756 星暦556年 桃の月 26日 年末の予定(14)(アレク視点)
>>>サイド アレク・シェフィート
「ただいま~」
暫くシェイラと東大陸に遊びに行っていたウィルが帰って来たようだ。
「お帰り。
楽しめたか?」
蚤市を回るというのは中々シェイラとウィルらしい楽しみ方のようだが、大分と荷物が多い。
何か面白いお土産でも買ってきたのか?
「お~。
なんか知らね〜けど、蚤市の偽造品が妙にシェイラにウケてた。
そう言えば、シェイラが以前お土産に買った薄いショールの生地みたいのをそこそこ大量に買って帰っていたぜ。
もしもアレクの母さんとか義姉さんが見に行った際にあれを大々的に輸入することを決めた場合は、どっかが先に何かやっているかもって言うのも頭の隅っこに置いておいた方が良いかも?
あ、ちなみに年末のパーティの時に渡すお土産用にこれを買ってきたんだけど、どうかな?」
ショールを二枚ほど荷物の中かから引っ張り出しながらウィルが言った。
しまった。
そう言えば、あの薄い生地はアファル王国には無いから良いかも知れない。
染料を持って帰ってきて業者に渡してみた際には此方で一般的に使われる生地に合わないと言われてそのままにしていたのだが、確かにあの生地ごと買い付けてちょっとした飾り生地にするなり、レースのカーテン代わりにするなり、使い道は色々とありそうだ。
シェイラが生地を買い付けたという事は、利用用途を思いついたのだろう。
参入するならあまり後れを取らぬよう、年初の税務申告が終わったら早い目に母と義姉だけでも連れて行った方が良いかも知れない。
「あとさあ、あっちではちょっと気分が落ち着いたり、心が軽くなるとか安眠し易くなるとかいった効果のあるらしい香が色々とあるんだけど、麻薬みたいな危険性があるか調べる伝手ってある?
無いんだったら医療省にでもシャルロに頼んでウォレン爺経由で回してもらって調べて、問題無さげだったら輸入するのはどうかな?
香はまだしも、香油だとそれを焚くのにお手軽な魔具を造るのもありかな~って思ったんだが」
色々と小さな瓶や薄い木箱を取り出しながらウィルが続けた。
「なにやら随分と熱心にあちらから売り込めるものを探してきたんだな?」
幾ら先日そう言った話をしていたとはいえ、ちょっと意外だ。
「いやあ、2年連続年末前に東大陸関係のヤバい密輸入品のせいでこき使われただろ?
幾ら報酬があると言っても、軍と働くのは嫌だから、また呼び出される前に何か対応策を取れないかと思ってヤバい輸出品ってあるのかあっちの人間に聞いたら、香辛料とかで香とか薬に使える系の物って以前からザルガ共和国によく売れていたって言われてね。
ザルガ共和国だってアファル王国への香辛料の売り上げが減った分を取り戻そうと何か他の物を売り出すようになるだろ?
変な詐欺とか嘘っぱちな宗教とかと組み合わせて大量に売られたりしたらまた呼び出されそうだから、先に安全ならアレクのとこで売って欲しいな~と思ってね。
ヤバい物なら医療省に知らせて禁輸をしっかりやって貰えば問題が起きても俺が呼び出されないで済むかもだし」
次から次へと色々と取り出しながらウィルが説明した。
相変わらず、軍が嫌いなようだ。
もっと協力してもらえないかとシェフィート商会の担当に軍の方からこっそり聞かれているという件は言わない方が良さそうだな。
ただでさえ軍の片思いなのに、更に嫌われたらウィルの能力が必要な案件ですら逃げだしそうだ。
「分かった。
ちょっとこちらの方でも調べさせるよ。
香りが良い物だったらデザートなんかにも使えるかも知れないから、香辛料でも香りを重視した物を探させるのも良いかも知れないし」
ウィルが首を傾けた。
「香辛料ってデザートに使うのか??」
「シャルロの大好きな生クリームなんかは実際の砂糖だけでなく、甘いっぽい匂いのする香辛料を混ぜることで更に美味しくしているようだぞ?
あれはシェフィート商会でも大量に輸入してそれなりに稼いでいるが、考えてみたら他にも香りでデザートに合う物があるかも知れない」
香辛料というと辛いピリッとした系統の物を思い浮かべるし、香辛料を大量に使うことで刺激的な味が有名なザルガッドも特にデザートにはそれ程力を込めているようでは無かったが・・・シャルロの所のデルブ夫人とか、ドリアーナのデザート担当の人間とかを誘っても良いかも知れない。
原材料の形の時に甘い香りがする物だけがデザートに向いているとも限らないだろうし、そこら辺はプロが一緒にいた方が参考になりそうだ。
・・・これはシャルロに相談かな?