断られてしまった。
なるほど。
新鮮な雑草が美味しいと感じる存在に、ケーキを美味しくする方法を聞いてもしょうがないな。
まだシャルロのアルフォンスやその配下の方がマシかも知れないが・・・妖精の世界とは生えている植物とかも違いそうだ。
考えてみたら、人間って魔力が多く含まれる食材を美味しいとか美味しくないとか感じるんだろうか?
妖精は魔力が濃厚な食材の方が美味しく感じるようなことを誰かが言っていた気がするが。
とは言え、魔力を使う魔術師ならまだしも普通の一般人が変に魔力の濃厚な食材を食べると変な病気になる可能性もありそうだな。
「ちなみに、魔力を込めたら変な効果が出る香とか素材ってあったりするのか?」
妖精界の素材だったら魔力の濃度によって効果や味に変化が出そうだが、普通の香辛料とかにもそう言うので変な反応を示す物ってあったりするんだろうか?
『人為的に込められる程度の魔力で香の効果に変化が出ることは余りないけど・・・毒や薬によっては魔力を込めると効果が上がる物はあるわね』
あっさりラフェーンが答えた。
マジか!!
一応と思って聞いたらあると言う答えにちょっと頭を抱えたいウィル君w
またもや活躍の場が増えそう?